Jos Slovick - I Am a Poor Wayfaring Stranger「1917 命をかけた伝令」- 2019
「1917 / 1917 命をかけた伝令」2019
この映画、今年のお正月にネトフリで見ました。
今さらながらの第一次世界大戦もの。幼少期は第二次世界大戦ものを見る機会が多く、80年代以降はベトナムやその他地域の内戦ものを見る機会が多かったので、令和になってから作られた第一次世界大戦ものを令和に見るというのも、新鮮な気持ちでした。
フィルムは確かに新しいけれども、派手な演出は少なく、細かい小道具とかも凝っていたと思います。再現率が高いというのでしょうかね。
ともすると、日本の時代劇ものは、映像が綺麗すぎるわりには小道具や大道具が陳腐で、時代考証がちゃんとなってないなあ…みたいな質の低下ばかりが目立って(衣装や鬘、化粧、おかしい、所作や歩き方が着物のそれではない、建物が現代的過ぎる、その時代にはそぐわないものが使われている等)ますし、ハリウッド映画もSFXに頼りすぎていて、地球の重力を無視しているっておかしな演出も多々で、なおかつ人間がきちんと描かれてないなって、陳腐な脚本が増えている中、この映画は第一次世界大戦時の、あの雰囲気を見事醸し出していたなあって思います。
して、若いときと違って、映画館に行く機会も減っているし、テレビの無い生活をするようになってからは特に戦争映画を見る機会は無くなっていたのですが、何となく気になって見ましたらば…すべてをワンカットで撮ると言う変わった手法で取られた映画とのこと。斬新な手法だなあと思いつつ、主人公たちと同じ目線からすべてを眺めるという…彼と同じものを視ている状態が何とも心地よく、不思議な感覚に陥る映画でした。
一言で言って、見て良かった映画だった。
ただ、感じやすい年齢を超えてからの視聴だから、心の琴線に触れる感動とかそういうのはもうなかなか無いし、そのような作品とも違うけれども。
Jos Slovick「 I Am a Poor Wayfaring Stranger」2019
歌詞を読んで思い出したのが、
ルカ15章11~32節「放蕩息子」の話です。
キリスト教徒、聖書を読んだことのある人なら、すぐ結びつくと思うのですけど、日本人は「?」ですよね。
はい、この歌詞は間違いなく、放蕩息子の心情、故郷へと向かう旅路での思いのたけを唄った歌です。
さて、こちらの歌。この以前にも聞いたことがありまして…劇中で聞いた時、あれどこかで聞いた歌だぞ?と…
ただ、歌手さんの声が違う。
調べてみると、19世紀後半からアメリカに伝わる伝承歌たるゴスペル、フォークでした。そりゃ聞いたことあるはずだ。
ていうか、昔に購入したオムニバスのCD(ヒーリング系)に別の歌手さんのが入っていて、それで何度も聞いていたことに改めて気が付き。確か、エニグマとかアディオマスとか入ってたクラシカル・クロスオーバーよりのCDだったかなあ。
Andreas Scholl「 I Am a Poor Wayfaring Stranger」2001
そうそう、このバージョンでした。
映画のは、出演者出会った俳優ジョス・スロヴィックがそのシーンでその役として歌ったもので、最初はレコード化(いやさCDか)されていなかったものを、映画を見た人々の多数の嘆願書が集まり(change.org)、CD化が実現したとのこと。
有名なゴスペルですから、色んな人がレコーディングしています
Burl Ives「Wayfaring Stranger」1944
多分この歌を一番最初にレコーディングした人。
Paul Robeson「Poor Wayfaring Stranger」1945
奴隷の息子だった彼はゴスペルとしてこの歌を歌いました。
Emmylou-Harris 「Wayfaring Stranger」1980
カントリーテイストです。
Libera in America 「Wayfaring Stranger」
リベラも歌ってますね。
リベラと言うと、そういえばウィーン少年合唱団はどうしているんだろうと思い出し。
Johnny Cash「Wayfaring Stranger」2000
検索すると一番出てくるのがジョニー・キャッシュのですね。
Jack White「Wayfaring Stranger」2003
映画「コールド・マウンテン」の中で歌われました。
Ellie & Joel 「Wayfaring Stranger」2020
2020 年のビデオ ゲーム「The Last of Us Part I」の中でのキャラクターとして、それぞれの俳優さんがキャラ名で出したものだそう。
Rhiannon Giddens「Wayfaring Stranger」2019
Doc Watson「Wayfaring Stranger」1992
Narrow Way「Poor Wayfaring Stranger」2015
19世紀末頃からのアメリカの多くの伝承歌がそうであるように、この歌もタイトルが" The Wayfaring Stranger " " Poor Wayfaring Stranger " " I Am a Poor Wayfaring Strangerなど、いくつかあるというか統一されていません。
今のところは上記の三種類があるようですが。
また、タイトルにバリエーションがあるように、歌詞も統一されていなくて、いくつかバリエーションがあるとのこと。
なので、上記にペーストした曲も、アレンジが異なっているだけでなく、歌詞にも差異があったりします。
ちなみに研究家によると、
歌詞は1858年に「Christian Songster」に掲載されたのが初めてで、ソングライターは不明ではあるものの、曲はアイザック・ニスワンダーによる 1816 年のドイツ語の賛美歌「Ich bin ja nur ein Gast auf Erden」から派生したものではないかということです。
「Ich bin ja nur ein Gast auf Erden」1816
こうして聞くと、確かにこの旋律がルーツかなって、はい。
間違いなく、この歌が原点ですね。
ドイツ系の移民の人が歌っていた歌もしくは演奏していた曲が、英語にされて伝わったのかなあ。
南北戦争の時には、この曲は「リビー刑務所賛美歌」として知られていたとのこと。
ちなみにアメリカ西部劇作家のメンバーは、この曲を史上最高の西部劇 100 曲の 1 つに選んでいるそうです。
いずれにしても、一度耳にしたら、耳に残ると言うか…心に刻まれて忘れられることの出来なくなった曲でして…
心のとてもとても深いところ…魂を揺さぶり、胸の奥底にいつまでも残っている…心の琴線に触れてくれた一曲なのでありました。
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