おもしろいことを軽やかに、続けるチカラ。
3月、沢山の人が街から出たり、入ったり。
不動産屋は一年を通して一番忙しい季節。
本日お話を伺ったのはそんな不動産業を令和元年から始めた、
有限会社沢地の取締役、澤地 陽平(さわち ようへい)さん。
澤地さんは下田市の出身で、小中高校までを下田で過ごしました。卒業後はLAの短大に通い、帰国後は都内や大阪でフリーターの様な生活をしていたそう。遊びながら刺激的な日々を過ごしていたといいます。
それでも下田に戻ってきたのはどうしてでしょうか?
「特に大した理由なんかなくて、下田が好きだったから。」
下田に帰ってきてからは、下田の町中のアパレルに勤務。それにもなんだか飽きて翌年には友人たちと夏の海での商売を1~2年やっていたそう。そのあとは突如金融機関で働くなど、様々な仕事を転々としてきたそうです。ご本人曰く飽き性で、長続きがしない性格なのだとか。それにしたって業種もバラバラ、そこに飛び込んでいけることがすごい!
結果、物件購入を検討するお客さんにローンの組み方についてアドバイスをする際など、金融機関時代に培った知識が今でも活きているそうです。
宅建の資格を持っていたので、折角ならそれを活かせる仕事にしようと目を付けたのが不動産業だったといいます。ご家業の「有限会社沢地」は創業50年を超える菓子類の卸売会社。イベント用のお菓子の詰め売りなどを主に行っているそう。その会社の一事業部として、軽い気持ちで令和元年に不動産事業を立ち上げました。その時点で、所有物件はゼロ。不動産屋としての経験も勿論ありません。しかし、金融業をやっていた時の知り合いの不動産屋が「こんな物件あったよー!」って声をかけてくれたり、地元の知り合いが「お客さんがこんな物件探してたよ~。」と教えてくれたり。多くの人にすごく良くしてもらったといいます。
澤地さんの下田に帰ってきた理由って、澤地さんにとっては大した理由ではなかったのかもしれません。けれど下田に暮らす人たちにとっては、これ以上ない誉め言葉だなぁと感じました。
「とりあえず、やってみようかなって。
今から他の不動産屋さんとまともに張り合っても勝ち目がないから!」
澤地さんは不動産業の傍らで、南伊豆の遊休倉庫をAirbnbに登録し民泊を運営しています。(※ 現在は緊急事態宣言下(2021/03/03取材当時)のため受け入れを停止しています。)
ご存じの方も多いかと思いますが、“Airbnb“とは所謂「民泊」のプラットフォームです。
ホストとして空き物件をサービスに登録しておけば、利用したいとおもったゲストが連絡をくれるというもの。勿論ホストとして清掃などの責務はありますが、常に物件をきれいに保てますし、何よりただ置いておくだけでは発生しなかった利益が生まれます。
「不動産屋の繁忙期って、基本的には冬から春にかけてなんですよ。そして、観光地としての下田の繁忙期は夏。不動産屋にとっての閑散期なんです。」なるほど、よくできている…。ちなみに澤地さんはAirbnbサイト内での評価「スーパーホスト」(ゲストから高い評価を受け、かつ経験豊富なホストのこと)を獲得しています。
Airbnbに出しているのは元々本業の卸売業で使っていた南伊豆の倉庫。
昔は花火の倉庫として利用していた場所だったのだそう。
繁忙期の夏はとても忙しく、飲料メーカーさんも配達などの作業を手伝いに来てくれていたんだとか。その当時、手伝いに来てくれていた飲料メーカーの社員さんの為につくった宿泊スペースが残っており、それをそのまま利活用したのだそうです。
不動産もですが、民泊の運営も実は初めてだったという澤地さん。結果スーパーホストの評価をもらうほどに稼働しているのですから、本当に「とりあえずやってみる」ってエネルギーは必要だけどすごく大事なことだと思いました。繁忙期の夏は清掃にかなり時間を食われてしまうことがネックだったとのこと。 今年からは外注しようかどうしようか、検討しているところだそうです。
「今は新しいモデルが出来上がっていく最中なんでしょうね。」
澤地さんが不動産事業部を立ち上げたのが令和元年の7月、丁度新型コロナウイルスの影響が日本に表れ始める少し前のことでした。ニューノーマル時代に入り始めてからの不動産業経営となりましたが、実際のところ地方の不動産業界への影響はどのように表れたのでしょうか?
澤地さんの体感として、ピークアウトはしたかなという風に感じているそう。下田の人口が増える勢いとまではいかなかったけれど、都内からの移住の問い合わせは新型コロナウイルスの感染拡大が騒がれ始めたころに多かったといいます。
「ある程度はあるんでしょうけど、既存のモデル…都内の1等地に高いお金払ってオフィス構える必要がなくなってきたり、飲食店だって高いテナント料でいい場所にお店持ったって採算が合わなくなってきたじゃないですか。ああいうモデルはきっと今後なくなっていくんだろうなと思いますね。
例えば飲食店なら、ほんとに実力のある人のところにお客さんは行くようになるだろうし、オフィスだって、どんどん集約していってるわけですから…。」
「不動産業にこだわりを持ちません。
そうすると自由におもしろいことが出来るから。」
今は不動産業という名目でやっているけれど、不動産に縛られず色んな「おもしろいこと」をやっていきたい!と話す澤地さん。自身では長続きしなくて、飽き性で、と謙遜していたけれど、新しいことを始めるのは勿論、何かをスパッとやめるって結構大変。「おもしろいこと」を原動力に色んなことに挑戦できるって実はとってもすごいことだと思います。
空き物件で何かを始めたいと思っている不動産屋さんも、実は沢山いるんじゃないでしょうか。ただ、始め方が分からなかったり、動くための人が足りなかったり、何らかのネックがあって動けていない不動産屋さんや、オーナーさん。
澤地さんの活動は無意識にそんな人たちのハードルを下げてくれていて、すごく軽やかに見えました。
(ライター・写真/VILLAGE INC. 本間 千裕)
(写真提供/澤地 陽平)
有限会社沢地 不動産部
取締役:澤地 陽平
HP:https://www.izusawachihudousan.com/
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