異なる種類の誤用 〜令和5 試験 Ⅰの問題2 〜
試験 Ⅰ とセットになっている。それがわたしにとっての問題2です。「異なる種類の誤用」を素早く見つけて答える"技"は、試験 Ⅱ の問題6とリンクして役に立つものです。誤りを見つけるなんて「違い探し」は、あまり好きなことではありませんが、問題に結構楽しんで取り組んでいることから、あまりいい性格でない自分が、見えてきたりします(汗)
でも、学びとかよりもやっていて楽しい。比べるつもりはないけど、様々な横文字の学習指導法の勉強したり、問題に取り組む(試験 Ⅰ の問題4から7くらいまで)時の苦痛と言ったら・・・完全に比べている(汗涙)
令和5年度日本語教育能力検定試験 試験 Ⅰ 問題2
⑴【「外国」のつもりが「開国」と聞こえる。】
試験準備をしながら、自分の中では割と得意な分野だと思い調子に乗ったせいか?頭から?にぶち当たりました。
「が」⇒「か」 濁音の誤りだと思い例文を見たら、全部濁音が脱落していました(T_T)
路線変更して、子音に着目しました。
[ɡ]有声軟口蓋破裂音 ⇒[k]無声軟口蓋破裂音 調音点と調音法は同じなので、【 】内の誤りの種類は、有声無声の誤りだとわかります。
例文を見ましょう。
1 「代行」のつもりが「対抗」と聞こえる。
[d]有声歯茎破裂音 ⇒[t]無声歯茎破裂音
同じ種類の誤用ですね。
2 「原稿」のつもりが「健康」と聞こえる。
これは問題文と同じ子音なので、誤用の種類も同じです。
3 「伝統」のつもりが「店頭」と聞こえる。
これは例文1と同じ。
4 「部長」のつもりが「不調」と聞こえる。
[b]有声両唇破裂音 ⇒[ɸ]無声両唇摩擦音
声帯振動の有無(今、この言葉を思い出した😂)と調音法が異なります。
異なる種類の誤用は 4です。
試験本番の問題冊子を見ると、選択肢4の左横に?印を付けています。要するに「全部濁音の誤りやんか!え〜い、時間がない。次っ!」と、適当に解答したものと思われます。
⑵【「失礼します。」と言おうとして「しちゅれいします。」と発音する。】
「つ」が「ちゅ」になる誤りは韓国人に多い。(あくまでも、わたし個人の経験から述べた主観である。) もともと朝鮮・韓国語にない音だから無理もない。英語が不得意な日本人のわたしだって、「l」と「r」の違いが実際の発音で出来ないのよ。「どうして出来ないの!」って言われても、困ってしまいます(´;ω;`)ウッ…
これも子音を見ますと、[ts]無声歯茎破擦音
⇒[tɕ]無声歯茎硬口蓋破擦音 で、誤用の種類は、調音点の誤りであります。例文を見ます。
1 「左でございます。」と言おうとして「左でごじゃいます。」と発音する。
わたし的には「可愛いから 直さなくて、いいですよ」と伝えたいですね。
「ざ」のつもりが「じゃ」、頭の子音を見て「あっ、調音点が違いますな」と、感じるようになっている今を味わいたい(笑) 語頭ではないので、[z]有声歯茎摩擦音 [ʑ]有声歯茎硬口蓋摩擦音 で、誤用の種類は、調音点の誤り。
「じ」の音を出しながら舌の位置を確認しますと、「ざ」を出す時と比べてやや後ろにあることがわかると思います。歯茎に舌がわずかしか当たっていないのですね。
2 「ご注意ください。」と言おうとして「ごじゅういください。」と発音する。
「ち」と「じ」の子音を確認しますと、
[tɕ]無声歯茎硬口蓋破擦音 と[ʑ]有声歯茎硬口蓋摩擦音 で、声帯振動の有無と調音法の違いがあります。問題の例文とは異なる種類の誤用です。答えが出てしまいました(笑) 自分の答えに確信が持てましたら、即 次の問題へ移るやり方もあり🐜です。わたしは「ねちこく疑い深い」性質なのか(ここは、「なので」にしとかんかい!)、とりあえず全部確かめる傾向があります(^_^;)
3 「どうぞこちらへ。」と言おうとして「どうじょこちらへ。」と発音する。
「ぞ」と「じょ」の子音を確認する。これは1でやった検証と同じです。どちらも語頭ではない。
[z]有声歯茎摩擦音 と[ʑ]有声歯茎硬口蓋摩擦音 で、調音点の誤り。
4 「当然です。」と言おうとして「とうじぇんです。」と発音する。
「ぜ」と「じぇ」は語頭でないので、1、3と同じく、調音点の誤り。
異なる種類の誤用、正答は 2です。
⑶【公園で、古い人が楽しそうに話しています。】(悪かったわね、古い人で(ToT)
「老人」と言おうとして「古い人」と言ってしまったら、あきまへんがな。「古い人」誤⇒「年老いた人」正 なんの誤用ですか?助けて、のんびり先生!⇒これは、「負の転移」と呼ばれる誤用だそうです。
