【千成幼稚園+せんなり村】地域の多世代が繋がる場
今回は千葉県佐倉市にある「学校法人千成学園 幼保連携型認定こども園 千成幼稚園」(以下「千成幼稚園」)の理事長であり、「NPO法人せんなり村」(以下「せんなり村」)を運営する、安川裕樹さんを取材させていただきました。
昨年末「せんなり村」のクリスマス会に、私たち岩渕薬品のメンバーでお邪魔させていただき、秋祭りのチャリティー焼き芋の販売で集まった資金をもとに、クリスマスチキンを寄付させていただいた繋がりもあります。
地域との繋がりを大切にされているという「千成幼稚園」と「せんなり村」のお話を伺わせていただきました。
自然に恵まれた環境を活かした子育て支援・地域交流施設
安川さんが園内をご案内してくださいました。
ここでは自然の中で遊ぶことを大切に考え、「ぼうけんのもり」と名付けた裏山で遊べる環境があります。
園舎は木材のぬくもりを感じる雰囲気です。
廊下と部屋は同じ木の床に見えますが、子ども達が部屋の中で元気に遊んでも大丈夫なように材木を変えたり、プールの後はすぐに温かいお風呂にも浸かれるようにするなど、子どもたちが過ごしやすい工夫が感じられます。
そんな「千成幼稚園」と「せんなり村」は2021年度にキッズデザイン賞を受賞されたそうです。
地域の交流拠点を目指して
「千成幼稚園」は今から50年ほど前、佐倉市の急激な人口増加と幼児教育の重要性が高まる中、地域住民の切なる願いとして幼稚園の設置が要望され、設立されました。安川さんが引き継がれたのは今から8年ほど前、当時経営していた安川さんのお祖父様が急に他界されたことにより、幼稚園スタッフとして働かれてた安川さんが、突然引き継ぐことになったそうです。そこからは全国様々な学会へ足を運び、勉強を重ねてこられました。
その中で知ったこと、国内の子どもの4人に1人が貧困にあっているという課題です。(2018-2019年時点)その問題点は金銭的なことだけはなく、ひとりでご飯を食べたり、地域と繋がっていない孤独にありました。
2019年4月、幼稚園から認定こども園へと移行することにしました。
様々な勉強の末に、地域の交流の拠点を目指したいと考えていた安川さんの決断でした。認定こども園制度には地域における子育て支援をしていく方針があります。またこども園は、幼稚園と保育園の両方の良さを併せ持っている施設と言われるように、0歳から5歳まで子ども達を側で応援し続けることができるのも決め手となりました。
※参考:認定こども園の概要(こども家庭庁公式ページより)
同年6月、子どもだけでなく地域の多世代の交流の場づくりとして「せんなり村」をNPO法人として設立しました。ここでは日常の生活の中で地域の方々が繋がること、心と心のつながりを大切にしたいと考えていらっしゃいます。
【インタビュー前半】地域のみんなの身近でいられるように
安川さんに直接お話を伺いました。
安川さん「地域共生社会を目指して地域のみんなが交流できるように「せんなり村」を立ち上げましたが、今日もボランティアの習字の先生が来ていて、小学生達が夏休みの宿題の書き初めを仕上げているんですよ。」
with LEAF note部「そうなんですね!」
安川さん「せんなり村の建物では他にも、子どもの居場所づくりのために子ども食堂や駄菓子屋を2019年から毎月開いていますが、地域のおじいちゃんやおばあちゃんが手伝ってくれています。子ども達が困ったときに助けを求められる場所を目指して、身近にいられるようにと思っています。」
with LEAF note部「わくわくDAYというのをパンフレットで拝見しましたが、そのことですか?」
安川さん「そうです。千成幼稚園とせんなり村、そしてなかよし文庫(地域文庫)さんと一緒に新しい地域拠点コミュニティを目指しています。千成自治会さんにもご協力いただき、地域の方みんなで一緒に楽しめるような場をつくりたいと思っています。コロナ禍で、当初は夜に開催していた子ども食堂を、昼間のランチに変更しました。現在は多いと300人もの地域の方々が集まります。園内の給食室で手づくりした温かいご飯を提供しています。」
地域から支えられる子ども食堂
通常の子ども食堂は20-30食の提供に限定しているところが多いですが、せんなり村はその10倍もの食事を提供しています。ボランティアで継続するには負担が大きいということで、地域の様々な民間企業からも支援を受けられています。
中でも「せんなり村だより」というパンフレットを年に2,3回つくって寄付を募っていらっしゃいます。内容は子育て世代に対して教育のあり方や、市内の見どころや情報、まちづくりの発信にまで渡ります。
その他にも農協さんから売れない野菜の寄付をいただいたり、地域の野菜などを直売しているわくわく広場さんから廃棄する野菜を分けていただいたりと、助けられています。
2021年からの3年間では内閣府が行う、子どもの未来国民応援運動から千葉県で唯一認定され、支援を受けました。その際に行ったのは子ども食堂において国産素材を積極的に使うことや政府の備蓄米をいただいたり、市営&県営住宅に住む貧困家庭にアプローチを行なったりもしたそうです。
【インタビュー後半】同じ立場で一緒に生活を築いていく
安川さん「地域を良くしていくのは地域コミュニティだと考えています。月に一度、コミュニティサロンとしてふれあい食堂を17時から20時で開催しています。ここではなんでも1皿100円で、持ち込みOK、出前OKの自由な場となっています。現在では小さい子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、毎回100人くらい集まりますよ。ピアスをつけておしゃれをして来られるおばあちゃんがいたり、みんな好きなように過ごしています。」
with LEAF note部「いいですね。」
安川さん「千成幼稚園では80人のスタッフのうち10人が70歳以上の方です。
20代の新卒から83歳まで、様々な世代のスタッフが働いています。80歳のおばあちゃんは毎朝6時から給食室の刻みに入っていて、7時半になると81歳のおばあちゃんが子ども達を迎えています。」
with LEAF note部「すごいですね。そのような多世代のスタッフでサポートするアイディアは安川さんが提案されたことなのですか?」
安川さん「これは園長と対話を重ねていくなかで考えたことです。私にはそんなアイディアは出ないですよ(笑)。高齢者を取り入れたいというよりも、子ども達にとって必要だから高齢者と関わってもらっているという考えです。」
with LEAF note部「ところで安川さんは幼少期、どんなお子さんでしたか?」
安川さん「入園初日に靴を投げて、先生に“片付けておいて!”と言ったり、窓ガラスをいきなる破ったりするような、やんちゃな子どもでした。」
with LEAF note部「そうなのですね!愛情たっぷりの平和な家庭で育ったという感じでしょうか?」
安川さん「私が子どもの頃は両親や大人達がみんな働いていて寂しかった記憶があります。それでも生まれた時から地域のお祭りにも支えられてきたような気がしています。また、当時は周辺の家庭はどこも鍵もかかっていない家ばかりで、近所のおじさんやおばさんとの距離がとても近かったです。急に入ってきて一杯私の家でひっかけて帰っていくなんてこともありました。」
with LEAF note部「なるほど、地域の人々との繋がりに救われてきた安川さんだからこそ、一生懸命取り組みたいことなのですね。」
安川さん、お忙しい中ありがとうございました。地域の人と人とが繋がることの大切さを改めて感じさせていただきました。