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下田の良さを知ってもらいたい!伊豆の踊子の宿を継承して作る交流の場。

2022年4月末、GWを目前にゲストハウス甲州屋がプレオープンしました。宿を始められたのは山口さんご家族(山口晃さん、久恵さん、旭くん)。2014年に下田に移住し、2年前まで伊豆急下田駅近くの複合施設ナンズビレッジ内でエディバーガースタンドというハンバーガーの専門店をされていました。
ゲストハウスとして生まれ変わった甲州屋ですが、もともとは川端康成の小説「伊豆の踊子」にも登場する木賃宿(※1)です。今でも甲州屋の建物には大きく「伊豆の踊子の宿」という看板がかけられています。そんな歴史のある宿を継承しゲストハウスを始められた山口さんたちにお話を聞いてみました。

※1 木賃宿(きちんやど):江戸時代、宿駅で、客の持参した食料を煮炊きする薪代(木銭、木賃)だけを受け取って宿泊させた、最も古い形式の旅宿。

ゲストハウス甲州屋 外観


――まずは甲州屋について教えてください。

久恵さん(以下、久):甲州屋という名前は、大正初期に甲州から来た先人が始めた宿の名前をそのまま使っています。もともとは旅の芸者や行商が利用した木賃宿で、その中には川端康成の小説に出てくる伊豆の踊子もいたそうです。

――甲州屋という木賃宿は下田の北口をはいるとすぐだった。私は芸人たちのあとから屋根裏のような二階へ通った。天井がなく、街道に向かった窓ぎわにすわると、屋根裏が頭につかえるのだった。――
(伊豆の踊子/川端康成 より引用)

伊豆の踊子/川端康成

晃さん(以下、晃):当時、伊豆の踊子が利用した建物は火事で消失してしまい、現在の建物は建て替えられたものになります。甲州屋という名前を引き継いで宿として残っていました。(※ゲストハウスの前は甲州屋旅館として営業していた。)

今も残る「伊豆の踊子の宿」の看板
玄関


――ゲストハウス甲州屋の特徴を教えてください。

久:伊豆の踊子が泊まったという歴史や、甲州屋旅館として営業していた時の状態をそのまま活かしているところです。オーナーさんとしても「(思い出のある)建物を大切に使ってもらいたい」という意向があり、「雰囲気やそのままの形を活かしたい」という自分たちの考えとも合致しました。外国人にもたくさん利用していただきたいと考えていましたので、客室が和室だったことも決め手の一つです。

客室
2階廊下

晃:直すべきところはできる限り直し、昔ながらの素材感、雰囲気の良さは残したままにしています。まだ改善できていない部分を含め、使い勝手を見ながら営業していく予定です。

タイル貼りの洗面(2階廊下)
格子窓から覗く  旭くん

晃:客室は4畳半、6畳の部屋が合計5部屋あり、お風呂は弱アルカリ性の下田温泉です。もともと受付があった1階玄関横には交流のできるコミュニティスペースを設けました。伊豆急下田駅からは徒歩3分という利便性の良い立地です。

1階コミュニティスペース

久:伊豆の踊子はたくさんの地域を渡り歩いていましたので、いくつかの場所が「伊豆の踊子の聖地」としても注目されています。甲州屋も聖地の一つとして発信していきたいです。


――ゲストハウスをやろうと思ったきっかけはなんだったのですか?

久:下田が好きで移住したので、知り合いを呼びたいと思った時、今まではホテルなどの宿泊施設を探していました。「自分たちのところに泊めてあげられたら」と思い、いつかゲストハウスをやりたいと思っていました。

久:また、20代の頃(約7年間)アメリカに住んでいたこともあって、外国人の旅のスタイルがとても好きでした。旅先の宿で好きな時間に出入りして、料理を作ってゆっくり過ごしたり、海に一日中いたり。その中で出会う人と交流しながら旅を楽しんでいるんです。
移住前に吉佐美のゲストハウスに住み込みで働いていた時も、私は掃除の仕事でしたが、朝食を作っている時にゲストと一緒になることがありました。そんな時に一緒に朝食をとったり、自然に交流が生まれることがとても好きでした。下田は旅行に来る外国人も多く、ゲストハウスにはとても魅力を感じていたので、いつかこんな環境でゲストハウスができたら嬉しいなと思っていました。