外国語を学習している者が、母国語の影響を受けることを「転移」というのだとか。それがいい影響を与えた場合には「正の転移」と呼ばれ、悪い影響を与えた場合は「負の転移」と呼ばれます。
この問題の場合は、英語圏の学習者が「老人」を「old person」と呼んでいるのを、そのまま日本語に置き換えて訳したために起きた、「負の転移」のようです。
この「負の転移」と異なる誤用を探します。
1 この学校の図書館には、多い本があります。
⇒形容詞「多い」、「遠い」、「近い」は名詞に付く時、あまり単独で使われることがない特別なものです。多くの(いきなり答えを!)形容詞は、「美しい海」や「面白い恋人」のように、そのままの形で付けられます。しかし『多い人」❌は「多くの人」、「近いスーパー」❌は「近くのスーパー」などのような用い方をされます。
❴例外がありまして、「多い日も安心」。これは、梅雨の時期は雨が多く降るけど、折りたたみ傘を携行しておけば安心という意味ですね。❵
この例文では、特別な形容詞を 知らなかったために起きた誤用(エラー)が見られます。
2 天気予報によると、明日は重い雨だそうです。
「重い雨」誤⇒「激しい雨」正 形容詞の種類の誤りだな、フッ(剣崎順の不敵な笑い)、とわたしはとっさに判断しましたが、これは英語圏の人の誤りのようです。「heavy rain」を「重い雨」と訳してしまった、「負の転移」です。
3 私の家は、忙しい通りに面しています。
「忙しい通り」誤⇒「賑やかな通り」正 形容詞の種類の誤りやね。と、わたし自身が同じ誤りを繰り返すのは、印象に残すためです。こんな誤用を探す機会が来るかも知れない(汗笑)
これも英語圏の学習者に発生するかも、の種類。「busy street」を「忙しい通り」って、意味やイメージはこちらの方がわたしはしっくりきますが、「負の転移」です。
4 寒い飲み物をたくさん飲むのは、体に悪いdeath。
「寒い飲み物」誤⇒「冷たい飲み物」正 形容詞の種類の誤りだな。印象付けは分かったっちゅうに(涙笑)
「cold drink」を「寒い飲み物』と使うのも、わたし的には可愛いから許したいけど、「負の転移」であります。
「負の転移」でない、1が正答です。
⑷【朝ご飯を食べなくて、会社に行きました。】
食べなくて❌ ⇒食べずに かな。「◯◯の誤り」とかの呼び方を一瞬考えたけど、浮かばないので(苦笑)、とりあえず例文を見ます。
1 最後まで諦めなくて、頑張ろう。
諦めなくて❌ ⇒諦めずに
2 挨拶をしなくて、帰りました。
しなくて❌ ⇒せずに
3 バスが来なくて、歩いて帰ろう。
来なくて❌ ⇒来なかったら
4 ガスを使わなくて、料理をしました。
使わなくて❌ ⇒使わずに
異なる種類の誤用は 3です。
「なくて」と「ずに」の混同。一応こんな呼び方ができるので、格好はついたけど、何か「流さずにトイレを出たような」気分ですね。
⑸【「理解」とは、分かっている意味です。】
分かっている意味? 分かっているという意味。
「という」が抜けている。これで例文を見ます。(好きなギタリストの名前と発音が同じで、呼び捨てにしているような、ややぎこちない感じ)
1 「遅刻」とは、時間に遅れる意味です。
⇒遅れるという意味です。いいですね♪
2 「いななく」とは、馬が鳴く意味です。
⇒馬が鳴くという意味です。そうですね。
3 「教授」とは、教え授ける意味です。
⇒教え授けるという意味です。同じだ。
4 「お前」とは、呼んでいる意味です。
⇒ん?「誰がお前やねん?」と、なる類いの誤用ですね。
人を呼ぶ時は、「ちょっと」(平時)と「おーい」(緊急時)を使いますか、わたしの基準ですが。
異なる種類の誤用、正答は 4です。
発音は正すべきなのか?
今のわたしが出す結論を述べると、「通じるならそんなに気にする必要ないんと違う?」であります、発音に関しては。言葉を使う本人さんが、「どうしても直したい!でも、うまくいかない!!」という方に出会うケースも発生するかも知れない。そんなときには、矯正のお手伝いが出来る人になりたいと思う。
「恥ずかしい」と言おうとして「はじゅかしい」と発音しても、いいじゃあ ありませんか。
違いの指摘よりは、フォローのやり方に気配りの工夫が必要かと。
言葉でアドバイスを加えるでなく、ただ一緒になってうなづいて話を聞くことで、気持ちを共有することができる。分かち合いの精神を共に育むことも可能ではないかと、わたしは思います。
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