彼女
あの子
出会ったのは雨降る病院の待合室
沈んだ空気の中にそぼ降る雨音が厭に空々しくて
話しかけたのは人見知りの私の方だったよね。
「あの…とても失礼ですが何処がお悪いのです?」
貴女は明るく笑って
「全部です。頭のてっぺんから足の裏まで全部が悪いんです」
だなんて。
そう、私も同じようなものかしら。
私たちは同い年と分かりすぐに意気投合
診察までの小1時間多くの話題で事欠かず楽しい時間が持てたっけ
そうして…彼女は進行性難病
薄く笑ってそう言ったんだ…
静かに空気が淀んでいき堪えられない時間が流れる
もう一度
あと一回会いましょうとの約束をしてLINE交換したけれど
メールが既読にならずに逝っちゃった
半年前
ホスピスへ転入の手続きにロビーに私たち母娘は凍える心でおりました。
少しの間、私が席を外して戻ると娘のはしゃぐ声が。
ああ こんな風に笑う子だったなと思いだしたものです
あの瞬間、本当に娘は楽しかったのですね
ありがとう
ありがとうね
あとは言葉にならず静かに静かに電話が切れた
電話の主は彼女の母からーーー
ねえ
キミの最後をこんな私でも少しは支えてあげられた…?
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