アメリカ在住の頃の久恵さん

晃:人が集まったり交流できる場づくりがしたかったので、その一つとしてゲストハウスをやってみたいと思っていました。形態は違いますが、場づくりのベースがハンバーガー屋からゲストハウスに変わっただけです。交流のきっかけになればとゲストハウス甲州屋にはコミュニティスペースを作りました。

エディバーガースタンド時代

――ハンバーガー屋さんからゲストハウスに変わってもコンセプトは一緒なんですね。

晃:そうですね、山口家としては飲食店からゲストハウスに変わっていますが、「人の集まる場所を作りたい」という気持ちは同じです。たくさんの人に下田に来てもらい、交流したいですね!ゲストハウスの方は妻がメインで女将としてやっていく予定です。

和装でお出迎え

久:ゲストハウス甲州屋をオープンできたのは、エディバーガー時代を含めて、下田に移住してからのたくさんのご縁があってのことだと思っています。下田の町の人との繋がり、お客さんや業者さんとの繋がりなど。それがなければ甲州屋とも巡り合わなかったと思います。

――初めてのゲストハウスですが、実際にやってみていかがでしょう??

久:宿泊業の仕事経験はありますが、自分たちで始めた宿としてはまだ慣れていません。お客さんに合わせて対応しなければならないことも多く、生活のリズムを掴むのが難しいと思っています。甲州屋は自宅兼宿なので、他人と一夜を共にする感じも飲食店とは違う不安もあります。子供がまだ小さいのでそれも大変です。お客さんがいる日は興奮して子供が寝ないことがあったり・・・。

コミュニティスペース

晃:まだ始めたばかりですが、知り合いが訪ねてきてくれて、喜んでもらえるととても嬉しいですね。この宿を拠点に、お客さんと一緒に場づくりをしていけるのも楽しみです。

夜は町の灯りに

久恵さんは下田芸者としても活動されおり、お座敷に上がったり市のイベントなどにも参加されています。

――「伊豆の踊子の宿」の女将ということで、下田芸者とのコラボレーションなども考えているのでしょうか?

久:まだ宿として始めたばかりなのですぐには難しいのですが、地域との親交を深めながらゆくゆくは下田芸者を絡めた企画なども考えています。お客様を募り、町中にある建物などを利用させていただき、踊りや三味線の体験などをやってみたいと思っています。

下田芸者(右:久恵さん)

――どんなお客さんに来ていただきたいですか??

晃:下田にも甲州屋にも良いところがたくさん残っているので、ここを拠点にして下田を楽しんでくれる人に来てもらいたいです。そして下田をもっと好きになってもらいたいです。

久:都会の人にゆっくり休んでもらい、「下田にまた来たい」と思ってもらいたいです。コミュニケーションをとることも好きなので、外国人の方にもたくさん利用してもらいたいですね。来ていただくお客さんにゲストハウス甲州屋の物語を話したいです。


「いつかやってみたい」と思っていたゲストハウスがついに動き始めました。下田はもともと港町でもあり、たくさんの人々が交流していた歴史があります。ゲストハウス甲州屋がつくる「人の集まる場所」から、下田に新たな活気が生まれそうですね。下田に残る灯「甲州屋」という屋号を継ぎ、移住後の下田生活で培ったご縁や人柄を活かした自分たちらしいゲストハウスを作り上げて欲しいと思います。

WITH SHIMODA ライター:温泉民宿 勝五郎 土屋尊司
写真提供:ゲストハウス甲州屋(11、12、16枚目)、土屋尊司

ゲストハウス甲州屋
〒415-0021 静岡県下田市一丁目12-10
ご予約はSNSアカウントのDMから受付。
Facebookhttps://www.facebook.com/EDYBURGERSTAND
Instagramhttps://www.instagram.com/guesthouse_koushuya/


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