スポーツ振興の未来を担う、下田市地域おこし協力隊の新たな取り組み。
みなさん、昨年2021年7月より就任された2名の下田市地域おこし協力隊の方をご存知ですか?アウトドアスポーツ振興部門の山口智史(やまぐち さとし)さん、スポーツ振興部門の蒔田俊史(まきた としふみ)さんです。下田市振興公社(敷根公園)を拠点にスポーツ振興の視点から地域活性化に取り組まれています。下田でのスポーツといえば、来年度から新下田中学校の部活動にも採用予定の「サーフィン」が有名ですが、地域生活面での一般的なスポーツ、観光関連のスポーツなどもたくさんあります。そんな下田でスポーツ振興に取り組むことになったお二人にお話しを伺いました。
――下田に来られる前のことを教えてください。
山口さん(以下、山):生まれは東京の世田谷で、下田に移住する前は東京消防庁に勤めていました。大学時代にライフセービングを始め、その頃から下田に縁がありました。NPO法人下田ライフセービングクラブに所属し下田市の海水浴場にも約20年関わり、昨年2021年に理事長に就任しました。
蒔田さん(以下、蒔):私は学生時代に映画の脚本家を目指していた時期があり、原稿書きのために下田に長逗留していました。(長逗留:長期で滞在すること)観光や海水浴が目的ではないので、ほとんどが秋、冬、春のオフシーズンです。その後、出版関係の会社に就職し、その頃にトライアスロンに出会いました。練習や大会を経験するうちにそれを仕事にしたいと思い、大手の自転車会社を経て、トライアスロンの専門店で4年ほど働いていました。(トライアスロン歴は17年)
――お二人とも全然違う経歴ではありますが、下田への関わり方に不思議なご縁を感じますね。
――山口さんはなぜ地域おこし協力隊になられたのですか??
山:ライフセービングの活動として下田に関わりながら、その他の趣味としてもサーフィンや登山、オーシャンパドリング(※1)などのアウトドアスポーツをやっていました。今回の地域おこし協力隊の募集が、単なるスポーツではなく、アウトドアスポーツの振興として下田に関われるという内容に魅力と可能性を感じて応募しました。
※1:オーシャンパドリング:海岸から離れた沖合を、サーフスキー、パドルボード、SUPなどで漕ぎ進むアクティビティ。
――たくさんのアウトドアスポーツのご経験が活かせるということですね。
――蒔田さんはいかがでしょうか?
蒔:下田は地元の方々(の人柄)、自然環境、食、全てにおいて魅力的でしたので、毎年のように通っていました。下田の魅力を感じながらいつかは移住をしたいと思い、近年伊豆への移住を考えていました。移住相談をしていた時に、地域おこし協力隊の募集の話しを聞き、経験を活かしたスポーツ振興に関われるということですぐに申し込みました。
ーー現在はどのような活動をされていますか??
蒔:私は3本の柱を掲げて活動しています。①スポーツ合宿誘致、②イベント・大会の企画・運営、③トレーニング指導です。1つ目の合宿誘致については、下田を首都圏からのトレーニングの聖地として推したいと思っています。2つ目のイベント・大会については、県内外の人を対象にランニングイベントの開催や、賀茂地域全体を対象にe-バイクや自転車の試乗会などもやってみたいと思っています。車を使わない脱炭素社会を目指した定期的なイベント開催と、それに対する市民の理解促進なども含まれます。3つ目のトレーニング指導については、一般向けにストレッチ指導、室内での自転車トレーニングなどです。現在は、活動拠点の敷根公園(下田市敷根スポーツ施設)でストレッチ指導と自転車を使ったパーソナルトレーニングを行なっていますので興味のある方は是非!
