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雪の降る夜に  娘より

ありがとう
お母さん
貴女は大きな人でした
今更だけど私の自慢の母でした

こんな簡単な言葉もっと早く言っておけばよかったね
なのにいつも悪態ばかりついてきた愚かな娘
今になってやっと分かるなんて遅いのかな
毎日 祈ることしかできずにいた私はなんて無力なのだろう

手があったかいのに

医師は再三嘘をつく

お母さんが死んじゃったの…
お母さんは死んじゃったの…
こくんこくん…て数回の下顎呼吸を繰り返し穏やかに眠って逝ってしまったの…?

「先生…」

楽観的と言えば聞こえがいいけど
いつも能天気で過ぎたことは1mmだって気にしない完全前向き型思考の母の娘に生れたのに私は真逆の後ろ向き

メソメソばかりの人生で
人生お粗末すぎる使い方の毎日で
そんな自分に苛立ってその矛先は母への八つ当たり
けれども目いっぱいの愛情で全部受け止めてくれたっけ

お母さん
本当は大好きだったんだよ
甘えてばかりでごめんなさい
入院生活がけれこれ続いて
「家に帰りたい」
と言う母の願いを叶え自宅で過ごすことに執り成した時
『ありがとう』
と嬉しそうに言ってたね

ありがとう
だなんて こちらこそだよ、お母さん

その日が来るまでのひと月間
何度も危険の波を搔い潜り
『奇跡の天才』だと呼んでたわたしだったケド

本当は苦しかったのにね
よく頑張ったね

お世話になりました
ありがとう
いい娘じゃなくて
ごめんなさい
今になって親孝行のひとつもしてやれずに悔いてます

もうじき四九日になりますね
貴女が天国空町一丁目へ行く日が近づきました


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