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withE通信:カレーライス

今日5/26は、皆既月食とスーパームーンが同時に起こる、とても珍しい天体ショーの日です🌕
仕組みについてはまた次回……。

そしてもう1つ、実は今回がwithE通信100本目の記事となります🎉
記念すべき100本目、いつも読んでくださっている方も、はじめましての方も、最後までお付き合いください。

さて、皆さんは日本人の好きな食べ物と聞いて、何を思い浮かべますか?
ほとんどの人が、その中にカレーライスが入っていたのではないでしょうか。

実際、日本人が好きな食べ物のランキングを調べてみると、多くのサイトでカレーライスがトップ3に入っています。カレーといえば、学校の宿泊研修の野外炊飯でも定番のメニュー。それだけ日本人に愛されているということですね。

そんなわけで、今回の記事の主役はカレーライスです🍛


<カレーライス×数学>

まずは、材料調達。
今回は、野外炊飯で42人分のカレーを作ることにします。
このような沢山の量を作るときには、必要な材料の総量を手早く計算したいところですが、多くのレシピには、4人前や8人前の分量しか載っていません。

こんなときに役立つのが、です。
比とは、文字通り、複数のものを「比べる」際に使う考え方です。
式で表すと、「〇:△=●:▲」というようになります。
この式の成立条件として有名なものには、「△÷〇=▲÷●」があります。

ではさっそく、必要なニンジンの量を考えてみます。
3人分を作るときにニンジンは2.5本必要でした。では、42人分では何本必要でしょうか?(3人で2.5本は多いんじゃないかと思ったそこのあなた。家庭の数だけレシピがあります。こんなレシピだってあるんです。 https://housefoods.jp/recipe/rcp_00023865.html
先ほどの式を使って考えてみましょう。
「3人:42人=2.5本:〇本」というように式が立てられます。
成立条件を考えると「42人÷3人=〇本÷2.5本」になりますね。
この式を計算すると「〇本÷2.5本=14」
というわけで、必要なニンジンの量は35本!
このやり方で、他の材料も計算しましょう。


<カレーライス×社会>

必要な量がわかったちょうどそのとき、こんな商品が目に入りました。

PB商品
「カレーに必要な野菜がすでに切ってある!」
「しかも洗わなくていい!」
「普通に3つの野菜を揃えるより安いかも!」
奥様もビックリ!😲の商品です!せっかく必要な野菜の量を計算しましたが、すぐに使えるこちらの商品も魅力的です。

でも、この「洗わずさっと使える カレー・シチュー用」という商品、不思議ではないですか?どうして3種類の野菜がそろっていて安いのか。どうしてカレー用の野菜として売られているのか。などなど…
これらの疑問を考えてみましょう🤔

この商品、「TOPVALU」(トップバリュ)というブランド名がついています。このブランドはイオンやマックスバリューなどのイオン系列の店舗でしか売られていません。こうした、ある特定の店舗でしか販売されていない商品ブランドを「プライベートブランド」と呼びます。セブンイレブンの「セブンプレミアム」や無印良品もその1つです。

ちなみに、製造メーカーが商品につけたブランド名を「ナショナルブランド」と呼びます。有名なのは、明治の「おいしい牛乳」やハウス食品「バーモントカレー」などでしょう。これらはどこの店舗に行っても同じ商品が売られていますよね。

一般的にプライベートブランド商品はナショナルブランド商品より安い、といわれています。それはなぜでしょう?

