ゼロからクレソン農園をはじめた人の話
「農家を始める前は大田区に住んでいました。
オフィス家具を扱う会社で働いていて。」
地元である下田を拠点に
クレソン農家を営む平山武三(ひらやま たけみつ)さん。
周りからは親しみを込めて「たけぞう」さんと呼ばれています。
高校を出てから都内に移り住んだ平山さんは
両親も残してきたし、ずっと地元に戻りたいと思っていたと
話してくれました。
「下田に戻ろうにも仕事がないな・・・。」
そう思っていたある日、人生の転機が訪れます。
知人や、その知り合いのクレソン農家の方と一緒に
ご飯を食べに行くことに。
火鍋屋さんで出たザルいっぱいのクレソンに
クレソンってこんなにおいしいものだったんだ!と驚いたといいます。
クレソンはアブラナ科の多年草。
繁殖力が強く、伊豆では水辺に自生している種も見受けられます。
ヨーロッパ原産で、ワサビのような辛みからオランダ芥子と
呼ばれることもあります。
お肉料理の付け合わせ等に使われることが多いですが、
油との相性が良く、炒め物に使っても美味しくいただける野菜です。
また、クレソンはβカロテンやカリウム、カルシウムといった栄養素が多く含まれています。辛み成分である「シニグリン」には血行促進、抗菌作用、消化器官の助けなどの効果が期待できる、優秀な食材なのです。
そのクレソンの生産者さんと話す中で
「下田ってクレソン作るにはすごくいい環境なんじゃない?」
と言われ、一念発起。
一夜にして平山さんの人生の方針が、
がらりと変わってしまったというのだから驚きです。
会社を辞めて、いきなり農家になるのに抵抗はなかったんですか?
と尋ねると「そりゃありましたよ!」と笑って答える平山さん。
「でもそれ以上に、チャンスだ!って思いましたね。」
もともと農業に興味があったわけでもないと平山さんは話してくれました。
しかし、下田の友人たちが背中を押して、応援してくれたと言います。
「土地探しから何まで色んな事助けてもらっちゃった。
友達がいなかったらここまでできてなかったと思う。
ほんとに感謝しかないよね。」
ひらたけ農園のクレソンは普通のものより
葉も茎も大きくフレッシュな辛みが特長と評判に。
販路の拡大も友人たちからじわじわと広まっていき、
下田の町の飲食店はもちろん、
今では都内のレストランにも卸しているそうです。
友人たちの事について話す平山さんは、とても生き生きとして
楽しそうに見えました。
始まりは下田に自生していた、たった一株のクレソン。
周囲の人たちに助けてもらいながら始まったクレソン栽培ですが、
その道のりは決して楽ではなかったといいます。
「今考えると、本当に見通しが甘かった!」
下田は海端の町ということもあり、実は農家さんの数は多くありません。
更にクレソンの育て方はかなり特殊。
周りにノウハウを聞こうにも、聞く相手がなかなかいなかったといいます。
一年目なんて、もはや何をしていたんだっけ?と笑って話されていましたが
ゼロからの農業は本当に大変なことだらけだったと思います。
クレソン農家を始めて今年で5年目。
懐かしい友人はもちろん、新しい縁も沢山出来たといいます。
今ではご両親にも手伝ってもらいながら色んな箇所で、
併せて10反くらいの規模の栽培、管理をしているそうです。
これからまだまだ、もっと規模を大きくしていきたいという平山さん。
「今めちゃくちゃ楽しい。天職だ!って思うよ。」
マスクをしていてもわかるほど、にこにこしながらそう語ってくれました。
”どこでも”仕事ができる時代だから、”誰とでも”仕事ができる時代。
一緒に居たい人が居る場所で働くって、
生き生き暮らすのにすごく大事だな。
平山さんの話をきいて、そう思いました。
ひらたけ農園
Facebook :https://www.facebook.com/ひらたけのクレソン-1408841845802457/
通販サイト(期間限定):https://www.ja-town.com/shop/g/g4301-5201008/
(ライター/ VILLAGE INC. 本間 千裕)