数理:成功確率改善の効用逓減
この記事の提供するもの
前提としての課題意識
改善前の成功率の高さによって改善後の効用がどう逓減するのか
必要なレバレッジ係数を確保できる改善前の成功率はどれくらいか
この2つの疑問に答えることが本記事の課題です。
課題意識・疑問に対して本記事が提供するもの
疑問に解を出すための式と、その手触りを得るためのグラフです。
成功確率改善の効用逓減
失敗確率を縮小した時の成功率の変化倍率m
いま、改善前の元々の成功率$${p}$$ ($${0 < p < 1}$$とします。
当然、改善前の失敗確率は$${1-p}$$です。
この改善前の失敗確率を、改善によって割合$${r}$$ ($${0 < r < 1}$$)だけ成功に転換できるものとします。
また、以降は$${r}$$を失敗縮小率と呼ぶことにします。
すると、
改善前の成功率$${P_B = p}$$
改善後の成功率 = $${P_A = 1 - (1 - p)(1-r)}$$
改善前後での成功率の変化倍率$${m = \frac{P_A}{P_B} = \frac{1-(1-p)(1-r)}{p}}$$
…というように、それぞれを表現できます。
パラメータに具体的な値をはめこんだ$${m}$$についてのグラフを下に示します。
グラフを見れば瞭然ですが、改善前の成功率$${p}$$が高くなるほど、失敗縮小率の水準が同じでも全体の成功率の変化倍率は低くなっていきます。
改善前の成功確率pが変化倍率mの逓減に与える影響
改善前後での成功率の変化倍率を失敗縮小率について微分すると、
$$
\frac{dm}{dr} = \frac{1}{p} - 1
$$
…という式を得ます。
この式は$${p}$$が0に近づくほど大きな値を、1に近づくほど小さな値を示します(下図参照)
要求レバレッジを確保可能な改善前成功率
いま、失敗を$${r}$$だけ縮小した時に成功確率を$${nr}$$以上は押し上げたいとすると、$${n}$$が求められているレバレッジ係数だと言えます。
この条件を満たすには、
$$
\frac{1 - (1 - p)(1-r)}{p} > nr + 1\\
\Leftrightarrow p < \frac{1}{n + 1}
$$
…というような式を満たす$${p}$$ (0 < $${p}$$ < 1)であれば良いわけです。
グラフを例示すると、次のようになります。
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