太田裕美 - 木綿のハンカチーフ - 1975
三月というと卒業と旅立ちのシーズン。てなわけで、今回のこの「木綿のハンカチーフ」は、都会へと旅立つ男性とそれを見送る女性の、両方の手紙のやり取りの物語な歌。
今の人にはまったくピンと来ないでしょうなっっ
今でこそネットや携帯(スマホ)があって、すべて連絡はそれで出来ちゃうわけですけど、ふた昔前は携帯などなくて、人々の連絡ツールと言えば…一家に一台しかない黒電話と電報、あとは郵便だけでした。
だから夢を叶えるために都会に出ていく側と、地元たる田舎に残るものという構図での遠距離恋愛は、住まいやテリトリーなどの環境が変わってしまうだけでなく、お互いを繋ぐ連絡手段が、ほぼ手紙だけになってしまうので…かなーり難しいって話になってしまうのです。
近県ならいざ知らず、交通費も馬鹿にならないわけですし、いつも傍に居たい、相手を感じていたい…心を通わせて通じ合っていたい、思い合っているという気持ちを確認したいっていう、恋愛にとっては、とても肝心なところが見えないので、不安に押しつぶされたり寂しさから相手を疑ったり、孤独を募らせて、疑心暗鬼に陥ってしまったりもしますし…
なかなか難しいものっす。
物理的な距離が出来ると、心の距離も出来てしまいがちっていう、遠距離恋愛は難しいんだよって、そういう物語な曲。
まあ…でも、この歌はそれだけでなくて、田舎から都会に出て行った男性が、都会に染まって段々と変わっていっちゃって、刺激的な生活の中でもとの純朴さを失い、彼女のことを忘れていくって、そういうよくあるパターンの物語だったりもする。
「木綿のハンカチーフ」1975
昔からよくある男女のお話ですよね。
私はもともと都会?というか、首都圏(都内通勤圏内)に住んでる人間だから、そういうのってちょっと分らないのですが(親は上京組ですけど)。
でも、田舎の閉鎖的な環境から都会という、開放的な場所、地方からあらゆる種類の人間が集まってくる、田舎に存在する山とか自然以外には何でもかんでも揃ってる場所に住むようになって、その便利さに触れてなじんだとき…田舎の閉鎖性や狭い人間関係や古い価値観で支配された場所に戻れないって、感じる人は多いんでしょうね。
もちろん、都会に馴染めないで戻る人も多々いるわけですけども。そこは今の時代にも、まだ少し残っている感覚かなぁ。だけど…やっぱり昭和の、あの時代だからこその歌なんだよなあ。
手紙がメールになって、lineになった今では、こういうやり取りは、もはや死語の世界で失われた文化ですよね。
ああ、私もそんなやり取りをしたときが一瞬だけありました。携帯はまだなかったものっっ うん。仕事で地方に数か月だけ行ってた時に、手紙で彼氏とやり取りしたなあ…遠い瞳。
さてさて太田裕美さん、埼玉出身で、8歳の時からピアノと作曲を始められて、小学校でコーラス部にも所属されていたそうです。スクールメイツ出身で、キャンディーズと同期ですね。
オーディション番組に出たことから、歌手デビュー。
「雨だれ」1974
こちらがデビュー曲でした。アイドルとは違う雰囲気でしたかね。しっとり情緒的な歌で、彼女の声質を引き立てる歌でした。
ピアノ弾き語りというスタイルはその後の、ニューミュージックの台頭で、ピアニストかつシンガーソングライターが、弾き語りスタイルで歌うのは珍しくなくなったけど…この頃はギター弾き語りの方が多かったから、アイドル的なポジションの人では、わりと新しかったかも知れません。
同時代では小坂明子さんとかいたけれども。その位じゃないのかな。
少し後には八神純子さんや久保田早紀さん、原田真二さんとか出てきたかな。ユーミンもまだ、テレビには出てない頃だったし。
「九月の雨」1977
この歌も好きでした。
「赤いハイヒール」1976
ハイヒールなんだけど、当時、私はなぜか童話の「赤い靴」を連想してしまっていたなぁ。
「失恋魔術師」1978
作詞はほとんど松本隆さんなんですけど、この歌の作曲は吉田拓郎さんだったりする。
「最後の一葉」1976
有名なO・ヘンリーの短編小説がモチーフになっています。
物悲しい曲だけど太田さんにとても合ってる。こういう歌が太田さんの本骨頂なのかなあと思ったり…
「しあわせ未満」1977
男性歌手が女性の気持ちを歌う歌は、フォークとか演歌とか、とても多いように思うけど…女性が歌う男性の心情歌って、少なかったですよね。昔も今もあんまし多くはないような。特に太田さんみたいな、とても女性的な人が歌うというのは珍しいわけで。ソフトボイスの持ち主が歌うからこそ、余計に。
「恋愛遊戯」1977
「南風 - SOUTH WIND -」1980
ビールのCMに使われました。夏らしい爽やかな曲。
「さらばシベリア鉄道」1980
大瀧詠一さんのカバー。大好きな想い出の歌です。私は大瀧さんのバージョン、あのすべてをあきらめきったような、大瀧さんの甘い声で歌われるのが大好きなんですけども~
太田さんのバージョンも素敵かな。
大滝詠一 オリジナル
久しぶりに太田さんの曲聞いて、好きな曲多かったなあって思うし…ホント懐かしいなあって思いました。アイドルでもない、ニューミュージックにしては早すぎた、不思議なポジションのシンガーさんでしたけど。
ご自身の個性を生かした、とても良い歌に恵まれてるってことを考えると、ご自分らしい無理のない活動が出来た方なのかなあって思ったりします。
今、乳がんに掛かられて闘病されているとのことですけど…早く完治されるといいなあと思うばかりです。
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「My Favorites〜音楽のある風景」
2021/03/13 掲載記事より転載