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創作和太鼓で地域活性化!伝統文化をつなぎ下田を盛り上げる「豆州白浜太鼓」
みなさん、豆州白浜太鼓という太鼓集団をご存知ですか?
下田の方なら一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
伝統的なお祭りの和太鼓とは少し違ったパフォーマンス、軽快なリズムを刻みながらイベントを盛り上げる姿はとても印象的です。現代的なアレンジの効いた曲もありつつ、伝統的な和太鼓の力強い演奏もあります。そんな注目を集める創作和太鼓(※1)集団の代表、藤井孝之さんに「豆州白浜太鼓」について聞いてみました。
(※1)創作和太鼓:和太鼓を主体とする音楽のこと。複数人で大きさの違う様々な種類の太鼓を使い合奏のように演奏される。(組太鼓、複式複打法)
――豆州白浜太鼓はどのようなグループですか?
下田市白浜を拠点に活動する創作和太鼓のグループです。前身である白浜太鼓の期間も含めると活動期間は30年以上になります。私が代表になったのが約5年前で、現在のメンバーは8名です。地域イベント参加や施設での公演が主な活動です。現在はコロナのためできていませんが、地域の小学生を対象に太鼓を教える活動もしています。
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――現在は下田ではかなり有名になっていると思いますが、豆州白浜太鼓はどのようにして始まったのですか??
もともとはお祭りの若い衆が集まって作った地域の和太鼓グループでした。その時はまだ現在のようなスタイル(創作和太鼓)ではなく、どちらかといえば伝統的なお祭りの太鼓の延長で、自分たちが楽しむために演奏していました。
今のような創作和太鼓になったのが2000年頃、「創作和太鼓のような太鼓演奏がやりたい」という思いがあり、先生を迎え本格的に創作和太鼓の練習を始めました。いろいろなご縁もあり、太鼓芸能集団「鼓童」(※2)に所属されていた方(元団員)に先生になってもらいました。
(※2)太鼓芸能集団「鼓童」:佐渡を拠点に世界で活躍する太鼓芸能集団。
私も20代の頃、下田で「鼓童」の公演を見たことがあり、とても衝撃をうけました。まさか所属していた方を先生に迎えられるとは思っても見ませんでした。20代の若い先生でしたが、演奏も技術もとても素晴らしく、練習を始めた時はとても感動しました。毎年10月末にある白浜神社例大祭(前夜祭の火達祭)の楽曲も先生が作ってくれたものです。
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――そこから現在の豆州白浜太鼓のスタイルが始まったのですね。
基本的には公演を通じて稼いだお金で太鼓など備品の管理をしていますが、最初のころは大きな収入もなく、備品の維持管理だけでも大変な時期もありました。白浜太鼓の前身だったグループから太鼓を譲り受けて始めたので、今のように多くの種類はなく、ある程度限られたものを使っての演奏でした。
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一番の進展があったのは県の「宝くじ助成金」の制度(※3)を使えたことです。太鼓の活動が地域の活性化や伝統文化の継承、青少年育成等に関わっていることが認められ、助成金の申請が通りました。その助成金で現在の備品である各種の太鼓を揃えることができました。太鼓の種類が増えたことで演奏できる楽曲の幅も広がり、オリジナル曲も増えていきました。
(※3)宝くじ助成金:(一社)自治総合センターが行なっているコミュニティ助成事業の助成金。宝くじの社会貢献広報事業として、コミュニティ活動に必要な備品や集会施設の整備など、地域のコミュニティ活動の充実強化等を目的としたもの。
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中でも「担ぎ桶太鼓」(肩に掛ながら演奏できる太鼓)が増えたことで公演でのパフォーマンスがとても楽しくなり、お客さんの反応も良くなりました。太鼓を担いで動けることでこんなにも演奏が楽しくなるとは思いませんでした。自分たちのモチベーションも高くなり、この頃から演奏に加えて演出にも力が入るようになりました。
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――確かに担ぎ桶太鼓の奏者がいると、固定された太鼓より動きが生まれて盛り上がりますね。実際の公演を見ていてもパフォーマンスの楽しさが伝わってきます。
――今までの活動について教えてください。
2000年ごろから本格的に創作和太鼓を始め、だいたい3年くらいでそれなりに形になってきたので公演依頼も増えて来ました。メンバーのつながり(知り合いや関係者)からオファーが来るようになり、少しずつ広がっていきました。
(コロナ前の)2018年頃までは、年間20〜30回ほどの公演を行なっていました。夏の繁忙期期間には「毎日公演」などもあり、朝、夕方、夜で1日3つのホテルを持ちまわったという大変な時期もありました。
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――2019年からのコロナの影響はかなりのものだったのでは?
