【withE通信:雪と停電】
2021年が始まって、2週間が過ぎますが、年末から寒い日が続いていますね⛄
コロナによる外出自粛も相まって、暖房を使う頻度も増えているのではないでしょうか。
そんな中、10日秋田県で大規模停電が発生しました。この時期、しかも特に寒さの厳しい東北地方での停電、想像しただけでも恐ろしいですね🥶
停電の原因
今回の停電の原因は、7日から8日にかけての風雪とみられていますが、皆さんここで何か引っかからないでしょうか? 風雪が原因ということは、文字通り風と雪のせいで停電したということですが、なぜ雪が原因で停電するのか、疑問に思いませんか?
台風などの強風で電線が切れて、停電したと言う話は聞きますが、雪による停電はあまり聞き馴染みがありません。もちろん、木に雪が積もり、その重みで折れたり、しなったりした枝が電線を切ってしまうことはありますが、今回はそれが原因でもありません。
では、なぜ停電が起きたのか?
正解は、雪が電柱上の絶縁体(電気を通しにくい物質)部分などに付着し、漏電を起こしたためです。……この説明だけで「なるほど!」とはならないですね😅もう少し詳しく見ていきましょう🔍
なぜ雪がついて漏電するのか
実は、この仕組みは、中学理科の内容とも関係しています。キーワードは2つ、「季節風」と「水の電気分解」です。
季節風は地学分野、水の電気分解は化学分野と、別々の分野の内容ですが、この2つの知識を組み合わせると、雪による漏電のメカニズムが見えてきます。皆さんも少し考えてみてください🤔
それでは、順に見ていきましょう。
冬になると、中国大陸で高気圧のシベリア気団が発達、西高東低の気圧配置となり、北西からの季節風が生じます。この季節風は、日本海上で水蒸気を含み、湿った風となって、日本海側に雪をもたらします。
ここで重要なのが、この雪には、塩分が含まれているということです。大気中には多くの物質が存在していますが、その中には、海塩粒子と呼ばれる海水由来の塩分でできた微粒子も含まれています。海塩粒子は、日本海上にも存在しており、これらが季節風によって運ばれることで、塩分を含んだ雪が日本海側で降ります。では、塩分を含んでいることが漏電とどんな関係があるのか、ここで登場するのが2つ目のキーワード「水の電気分解」です 💧
授業で実験をしたことがある人はわかるかもしれませんが、水の電気分解では、電気を通しやすくするために、水に水酸化ナトリウムを溶かします。これと同様に、水に塩化ナトリウムを溶かした場合も、電気が通りやすくなります。そして、海塩粒子には、塩化ナトリウムが多く含まれています。
ここまで読んだら、ピンときた人もいるのではないでしょうか😁
まとめると、「日本海上の大気中の塩分を含み、電気を通しやすい状態になった雪が電柱上の絶縁体に付着したことで漏電が起こった」ということになります。
絶縁体が漏電?
ですが、ここで新たな疑問が浮かんできます。
「雪がついた部分は絶縁体なのに、どうして漏電が起きたのか?」
まず、電線とそれを支える送電塔の間には、碍子(がいし)と呼ばれる絶縁体が取り付けられており、電気が送電塔に流れないようになっています。絶縁体は不導体とも呼ばれ、電気を通しにくい性質を持ちますが、湿度が高い環境では、その絶縁力は低下します。それによって、空気の絶縁が局所的に破壊され、放電が発生します⚡
今回のような場合は、碍子が電気を通しやすい状態の雪で覆われているため、より放電が起こりやすく、さらにその放電が碍子の表面上の雪を伝わっていきます。絶縁体は、ある一定の値以上の電圧が加わると、絶縁破壊という現象が起こり、その絶縁性が失われます。その結果、電気が碍子表面上を伝って、送電塔に伝わり、停電が発生します。
本来、雪が多い地域では、このような事態を防ぐために碍子を連結させるなどの対策をしていますが、今回の大雪で塩分を含んだ雪が例年以上に付き、漏電が起こってしまったようです。この現象は台風でも起こることがあり、台風が過ぎ去った後に停電を引き起こしたりします。また、このような塩分が原因で発生する被害は、総称して塩害と呼ばれ、停電を引き起こす以外にも、鉄筋コンクリートを劣化させる、農作物の生長を妨げるなど、様々なものがあります。
長くなってしまいましたが、雪による漏電の仕組み、納得してもらえたでしょうか?
後半は少し難しかったかもしれませんが、中学校の知識で、身の回りの出来事の仕組みを説明できるということを知ってもらえたら嬉しいです。
さて、この寒さの影響で全国各地で電力設備使用率が9割を超えており、大規模停電が懸念されています。皆さんも、暖房以外の電子機器の使用を控えて、節電を心がけましょう😄
作・K.Y.(英語担当)
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