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すくう

気付いていたはずだ。

わたしは、
わたしのプライドを傷つけたくなかっただけ。

わたしは、
わたしの大切な人を失いたくなかった。

わたしは、
わたしの理想を他者に押し付けて、
絵に描いたような正義を執行したかっただけ。

わたしは、
他者の痛みから来る、不平不満から、
自由になりたかっただけ。


彼の人の本心を知りながらも、わたしは、わたしを優先した。

だから、わたしは、後悔し、考え続けることを課された。

だけど、わたしに残ったのは、左半身の痛みと自己満足。


一体、わたしは、何をしているんだろう。
わたしは、あの時、どうすればよかったのだろう。
もっとこうすればよかったのではないか。

ここ数日、掌を見続けて、天を仰いだ。


あらゆる条件関係なく、
いかなる暴力、いじめ、不当な扱いを、
今も、当時も、認めるつもりはない。

加えて、そんな認められない環境から、
物理的に距離を離すことに成功しても、
心理は不安定なままで、拒絶反応を繰り返す。

彼の人は、闘っていた。

そんな彼の人の、救難信号を直接受け取ったわたしは、
彼の人の本心を聞きたくて、決断を迫った。

本心を聞いたつもりでいた、わたしは、
勝手に信じて、具体的な行動を提案した。

それが、十分な本心でないことは、
彼の人と接してきた中で、分かっていたはずなのに、
わたしは蓋をして、すくいとらなかった。

それに、
「もうやめたい」
彼の人の、逃げ癖を知っていたから、
「もう逃げるな」
と、逆に、わたしは立ちはだかっていた。

わたしは、一緒に闘うつもりだったけれど、
たぶん、彼の人には、追い詰められていたように感じたかもしれない。


今でも思う。
彼の人とわたしが、もしもひっくり返っていたら。

彼の人がいた場所に、わたしがいて。
わたしのいた場所に、彼の人がいたら。

きっと、わたしは、いま、ここにいなかっただろう。

良くても、わたしは、わたしでなくなっていただろう。


すくったと思っていたら、
何もない部分に手を置いて、空を切っていただけ。


本当に辛かったよね。

ああ、わたしってバカだよね。

あの時、終わらせる選択だって、あったはず。


もちろん、あなたの人生はあなたのものだし、
あなたは、あなたのプライドで、あなたを守っているだろうから
どんな生き方をするか、に対して、わたしは直接関与できない。

わたしのことも、忘れてもいい。すくってくれなくていい。

でもね、これはエゴだけど、終わらせてほしくなかった。
なぜなら、わたしが受け取った、ある人の言葉がすべてだから。

これで終わりというよりも、、、始まりだから。
ここから、どう生きていくか、だよ。

ただ、それだけなんだ。

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wisteria
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