そもそも価格は次のように構成されていると言えます。
販売価格 = もともとの商品の値段 + 生産・流通・販売のコスト + 税
「生産・流通・販売のコスト」とは具体的に工場の従業員や農家さんの給料(人件費)や、輸送費、宣伝費などが挙げられます。
「税」は消費税、酒税、たばこ税などを指します。

ということは、「生産・流通・販売のコスト」を安くすれば、価格が下がりそうですよね?プライベートブランド商品はこの点を利用しているのです!
プライベートブランドではお店に並ぶまでにかかるコストを管理することで安さを実現しています。例えば「トップバリュ」ではこのような工夫( https://www.topvalu.net/brand/kodawari/price/ )をしているそうです。

では「なぜカレー用の野菜として販売されているのか?」という疑問について、これは皆さんが自分で調べてみてください😊
ヒントは、「最近スーパーでよく見かけるカット野菜」です。こうした商品は誰にとってお得でしょうか?また、企業・生産者側にどのようなメリットがあるのでしょうか?分かったらぜひ、教えてくださいね👀

カット野菜

やっぱり楽はしたいので、切ってある野菜を買いましょう。

<カレーライス×英語>

野菜は揃いましたが、やっぱりお肉は欲しいところです。入れるお肉の種類を変えることによって、いろんなパターンのカレーライスが出来ますよね。

ところで、皆さんは次の単語を英語で言えますか?
①牛肉 ②豚肉 ③鶏肉 ④羊肉
⑤牛 ⑥豚 ⑦鶏 ⑧羊

〈正解〉
①beef ②pork ③chicken ④mutton
⑤cow ⑥pig ⑦chicken ⑧sheep
ここで何か不思議なことに気付きませんか?英語ではお肉の名前を言うときに、「動物名+肉」にはならないのです。
例えば、日本語の牛肉という単語は「牛+肉」というように「動物名+肉」で成立していますよね?豚肉、鶏肉、羊肉なども同様です。

なぜ、英語では「cow meat」や「pig meat」のような表現を使わないのでしょうか?
実は、beefやporkはフランス語に由来しているのです!
少し歴史をさかのぼりましょう。

今から約1000年前にノルマン・コンクエストと呼ばれる、イングランドが現在のフランス北部にいたノルマン人に征服される出来事がありました。その後300年間、イングランドはノルマン人によって支配されました。そのため、当時の王や政府はフランス語で動き、権力を手に入れたい人や富裕層はフランス語を猛勉強しました。一方、一般庶民は英語を継続して使用していました。その結果、イングランドでは英語とフランス語が同時に使用されていました。

では、話を最初の問いに戻します。動物を育てるのは英語を話す一般庶民、その動物を食べるのはフランス語を話す富裕層の人たちです。
つまり、動物を育てる人とそれを食べる人の言語が異なっていたのです。フランス語でのお肉の名称が今日でも残っているため、英語ではお肉を「動物名+肉」では表現しないのです。

既にお気付きの方もいるかもしれませんが、鶏肉に関しては例外で、食用の鶏肉も動物の鶏も同じchickenという英単語です。これはノルマン人に占領される以前から、イギリスでの主流の食用肉が鶏肉だったため、フランス語の影響を受けることなく、英語のchickenがそのまま定着したからだそうです。また、鶏肉は厳密にはmeatという概念には含まれません。よって、「chicken meat」と呼ばれないのです🐓

歴史的背景から他言語の影響を受けている英単語は他にもあります。興味のある人は是非調べてみてくださいね♪

<カレーライス×国語>

なんやかんやあってカレーが完成しました。

早速食べたいところですが、ご飯を食べるときや食べ終わったときに「いただきます」「ごちそうさま」って言いますよね。むしろ、言わないと怒られることもあります。でもその理由を聞かれたとき、きちんと説明できますか?

そもそも「いただきます」には「生き物の命をいただきます」「用意してくれたものをいただきます」という意味があり、もともとは「いただく」という言葉が丁寧に表現されたものです。また、「ごちそうさま」には「多くの生き物の命をご馳走になる」という意味や、「馳走(お世話をするために駆け回る)」に由来する「いろいろと用意をしてくれてありがとう」という意味があるそうです。

この「いただきます」「ごちそうさま」の歴史は意外と浅く、一般的に使われるようになったのはここ100年ぐらいだと言われています。仏教の感謝の精神から生まれた、お供え物をいただいていたことから生まれた、はたまた軍国主義におけるしつけによって生まれたなど誕生や浸透した理由にはいろいろな説があります。

