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【withE通信:罰金でルール違反者が増えた?】

私たちの生活には多くのルールが存在します。校則や交通ルール、スポーツのルールなどその種類は様々ですが、そのほとんどに破ったときの罰則が決められています。もちろんこれはルールを守ってもらうためにあるわけですが、必ずしも罰則があればルールを守るとは限らないのです。今回は罰則が逆効果になった例を紹介したいと思います。


<罰金でルール違反者が増えた?>

経済学者のウリ・ニーズィーとアルド・ルスティキーニはある実験を行いました。その内容と結果は次の通りです。

『イスラエルのある保育園は、閉園時間までに迎えに来ない保護者がいることに悩んでいた。そこで保育園は、閉園時間に遅刻した保護者に対して罰金を課すことにした。

これで問題は解決したかと思いきや、遅刻者は減るどころか増えてしまった。この結果を受けて、保育園は罰金制度をやめたが、それでも遅刻する保護者の数は戻らなかった。』

なぜこんなことになってしまったのか。
その原因は、保育園と保護者で罰金の捉え方が違うことにありました。

保育園は罰金を課せば、その支払いを避けるために遅刻しないようになるだろうと考えていました。しかし、保護者は「罰金を払えば遅刻してもいい」と捉えたのです。

罰金が導入される以前は、保育園に迷惑をかけないために遅刻に気をつけていたり、遅刻した際には、それに罪悪感を抱いたりしていました。しかし、罰金が導入されたことで、保護者はそれを超過した時間に対する「対価」と考えるようになりました。保護者からしてみれば、罰金を払うことで保育園にとっては利益であり、自分たちにとっては時間が過ぎても子どもを預かってもらえるという、まさにwin-winの関係でした。その結果、以前はあった罪悪感もなくなり、それまで遅刻していなかった保護者も遅刻するようになったのです。


<お金で人は動かせるか>

イスラエルの保育園での実験は「罰則があればルールを守るわけではない」という例でしたが、「報酬を与えればやる気を出すわけではない」というケースもあります。

外部からの報酬や罰によって人々のモチベーションが下がる現象は、「アンダーマイニング効果」と呼ばれます。アンダーマイニング効果を理解する上で重要になるのが、「内発的動機付け」「外発的動機付け」です。

内発的動機付けは、自分の内面から起こるもので「好きだから」や「誰かのため」といった気持ちがこれに当たります。対して、外発的動機付けは外部からの介入によるもので、報酬や罰、締切などが当てはまります。

アンダーマイニング効果の例としては、「子どもが自分からお手伝いをしてくれたのでお小遣いをあげたら、お小遣いをあげないとお手伝いをしてくれなくなった」、「自分の好きなことを仕事にしたとたん、それがつまらなくなった」などが挙げられます。

それまで、「助けるため」、「好きだから」という内発的動機付けで行動していた所に、お金という外発的動機付けが加わったことで、モチベーションが下がってしまったのです。


<アメとムチも使いよう>

「ルールを守ってもらいたい」、「ある活動を促進したい」といった時に、罰則や報酬を与えることは真っ先に思いつく手段の1つです。しかし、その状況や相手の気持ちによっては、それが全くの逆効果になることもあります。「アメとムチ」という言葉もありますが、人のやる気をうまく引き出すのも簡単ではありませんね。

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