
リフト券こども無料の破壊力
インバウンドのおかげで好調なスキー場に注目が集まる中で廃止・休業にいたるスキー場も少なくありません。
スキー・スノーボード人口の減少といいますが母数の人口が激減している中ではむしろ自然な事かも知れません。
それでも諦めの悪い私はどうにか継続の道を模索してリフトの維持・管理コストの削減を訴えます。
そんな私が過去に経験した施策に「小学生以下リフト無料」という大変インパクトの大きいものがありました.
最近だと日本スキー場開発さんのキッズプログラムが規模も大きく仕組みもスマートで秀逸です。
あれは2008年だったと思いますが(記憶違いでしたらすみません)、グループスキー場の子供料金撤廃の指示が出ました。
リフト券の子供区分の売上は約3千万ほどと記憶してます。
これを一気に無料にするというので社員は概ね反対していた気がします。
周辺スキー場の方々からも大変なお叱りを受けたように思います。

少し具体的にお話ししていきます。
退職してますし正確なデータを残している訳でもないので大まかな割合の変化を把握していただければ幸いです。
「小学生以下リフト無料」後の入込人数は前年比130%超。
売上金額は前年比115%ほどに伸びました。
その勢いで決算は黒字化を達成しました。
同エリアにある他スキー場子供料金の平均が2,000円前後の時代に1カ所だけ無料なので週末はファミリーで溢れました。
付帯売り上げであるレストラン、レンタル、スクールも当然伸びたのですが一番伸びたのは大人のリフト券収入だったと思います。
今の私ならもう少し付帯売り上げを伸ばす工夫をしたかも知れません。
子供向けの有料コンテンツの開発に注力していたら面白かったかも。
大勢のお客様で賑わうようになると当然トラブルも増えます。
一番困ったのはレストランへの持ち込みの増加でした。
ファミリーは座る場所を確保したいのでとりあえずお母さんが占有、昼になると家族が合流しお弁当を広げ、その周りには食事を取ろうと空席を探すお客様が右往左往している非常に良くない状態。
持ち込みお断りの掲示のみでは効果が薄く、社員が入れ替わり個別に注意をして回るのがルーティーンになりました。
誤解を恐れずに言わせていただくと「リフト無料化に伴い民度が落ちた」と話していた記憶があります。
レストランを追い出されたお客様に「だったらどこで弁当喰えば良いんだよ」と怒鳴られた事は1度や2度ではありません。
無料休憩場を案内してましたが、カセットコンロを持ち込まれ火災報知器が検知して防火扉が閉まる騒ぎもありました。
しかし、悲願の黒字化のきっかけは間違いなくこの子供無料化であった事は間違いありません。
未来のスキーヤーを応援するという旗を掲げる事で善い行いをしているイメージになり、黙っていてもお客様が集まる魔法のようなこの施策はエリア内のバランスが崩れるほど強烈でした。
雪マジなどは参画事業者が多く将来への投資の意味合いが大きいですが、1社抜け駆けの無料策に関しては強力な集客装置になります。
最近では福島県内で平日無料のスキー場が出現し、近隣大手が格安リフト券の販売で応戦している様子が話題です。
安売り戦争の先に何があるのか気になります。