「民主党」略称問題について


はじめに

 立憲民主党と国民民主党はどちらも公選法上の略称を「民主党」として届け出ています。略称が被っている現状、比例代表における「民主党」票は立憲民主党と国民民主党で按分されます。(半分ずつ分けるのではなく、立憲票と国民票の割合に応じて分配される)
両党に投票するために敢えて「民主党」と書くという人もいますが、多くの有権者は戸惑うでしょうし、実際にSNSなどでも混乱を招いています。
 
なぜ立憲民主党と国民民主党という違う政党が同じ略称を使い、その状況を是正できないのでしょうか。そして、一部で主張されている「立憲民主党が国民民主党を潰すために略称を後から被せた」というのは事実でしょうか。これまでの経緯をまとめました。

(急いで書いたので文章が散らかっており、参考記事も示しきれていません。なるべく早めに整えます)
(政治家は敬称略とする場合があります)
(あくまで私が調べた範囲の情報で書いています。申し訳ありませんが誤りがあった場合はコメントで指摘してください)

以下において、
立憲民主党(2017年結党)→旧立憲
国民民主党(2018年結党)→旧国民
立憲民主党(2020年結党)→新立憲
国民民主党(2020年結党)→新国民
と表現する場合があります

まとめ

「立憲民主党が略称民主党を後から被せた」は誤り
旧党時代には旧国民が略称「民主党」を後から被せたが、その時は旧立憲が譲った
新立憲、新国民はそれぞれ同時期(2020年結党後すぐ)に略称「民主党」を届け出た
●新立憲は旧国民議員の大部分も合流した党であり、党名は国会議員による投票で決めた。枝野幸男提案の立憲民主党(略称:民主党)と泉健太提案の民主党(略称:民主党)で争われ、立憲民主党(略称:民主党)に決定した。
●略称被りが解消できないのは、両党が略称「民主党」をやめると他党に「民主党」を使われる可能性や、一方のみがやめると得票において不利になることを恐れているため、といわれている

文中の[数字]は参考記事の番号と対応しています

前史 旧立憲民主党、旧国民民主党時代の略称問題

1. 2017年に旧立憲民主党(2017)が結党され、衆院選で略称「民主党」を用いる。(希望の党は略称「希望」) [1]

2. 希望の党が紆余曲折あって旧国民民主党(2018)になり、略称は「国民党」として届け出る。[2]
(民進党が希望の党を吸収する形をとったため、法規上は民主,民進と旧国民は同一政党)

3. ところが参院選を7月に控える2019年の4月になって、旧国民が略称を「民主党」に変更。旧民主党時代からの支持者になじみのある名にすることで、得票の底上げにつなげる狙いがあった。「国民民主党は民主党の後継政党だ」とも強調する。[3]

4. 旧立憲からは「按分狙いで、あざとい」(立憲幹部)といった反発も出るが、混乱を回避し、さらに「立憲」の名称が浸透してきたことを踏まえ、略称を「りっけん」に変更して参院選に臨む。[4],[5]
(枝野代表自身は略称「民主党」にこだわりはなかったようだ[6])

以上のような流れで、2019年参院選では旧立憲民主党が「りっけん」、旧国民民主党が「民主党」をそれぞれ略称とし、略称問題は円満?に解決した。

ところが、2020年に旧立憲と旧国民が合流することになり、新たな略称問題が生まれる。

現状 新立憲民主党、新国民民主党時代の略称問題

1. 2020年初めから合流協議が行われるが、難航する。当初、合流新党の名称として「立憲民主党(略称:民主党)」を旧立憲側から提案したが、旧国民側は党名を「民主党」とするよう主張し、折り合わない。協議を経て旧立憲が譲歩し、国会議員による投票で党首、党名を決定することになる。[7]

2. 2020年8月11日に旧国民の玉木雄一郎代表が合流受け入れを表明する。しかし、旧立憲と旧国民は原則全員が合流新党に移籍する前提であったが、政策に違いがあるとして旧国民の一部は(党首を含めて)移籍せず、分党することになる。

