時間旅行~タイムスリップ
私には、自分が生まれたときの記憶があります。
病院の産婦人科の病室(大部屋)で他の妊婦たちと話をしたり、私に授乳する母の姿を眺めていた記憶。
どんよりとした、今にも雪が降りそうな重い空の下。父方の実家から、母方の実家へと、おくるみにくるまれた私が、母方の祖母に抱かれて、歩いている姿を見下ろしている記憶。(後で聞いたところによると、事実ではあったらしい。産院は父方の実家近くで、一か月ほどそちらに居てから、母方の実家まで移動 ※構図としては正面、少し上の位置から)
いずれもあるはずのない記憶。
始めて、過去生とも思しき記憶を思い出したのは
K幼稚園ゆり組の園児だった頃(笑)
同じクラスのMさんをして、「この女がアタシを殺した!」と・・・(幼稚園児なのに相手を「この女」扱いっっww)
そして、自分がどうやって殺されたのかを、ノートに「お絵かき」してみたり。でも、それは自分だけが理解していたことで、周囲の誰かに具体的に説明をしたりはしなかった。
当時、私の母の心は既に壊れてしまっていたし、話せるような人は何処にもおらず、また、誰よりも私自身が、何故自分がそういうことを思うのか、戸惑っていたから。
今でこそ、だけど「過去生」なんて、そんな知識持ち合わせてもいなかったし。よしんば、誰か大人に話していたとしても、子供のたわいのない空想話として片付けられていたろう。
ちなみに、そのMさんとは小学校は違ったものの、中学、高校と一緒だったりした。中学の時は同じクラスになることはなかったものの、高校一年で同級生になった。
過去で私が彼女に殺されたのは、 当時の人生で17歳のとき。結婚式を控えた前の日のこと。その時の年齢に近い世代のときに、再び縁を持つなんて、運命というのは何と皮肉なものだろう。とはいうものの、当時の私は子供の頃の自分が言い出したことなんて、きれいさっぱり忘れていた。
過去の人生で私と彼女の間であったこと・・・
現在の人生で私と彼女の間であったこと・・・
それはここでは省略しておこうと思う。別に隠しているわけではないけど、
単純に書き始めると長いので。ようするに、めんどくさいってだけかww
今はもう、再び巡りあうことのない一点の彼女と私だけど…
いつか、彼女がその時こころに住まわせた修羅から完全に解き放たれて、
自分の過ちを塗り替えるほどの善行を、それを必要としている誰かにしてくれてたら、いいなと。ただ・・・・そう願うのみ。
この経験は、「思い出した」というような類のものではなく、
まさに体験した・・・というような出来事。
それは中学一年になったばかりのときのこと。音楽の授業で、ある曲を視聴することになった。それは有名な古典作曲家のものではなく、教師だったその人が個人的な趣味でセレクトした、エスニックな調べの、たぶん民族音楽。
レコードの針がおりて、旋律が耳に入ってきたとたん、
ぼんやりと窓の外を見ていた私を、取り囲む世界・・・景色と空間がガラリと変わってしまった。一瞬の出来事だった。
そこは音楽室で、私は確かに座っていたはずなのに、驚いて見渡すと、
周囲は360度地平線が見えるほどの草原で、頬をなでる風も、少し乾いた冷たい空気も、人を隠すほどに高く伸びた草がなびく音も、やけにリアルで、生々しいほどに・・・
そして耳には笛の音。横を向くと、むき出しの岩に腰掛けた少年が、私の隣で笛を吹いていた。
その瞬間、「えっ!!」とフリーズ。
少し曇った空、遠くに見える家畜の群れ、最初は戸惑った私も、少年の吹く笛の音が心地よいと、大地に座って、吹き渡る草原の風の中にいることが、
たまらなくいとおしい時間に思えてきた。
そして、
「ああ、私は確かにこんな景色の中にいた。
私はこうして彼の笛の音を聞くのが好きだった」
と、何故だか判らないけど、そう思った。
その根拠がどこからくるのか、相変わらず判らないままで。
大きな革で出来たテントのような家、火の匂い、空に伸びていく煙、家畜たちの鳴き声、大地に沈み行く太陽馬で草原をかけぬけたこと、子供の背を隠してしまう草むらの中でかくれんぼや追いかけっこをしたこと。
五感に伴われた感情が・・・感情だけが鮮やかに蘇ってきた。
やがて、レコードの音がやむと同時に、重なって聞こえていた笛の音は消え、気がつくと周囲に広がっていた景色も、もとの音楽室に戻っていた。
キツネに包まれたような、白昼夢の中にいたような、不思議な感覚。
自分の身に何が起こったのかわからず、ただ呆然と目を丸くしているだけ。
こんな経験は、あとにも先にもこの時だけで、今に至るまで、一度も経験できていない。もう一度したい・・・と思っても、一向に出来た試しがない。
夢よりも妄想よりも確実にリアルで、現実にそこに「行った」いやさ、その一瞬そこに「居た」という実感を伴っての記憶の蘇りは、タイムスリップとしかいいようがない体験だった。
あれはいったい、何だったのだろう?
今でも、不思議に思う。