コロナはかなりの影響がありました。当時、イベントは軒並み中止となり、まず発表の場(公演)が全くなくなりました。演奏はアンサンブル(小人数での合奏)なので、最低でも6〜7人が必要になります。練習環境においても、複数人が密となる室内での練習が難しくなりました。また、メンバーに中には医療関係で働いている人もいたため、コロナ禍では人集め自体ができなくなりました。
子供達の太鼓練習も、コロナでかなりの影響がありました。そもそも集まることができなくなりましたし、自分たちもリスクを負えないということで練習ができなくなりました。
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小学4年生以上を対象に練習をしていましたが、2年以上まともな練習もできず、小学生のつながりも一旦は途絶えてしまいました。今年の夏明けにも「2学期から小学生に太鼓を教えて欲しい」というオファーがあったのですが、夏前に感染状況が落ち着かなかったことで、流れてしまいました。
私たちが子供たちに太鼓を教え始めたのが約20数年前。一期生の当時小学6年生だった子が現在のメンバーの1人でもあります。それだけ続いて来たこともあり、影響が大きかったのはとても残念です。また一からのスタートですね。
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――やりがいはなんですか?
公演を観に来てくれるお客さんの声ですね。演奏の場に集まってくれる人の楽しそうな顔、「太鼓を見に来たよ」と笑顔で声をかけてくれたり、喜んでくれている姿を見ることがやりがいです。
自分たちが見せたいもの、お客さんが求めている「感動」を想像しながらパフォーマンスを考えたり、楽曲をアレンジしていくのがとても楽しいです。
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――今後はどのような活動をしていきたいと思いますか?
現在は8人で活動していますが、もう少し一緒に演奏できるメンバーを増やしたいと思っています。白浜の地域の人に限らず、市内や近隣地域からでも良いので興味のある人に参加していただき、活動範囲も広げていきたいと思っています。
最初は自分たちが楽しむためにと始まった「白浜太鼓」ですが、長く活動していくうちに発足当時以上に「地域のために」という思いが強くなって来ました。コロナで疲弊してしまった地域を盛り上げることも必要ですし、子供たちにも太鼓演奏の楽しさを伝えていきたいです。それが伝統の継承にも繋がると思っています。
公演を通じて太鼓の楽しさを共有し、共感してもらいたいと思っています。
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自分たちの楽しみから始まった太鼓が、今や地域の活性化を支え、さらには伝統文化の継承の役割も担うまでに。ただの伝統的な和太鼓というと少し硬いイメージがありますが、創作和太鼓にはそれを払拭する魅力があるように感じます。とても親近感があり、そのパフォーマンスから「楽しさ」が伝わってきます。演奏している豆州白浜太鼓の皆さんが楽しんでいるからこそ、そう感じるのでしょう。イベントも再開し始め、先日は埼玉県秩父市まで遠征に行かれたとのこと。次は11月6日、下田で開催される伊豆大特産市での演奏が予定されています!みなさま、豆州白浜太鼓の活動に大注目です。これからも地域を盛り上げていってくれるでしょう!!
WITH SHIMODA ライター:温泉民宿 勝五郎 土屋尊司
写真提供:豆州白浜太鼓(2,3,6,7,8,11枚目)、下田市民文化会館(5枚目)、土屋尊司(その他+イラスト)
豆州白浜太鼓 Facebookページ
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