岐阜にある薬草の宝庫はすごかった
私は岐阜県の会社で働いていますが、ご縁があって岐阜県の様々な薬草と関わることに携わらせてもらっています。薬草というと古臭い感じがしますが、現代っぽい言葉に直すなら「和ハーブ」です。ハーブは基本、西洋の名前が一般的で、現代では料理やアロマ、美容などに使われています。ですが最近は、日本にあるハーブということで「和ハーブ」がとっても注目されています!例えば、どくだみ。これはものすごい繁殖力があり厄介な雑草扱いされることが多いのですが、実はどくだみの持つ効能は素晴らしく、健康にも美容にもとっても良いのです。まさに薬草です。
さて、そんな日本にたくさんある和ハーブこと薬草の、宝庫と呼ばれる場所が岐阜県にあるのをご存知ですか?私は実際にその場所へ行ってきたので、どれほどすごいのかシェアしてみたいと思います。
織田信長が薬草園をつくった!?
その場所は岐阜県伊吹山にある揖斐川町春日という場所です。伊吹山はその地理や地層の特徴から薬草が育ちやすい環境であったようです。今でも伊吹山周辺には固定種を含む非常に多くの種類の薬草が自生しています。またその歴史はかなり古く、伊吹の薬草にまつわる記載はなんと古事記が書かれた時代にまで遡ると言われています。そしてなんと織田信長がここ伊吹山に薬草園を作らせたという話も残っています。
信長が安土城にいた永録年間に、ポルトガルの宣教師フランソワー・カブラルと謁見した際、宣教師が人の病を治すには薬が必要であると、そのためには薬草栽培が必要であることを進言しました。その進言を受けて信長は伊吹山に薬草園の開設を許可したのです。50町歩という広大な薬草園には、ヨーロッパからもってきた薬草が約3,000種類も植えられていたと言われています。この薬草に関しての実録は発見されていませんが、当時からかなり経過した江戸時代初期に『南蛮寺荒廃記』『切支丹宗門本朝記』『切支丹根元記』などに、薬草園の記事が記録されています。薬草園のあった場所がどこであるかは不明ですが、ヨーロッパの約3,000種と共に入ってきたと思われる雑草類が今も伊吹山のみに見いだされていることは、薬草園を設けられたことの力強い証拠になっています。その証拠である大切な植物は「キバナノレンリンソウ、イブキノエンドウ、イブキカモジクサ」の3種です。
私がここの場所を訪れた際、そこで薬草を栽培されている方に、当時ポルトガルから入ってきたであろう外来種の雑草を見せてもらいました。イブキノエンドウです。⇩500年以上にも渡ってずっとここに自生していたと考えると、すごいです。
実際に薬草の宝庫へ行ってみたら、すごかった(よもぎ編)
さて、そんな古来から薬草の歴史がある伊吹山。実際に薬草の栽培をしている場所へ連れていって頂きました。村から車でどんどん山道の急斜面を登ること20分。完全に下界から離れた、自然豊かな場所です。空気が全く違います。風の吹いてくる音が遠くからざわざわ~としてきたかと思えば、時間差で自分のいるところまでその風が吹いてきて、なんだか圧倒されてしまいました。
ここではまずよもぎが栽培されています。というか半自生状態です。伊吹よもぎはその辺に生えているよもぎと葉の形も違います。(写真⇩)ここで栽培されている方に、乾燥させたよもぎを見せて頂きましたが、色もすごく綺麗な濃いグリーンで、香りも強くて新鮮な感じがしました。(私の自宅でもよもぎが生えており、乾燥させてみましたが、ここのとは色も香りも違いました....。)ここは標高も高く、冬から春は深い雪に埋もれます。そんな環境で育つよもぎは生命力が高く、薬効成分もかなり違うのだと思います。これは個人的な感覚なので断言できませんが、本当に質の素晴らしい、ものすごい自然のパワーが詰まったよもぎという感じがしました。
私が働いている会社ではよもぎ染を行っています。そのよもぎは、ここで栽培されたよもぎを使ったよもぎ餅を作る際に出る、煮汁を使って染めています。本来なら捨ててしまうものを使っているので、「のこり染」といっています。よもぎ栽培の現場を実際に見てみると、もはや高級品とも言えるこのよもぎを余すとこなく使いたいし、まだ使える部分があるのに捨てるのはもったいないなあと感じました。よもぎ餅は地元のおばあちゃんたちが作ってくれています。ですがここのよもぎ餅はもう地元でしか販売していないそうです。みなさん、ぜひ岐阜県にいらっしゃった際は、揖斐川町春日(旧春日村)へ遊びにいってみてくださいね。薬草風呂や薬草を使ったお料理もあります。
次回はよもぎ以外の薬草についてもどんどんご紹介します!!