3. 2020年9月15日、合流新党と"合流しなかった旧国民議員"による新国民民主党が結党される。
 同日、合流新党においては新党代表/党名選挙が行われる。代表候補は枝野幸男と泉健太。党名候補はそれぞれが提案した立憲民主党(略称:民主党)と民主党(略称:民主党)。投票の結果、代表は枝野幸男、党名は立憲民主党(略称:民主党)と決定する。
 新国民民主党においては代表選は行わず、玉木雄一郎が引き続き代表を努めることとなる。新国民民主党の略称として「民主党」を発表する。

3. 新立憲、新国民はどちらも略称を「民主党」として総務省に届け出、何度か略称被り解消に向け協議するが解決せず今に至る。

略称が被ったまま行われた国政選挙は2022年参院選、2024年衆院選の2回


なぜ略称被りを解消できないのか

その理由としてよく挙げられるのは以下の通りです

●両党とも略称民主党をやめると「民主党」が他の政治団体に利用される恐れがある
●民主党票が一定数(2021衆院選では362万票)あり、一方が略称民主党をやめると不利になる恐れがある
●略称民主党をやめると新たに略称を届け出ることになる。しかし、「立民,りっけん」「国民,こくみん」などは現状でも有効票であり、変えるメリットがあまりない

疑問と私見

まず、旧党時代の略称問題については曲がりなりにも両党納得の上で解決したと考えているため触れません。
新立憲と新国民で現在に至るまで略称が被っている問題。ここにはいくつかの疑問があります。

1. 玉木代表を含めた旧国民執行部が、合流協議においては党名民主党を主張し、その結果として党名選挙が決まったにも関わらず、最終的に合流せず略称民主党を用いたこと
→枝野幸男が略称において「りっけん」ではなく「民主党」を提案したのは旧国民組への配慮だとも言われています。玉木さん自身が協議をしたのですから、合流新党における党名決定の過程について把握していたはずです。にも関わらず、新国民で略称「民主党」を使うことについて旧立憲側と何の擦り合わせもしなかったのでしょうか。

2. 旧国民議員において、新立憲合流組と新国民結党組の意思疎通はできていたのか
→泉健太は党名選挙において「民主党(略称:民主党)」を提案していました。正式名称が民主党になれば流石に新国民の略称民主党は認められなかったはずです。泉さんと玉木さんの間で意思疎通はできていたのでしょうか。

3. 誰が悪いのか
→この略称被り問題は立憲国民両党のコミュニケーション不足が原因なのであって、どちらか一方に責を負わせるべきものではないと考えます。

最後に

この記事を書いたのは、SNS上において「立憲民主党が国民民主党を潰すために略称を後から被せた」という主張を見かけたからです。確かにこの問題の経緯は複雑ですが、決してそのような事実はないはずです。誤った情報を広めても何も解決しません。略称被りを解消するためには、正しい経緯を理解した上で理性的に話し合う必要があるのではないでしょうか。


参考記事

[1]


[2] 民進党と希望の党は24日、午前、午後の2回にわたり新党協議会を国会内で開催し、新党名を「国民民主党(略称・国民党)」とすることを決定。 ~中略~ 大塚代表は「新しい政党の名前は国民民主党とさせていただいた。略称、通称国民党。国民主権、国民生活、国民経済、これらを守り、向上させ、発展させていく」と発表。


[3]  2019/4/17:国民民主党は17日の総務会で、夏の参院選で届け出る略称を「民主党」にすると決めた。

[4]  2017年の衆院選前に結党した立憲民主党は当初「民主党」としました。民進党の流れを組み、2018年に結党した国民民主党は「国民党」を使っていました。ところが、国民民主党は2019年の参院選前に「民主党」に変更。立憲民主党から「案分票狙いだ」と反発する声が上がりました。立憲民主党は有権者の混乱を避けることを優先し「りっけん」として参院選に臨みました。

[5] 2019/4/26:立憲民主党は26日の執行役員会で、夏の参院選で届け出る略称を「りっけん」にすると決めた。

[6]

[7]


編集履歴

2024年10月26日 公開


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