では、海外で「いただきます」や「ごちそうさま」はどのように表現されるのでしょうか。実は、日本語の「いただきます」や「ごちそうさま」の意味を表す単語はあまりありません。それどころか、食事の前後のあいさつがそもそも存在しないという国もあります。同じように食べる前に使われる言葉としては、フランス語で「Bon appétit(ボナペティ)」という言葉がありますが、「たくさん召し上がれ」という意味を表します。また、アメリカでは食事の前には神に祈りを捧げます。

皆さんが普段使っている「いただきます」「ごちそうさま」。作ってくれた人や食べ物に感謝の気持ちを表すために、面倒くさがらず言いましょう!


<カレーライス×理科>

ちゃんと「ごちそうさま」も言って、食べ終わりました。

片づけをしようと、ふとカレールウの箱の裏側をみると、意外とカロリーがあることに気づきました。実は、市販のカレールウは、小麦粉や油を使っているため、カレー粉よりカロリーが高くなってしまいます。

ところで、この〇〇kcalと表示されるカロリー、一体何なのでしょう。

カロリー(cal)とはエネルギーの単位の1つ。定義は「1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要なエネルギーを1cal」です。この単位、私たちにとっては非常に身近です。しかし、栄養学、スポーツ科学、疫学など、限られた分野でしか使わないことを知っていましたか😲

昔、熱と仕事はまったく関係のないものだと考えられていました。温度が変化するのは「熱素」と呼ばれる物質が移動するからだと思われていたからです。あるとき、ジュールという物理学者がこんな実験を行います。

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手を離すとおもりが下降し、水の中のプロペラが回転します。すると水の温度が上昇したのです。この実験から、仕事と熱には密接な関係があることが知られるようになりました。

中学校2年生の理科でジュール(J)という単位が登場します。1Jの定義は「1ニュートン(N)の力で,その向きに 1m動かすエネルギー量」です。これもカロリーと同じくエネルギーの単位です。昔は熱と仕事を分けて考えていたため、熱の単位をカロリー、仕事の単位をジュールとして使っていました。しかし、先ほどの実験から熱と仕事の単位を使い分ける必要はなくなったのです。

1calの定義、覚えていますか?実はこれ、最初の水の温度によって必要なエネルギーが異なるという問題点があるんです。それに、エネルギーの単位が複数あると、単位変換を行わなければならず面倒です。(1cal=4.18J)

そのため、エネルギーの単位にはジュールを使うことが国際的に決められました。ですが栄養学、スポーツ科学、疫学などの分野では今でもカロリーが根強く使われています。特に食品表示などはカロリーという単位が浸透しているため、急にジュールに変更するとわかりにくい、というのが今でもカロリーが使われている理由だと考えられています。

ちなみに、カレーライス1食分はおよそ800kcal前後。個人差はありますがおよそジョギング2時間分に相当するようです🏃
たくさん食べた後はたくさん運動しましょう!

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<日常×勉強>

カレーライスの分のカロリーも消費したところで、記事もいよいよ終盤です。
以前「役に立つから学ぶ?学んだことを役立たせるんです」という記事を書きました。

今回の記事の内容は、おそらく普通に生活している中では役に立ちません。

カレーの材料なんて大体で買えばいいし、背景を知らなくても安いものは安い、beefがフランス語由来だと知らなくても困らなければ、いただきますの語源を知っていて得することはまずない。消費カロリーはちょっと気になる。

ですが、役立たせられないわけではありません。

数学の比の知識があれば、電子レンジの500W表示しかないお弁当を600Wで何分温めればいいかわかるし、日常に溢れている単位や指標の定義を意識すれば、シャインマスカットの糖度20度に対して、ニンニクの糖度が30度以上ある現実も受け入れられます(いつか記事にするかもしれません)。

これからも、いろいろな記事を書いていきますが、その内容を少しでも役立たせてもらえれば、私たちも嬉しいです😊
                  担当者:メッセージ係一同


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