ヴァルデマール年代記

マーセデス・ラッキー ヴァルデマール年代記
 あまり知られていないが、昨今溢れかえっているファンタジーとは一線を画す物語である。エルフもドワーフも登場しないしダンジョンもない。ただし、物語は骨太で面白さはお墨付きである。
 最初の登場は「女神の誓い」(創元推理文庫)。主人公は女戦士タルマ。歌と剣の使い手だが、ある夜、山賊の来襲を受ける。ひとり生き残った彼女は、復讐の誓いを立てる。そんなタルマの元へ、魔法使いケスリーが現れる。彼女は呼ばれてきたといい、彼女を助けるという。傭兵の二人の女性が送る冒険譚。 ファンタジーとしては珍しい女性2人組のお話から物語は始まる。二人を結ぶ「女神の誓い」の設定も面白いが、<もとめ>と呼ばれる魂のある剣の存在も上手い設定。この剣は、魔術師には凄腕の剣士の太刀捌きを与え、戦士にはいかなる魔法も寄せ付けない魔よけとなる。ただし女性には傷さえつけられない。この設定が最終話に絶妙な効果を与える。
つまり、ケスリーは、<もとめ>の要請により、タルマの元にたどり着いたのである。この二人の冒険譚が3冊続き、その後は彼女たちの子孫へ話が続く。そしてヴァルデマールへの話に繋がっていく。

 困ったことに、この「ヴァルデマール年代記」は二つの出版社から出ている。創元推理文庫とC★NOVELSファンタジア(中央公論新社)からである。まあ、3部作の1部、2部だけ邦訳して3部目は発行未定・・・とかなるよりは全然良いけど。

 どの話も、魅力的であり、女性が魅力的に描かれている。もし、良かったらご一読をお勧めする。

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最初の試し読み用格安文庫本を店舗に出しました。よろしければどうぞ。


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