『椿山課長の七日間』今更観た
先日某「映画のあらすじを書くアルバイト」に応募するため、テストライティングとして映画を3つ観てあらすじと感想を書いたんだけど審査落ちてしまったので
でもせっかく読んだので感想を書いて供養したいと思います・・・(ネタバレを含みます)
【あらすじ】
西田敏行演じる椿山課長は、デパートの婦人服売り場で課長を務めていたのだが、仕事中に脳出血で倒れそのまま死んでしまった。
彼が亡くなって4日経ったとき、あの世とこの世の中継地点『中陰役所』で彼は目覚め、特例で3日間だけ現世に戻れる『逆送』の制度を知る。多くの死者の中から、武田というヤクザ・雄一という男の子・そして椿山が『もう一度蘇る意味』があるとされ、逆送者に選ばれた。
3人は若いイケメン・女の子・美女にそれぞれ姿を変え、正体をバラさないという条件付きで再び元居た場所へ行くのだが・・・
普段映画をあまり観ない自分にとって、映画を観ながら登場人物の一挙一動をメモして、それらを不自然にならない文脈に並び替えるという作業はつらく、苦しいものだった(おおげさ)。普通に期限過ぎたし、シンプルに審査落ちた原因そこだと思う。あと逆送者それぞれ3つの違うストーリーが展開されていて内容がすごく密度濃くて、起承転結全てをバランス良い長さで書けなかった。とはいえ頑張ったから読みたい人には送ります
あと映画を観ていなかった自分ならでは、であろう感想が1個あって、それぞれの役者の今まで演じた役のイメージと、本映画の役どころがけっこう一緒だった。びっくりした。
役者というのは必ずしも「カメレオン」であることだけが最高なのではなく、その人が元々持つ魅力を1番発揮出来る役で輝くというのも必要とされてるんだなと気づいた。特に印象に残った【西田敏行・須賀健太・成宮寛貴・余貴美子】について感想を述べることにする。
主演:椿山課長を演じた西田敏行は声色がとにかくずるくて、私は完全に観覧者で部外者なのに、一声聴いただけで『お父さんごめん・・・・・・』という気持ちになった。家族想いで、でも家族とは順調でなかったことがわかっていくシーンはとにかくつらいもので、本当に観ていられなかった。でも結果として、彼は家族以外の人々から慕われていたり、愛されていたことを気づいていくことになる。
家族というのがかけがえのない存在だというのは間違いないと思うけど、家族じゃない人からも愛されるというのは本当に誇るべきことだと思うし、そういった意味で椿山課長は文句なしに素晴らしい人だと思った。
須賀健太は『ALWAYS 三丁目の夕日』をはじめ、気弱だけど外での出会いで徐々に元気な子になっていく役のイメージが強くて、今回もそうだった。
少し前の有吉反省会でも本人が「役のイメージが定着しすぎていることに悩んでいる」と語っていたが、最近では2.5次元舞台で芸歴の浅い子たちと同じ舞台をつくって、しかも共演した子たちとめちゃくちゃ仲良くなっていることから、彼はかなり明るい子だとわかったので、俳優として、これから違った顔を見せてくれるんだろうなという気持ちである。彼まだめちゃくちゃ若いですしね。
成宮寛貴が演じたのは、ヤクザの武田が変身した姿・竹内だった。竹内は、武田の隠し子で現在は美容師、という設定でかつての仲間のもとを訪れる。彼の出演作品を久しぶりに観たのだがやっぱりめちゃくちゃかっこいいと思った。目がでかくて視線に迫力があって、なのになぜか親しみやすさもある。
2016年、成宮寛貴は薬物の疑惑に始まった数々の報道が原因で芸能界を引退している。そして2017年11月から、彼の出演ドラマはテレビで再放送されることが禁止されている。彼の出演作品を観ると、それはそれは良い役者だなと思うから、こんな才能を潰すほど騒ぎ立てることって果たして正義なのかなと思ってしまう。
最近はInstagramで楽しそうな笑顔を目にするので、何も気にせず幸せになってほしいと思う。そしてもし役者の世界に戻ることがあったら私は観に行きたい。
そして椿山の同僚・親友で、椿山を心から尊敬していた知子を、余貴美子が演じている。私は一番大好きな朝ドラ『ちゅらさん』の、彼女演じる容子さんが大好きだったのだが、本映画での彼女もまた素晴らしかった。時折人をいじったりからかったりするが彼女の視線がいつも優しい。
結果から言うと椿山は妻に不倫されていた。結婚前から関係を持っていた職場の後輩が浮気相手だった。浮気が良い悪いはひとまず置いておいて、結婚前に関係を持っていたという点は椿山・知子も同じだった。しかし知子は好きな人と結婚できなかった気持ちに蓋をして、違う女の夫となった椿山と親友として仲良くし続けた。バタバタと忙しい映画の展開の中で、彼女のいる間だけは穏やかで居心地の良い時間だった。
この映画は死んだ人・残された人の心情をユーモアたっぷりに描いており、非常に観ていて楽しかった。当たり前だが現実世界では、死んだ人はもう言葉を発せないし残された人はもう思いを伝えることが出来ない。だから言えるうちに感謝や愛を伝えましょうねというのがテーマなんだと思うけど、仕事を辞めるほど社会に適応できないひねくれた自分にはたぶんそれは無理な話だとおもった。
椿山が死後に観たのは、家族に嘘をつかれていたという現実だった。大切な人とうまく関係が築けないというのはもう仕方のないことだと思った。だから誰かとうまくいかなくても、言えない背景があるかもしれないという広い視野を持とうと思った。
同時に、この世には気づいてないだけで、自分を認めてくれる誰かがいるかもしれないと思ったら、少し肩の力を抜いて生きられるかなと思った。
めちゃくちゃいい映画だったので興味があったら観てみてください。