お問い合わせ:敷根公園屋内プール TEL:0558-23-6333 (担当:マキタまで)
山:私の主な活動としては、蒔田さんと同じくスポーツ合宿とイベントの誘致、そして総合型地域スポーツクラブの立ち上げなどがあります。スポーツの種類としてはライフセービング、カヤック、カヌー、ボート、ランニング、トレイルラン、オープンウォータースイミング(※2)など幅広く検討し、誘致を進めています。その他、海のアクティビティを楽しむ人々向けの安全啓発として、オーシャンパドリング(※1)を行う人へのオンラインセミナーなどを行なっています。
※2:オープンウォータースイミング(OWS):海や川・湖といった⾃然の⽔の中で⾏われる⻑距離⽔泳競技。
山:直近の活動としては、昨年(2021年)10月に行われた全日本ジュニア/ユース/マスターズ選手権大会2021(公益財団法人日本ライフセービング協会主催)の運営、12月には海での事故を想定したシミュレーション審査会などを誘致しました。(消防、警察、海上保安庁、下田市、日本ライフセービング協会)ライフセービング関連や消防関連の業務に関しては経験値に基づくコーディネートができることが強みです。
――それぞれでも活動されているお二人が共通で挙げられた「合宿誘致」については、今年の1月から「下田市アウトドアスポーツ合宿宿泊支援制度」が始まりましたね。支援制度の内容について教えてください。
山:「下田市アウトドアスポーツ合宿宿泊支援制度」は、国の地方創生臨時交付金制度を活用して実現した、スポーツ団体、チームを対象とした合宿支援です。下田市では今までもたくさんのスポーツ合宿が行われていましたが、コロナ禍でかなり減ってしまいました。アフターコロナの新しい生活様式でのスポーツ機会の創出も目的としています。
蒔:支援対象は2022年1月1日から3月15日までの間に行われる合宿で、下田市内の宿泊施設を利用し、自然環境を活用したスポーツを行う団体です。1泊あたり最大3,000円、1団体あたり最大300,000円の合宿支援を行います。(サーフィン、トライアスロン、トレイルラン、ライフセービングなど)
詳細は特設サイトをご覧ください。
「下田市アウトドアスポーツ合宿宿泊支援制度」
https://www.shimodapsi.com/sportscamp
――是非たくさんの方に利用していただきたいですね。
山:アウトドアスポーツは旅行や移動を伴うスポーツです。合宿宿泊支援制度の活用が、市内の観光にも貢献できれば嬉しいです。観光庁の進めるアドベンチャーツーリズム(※3)にもつなげていければ良いと考えています。
※3:アドベンチャーツーリズム(以下「AT」)とは、「自然」、「アクティビティ」、「文化体験」の3要素のうち2つ以上で構成される旅行を指します。観光庁では、自然・文化といった我が国の豊富な地域資源を観光コンテンツとして活用し、日本の本質を深く体験・体感できるアドベンチャーツーリズムを推進することで、安全・安心な目的地として世界の旅行者に来訪・滞在を促し、地方部を含めた全国各地における消費機会の拡大を図る取組を進めています。
蒔:今回の合宿宿泊支援制度で需要を把握し、今後は市で予算をつけて制度化も検討したいです。他県でも受け入れ体制の整っている場所が幾つかありますが、下田もロケーションを活かした合宿誘致につなげ、トレーニングの聖地としてブランディングしていきたいと思っています。
――今後実現していきたいことを教えてください。
山:下田のアウトドアスポーツというと、海のアクティビティによりがちですが、海だけではなく山のことにも注目していきたいです。趣味で登山もしているので、海だけでなく、ハイキングコースの整備や開拓など、山関連のスポーツ振興もしていきたいと思っています。(海については、ライフセービングの経験をもとに、北海道のアウトドアガイド組織のような、マリンアクティビティ型のガイド組織が立ち上がり、誰もが安全安心に海を楽しめる環境ができればと思っています。
また、これから新下田中学校では、サーフィン部なども動いていきますので、協力できることがあれば関わっていきたいと考えています。
蒔:私は3本の柱を充実させて、(任期が終わる)3年後には下田に定住し、お店を開きたいと思っています。今は「発酵カフェとサイクルショップ」を計画中です。酵素玄米、発酵野菜、麹を使った料理などを提供し腸内環境を良くするメニューを提供する発酵カフェ、自転車を促進するサイクルショップです。下田市民への自転車の利活用、脱炭素社会への普及啓蒙をしていきたいと思っています。下田の人が自転車に乗っている姿、自転車が見える景色が増えていって欲しいです。
下田は温暖な気候や恵まれた自然環境があり、今までもスポーツに限らずたくさんの合宿利用がされてきました。近年の観光産業の衰退や少子高齢化による担い手不足で合宿の受け入れ体制に対しても課題があります。さらに新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあり、人と人の交流の機会すら激減してしまっています。様々な課題はありますが、お二人の考えるスポーツ振興や取り組まれている支援制度が充実することでさらなる合宿需要の拡大、スポーツを通じた人の交流が生まれ、下田の活性化に繋がっていくのではないでしょうか。それぞれの新しい視点を取り入れた今後のスポーツ振興、お二人のご活躍にもご期待ください!
WITH SHIMODA ライター:温泉民宿 勝五郎 土屋尊司
写真提供:山口さん(3、5、8、9枚目)、蒔田さん(4、6枚目)、土屋尊司(上記以外+イラスト)
下田市振興公社(敷根公園)
〒415-0037 静岡県下田市敷根757
敷根公園事務室内 下田市アウトドアスポーツ合宿宿泊支援事務局
TEL:0558-23-6333 FAX:0558-27-2446
E-mail:ss-pool@beige.plala.or.jp
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