整理

この間Twitterのスペースでお話していたときに、「シャニマスで一番好きなキャラは白瀬咲耶さんです」と言ったらその理由を問われた。めちゃくちゃ当然の成り行きなんだけど、僕は理由を聞かれると思っておらず、何も用意していなかった。30秒くらい話しながら考えていたが何も浮かんでこず、完全に詰んだので、「後日書面で説明します」と言って話題を終わらせた。絶対に何か言うべきだったと今でも思う。しかし、自分と他の方々でシャニマスに関する知識に確実な差があることを感じていた(ならそもそもそんな話を振るなよ)ので下手なこと言って失望されたくない思いが喉をビッチリ塞き止めていた。

その時は本当に文章にするつもりはあまり無かったけど、さっき風呂に入っているときに意外とすんなり考えをまとめることができたので、本当に文章にしようと思う。好きなキャラについて語る文章は得てして湿度が高くなるものだけど、下の文章は割にサラッとしていると思う。僕の愛情が足りないせいとも、読ませる文章力が足りないせいとも言える。

僕は涼宮ハルヒの憂鬱でいうと鶴屋さんが一番好きだ。鶴屋さんは一見いかにもキャラキャラしい奇抜な人物に見える。その表面上のキャラクター性だけでももちろん好きなのだが、時折見せる素に近い表情がそれをさらに引き立てていると思う。僕が思うに鶴屋さんは自分が本当の自分とは違うキャラを演じているのだというつもりは無いのだと思う。彼女はデフォルトでキャラクターを被ってる人なのだ。

僕は二面性がある人に魅力を感じる。二面性を持つ人はRPG、持たない人はSlither.ioみたいなものだと思う。初対面からその人物像をある程度見通せる人よりも、時間を掛けて段々と理解していくことができる人のほうがちゃんと向き合わなければという気持ちになるので自ずと魅力的に見えてくる。

さて二面性がある人には他者から見て二面性があることが分かる人と分からない人の2種類がいると思う。この2種類の間にある違いとは何か。それは「どうでもいい人を基本許しているか敵視しているか」である。どうでもいい人というのは、自分の人生にあまり大きく影響を与えなさそうな人くらいのイメージだ。二面性が分からない人はどうでもいい人が自分の内面へ侵入することを防ぐために外ヅラを用いている。つまりこの世の大半の人間とは分かり合えないと思っており、ハナから自分とそれ以外を切り離している、どうでもいい人を敵視している、というわけである。一方二面性が分かる人というのはそれほど世界に絶望していない。常に「この人は分かり合える人なのだろうか、そうではないのだろうか」という迷いを抱えている。前者に反して、この世の大半の人間の中から自分を真に理解しようとしてくれる人を探し出す為に外ヅラと内面を分けているように思うのである。

僕は、とらドラ!でいうと櫛枝実乃梨が好きだ。最後の方の何やってんねん感はかなり気になったが、彼女もまた二面性を持ち合わせており、この人に心を預けて良いのだろうかという葛藤を抱えている人物であると分かると、その不器用さも愛らしく感じる。

とらドラ!の中で、個人的に最もグッときたシーンが彼女の人間性を強く表している。5人で別荘へ遊びに行った夜、ひょんなことから櫛枝実乃梨と高須竜児は2人きりになる。竜児が実乃梨に彼氏がいるか問いかけると、実乃梨は逆に尋ねるのである。

『高須君は、幽霊見たことある?私は、幽霊はいるって信じてる。本当に見たことはないし、見たことがある人の話も、全然信じてない。それとさ、同じように思うことがあるの。私もいつか、恋愛して結婚して、幸せになるって、信じてる。けど、実際に誰かとそんな感じになったこと、ないんだよね。』

それまで櫛枝実乃梨は幽霊が苦手だとしていたが、本当は誰よりも幽霊を見たがっていた。きっと小さい頃は信憑性に欠ける幽霊の噂に毎回期待しては、実際は大したことではなかったと知って失望するといったことを繰り返していたのだろう。(なんて健気なんだ)(あとこれに対する竜児の返答も最高だったよね)

全て2年前くらいに見た時の記憶を頼りに書いているため、違っている部分も多いかもしれないが、このときまだ竜児と実乃梨はそこまで親密な仲では無かったと記憶している。その竜児にこの話をしたということが、接する人に対して常に気を許して良いのか決めあぐねているということを示唆しているように思う。

デフォルトでキャラを被っている人は、自分の内面にあまり自信がない。だから人と関わるうちに段々「人と関わる用の受け答え」を獲得していき、無意識に内面と外ヅラが徐々に乖離していく。乖離すればするほどこの2つを切り替えることが難しくなっていく。そのため内面に切り替える踏ん切りがつかなくなり、人と心から分かり合うことはできないのではないかと思うようになる。しかし彼女らは自他をきっぱり分けて外の世界に絶望しきることができない。なぜなら「人と関わる用の受け答え」を獲得して、内面と乖離した外ヅラを形成したのは、そうしてまでも人と関わりたかったからなのだ。

そのジレンマは、なんて美しいのだろう。

僕がこれらのキャラクターを愛するためにアニメの中に入りたいと思ったことは何回に及ぶか分からない。

と、まあそういう訳で僕はデフォルトでキャラを被っている人が好きで、白瀬咲耶さんにも同じ気質を感じるため、好きだと言うわけだ。純粋に黒髪で高身長で声の低い女性が好きというのもだいぶあるけど。

白瀬咲耶はそんなキャラクターじゃない、お前は何も分かっていないという方はお気軽に、お声をお掛け下さい(廃品回収車)


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