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窓をあけますよ

私が大好きな絵本。

「あさになったのでまどをあけますよ」 
 荒井良二/作・絵    2011年12月/発売    偕成社

とても好きな絵本で、数年前に「何がそんなに好きなんだ?」と自分の気持ちを書評よろしく書き出したことがあるんだけれど、久しぶりに読み返して「やっぱりいいよねぇ」となったので、改めて今の思いを、つらつらと書き綴ってみようと思う。

その前に、編集者の言葉をここに。

2011年は、わたしたち1人1人にとって忘れられない年になりました。日々を暮らしていくということについて、多くの方があらためてさまざまな思いをめぐらせたのではないでしょうか。この夏、荒井良二さんは、被災地の方々と一緒に取り組むワークショップのために、東北地方沿岸部の町を訪ねる旅を繰り返しました。そして、思いをこめて1冊の絵本を描き上げました。美しい絵本です。この絵本の美しさにこめられたポジティブな力がどうぞ読者のみなさんに届きますように。

まず、表紙の絵が美しい。
多彩で華やかさはあるけれど、うるさくなく、にぎやかでもなく、よくよく見ていると、どこか寂しさも漂っている気がする。でも確実に、‘喜び’のようなものを感じて、幸せな気持ちになる。特に中央の黄色い色は、光があたっているようで、どこか神々しい。

花が生き生きと咲いていて、ミツバチがやってくる。

自然の中に咲く花ではなく、どこかの家庭で育てられているのかな。
誰かが大事に育てている、その営みが浮かび上がってくるような、健気で凛とした咲きっぷり。どんな人の、どんな思いが込められて、ここに咲いているのか。

あさになったので まどをあけますよ

やまは やっぱり そこにいて
き は やっぱり ここにいる
だから ぼくは ここがすき

山、町、川、海、
色々な場所で朝をむかえ、そこに住む誰かが窓が開ける。


「あさになったので…」

誰にでも、どこにいても、必ず訪れる朝。
そう信じている朝。
でも、訪れなかった人もいる朝。

朝を迎えたことが、窓を開ける理由になっているところに、一日のはじまりの嬉しさを、すがすがしい絵と共に感じさせてもらえる。


「まどをあけますよ」

「あけますよ」って、いいよねぇ。「よ」がいい。
今まさに、絵本を読んでいる読者に向けて、そう声をかけてくれているように感じる。

「あけて」って依頼するわけでもなく
「あけます」って宣言するわけでもなく
「あけましょう」って強要するわけでもなく

どうするかは、こちらに託してくれているようで、窓を開けたときの喜びを示して、こちらに見せてくれている感じ。それぞれのタイミングや思いがあるから、開けてもいいし、開けなくてもいいし。

でも、開けた後に感じる、風の心地よさとか、空気のにおいとか、そういったものが、言葉にせずともそっと感情を動かしていく。そんな感情もひっくるめて、全てを認めてくれている感じ。

ただ「朝になったので窓をあけますよ」という事実を、そこに置いてくれている感じ。

「だから ぼくは ここがすき」
何か特別な理由があるわけではなく、あたりまえの日常で、変わらない毎日で、そこを愛おしむことで「ここがすき」の言葉につながる。
何も特別な理由はいらない。そのままでいい。ありのままでいい。

そして時折、投げかけられる。

きみのまちは はれてるかな?

窓を開ける選択は、こちらに託されているわけで、もしかしたら窓を開けていないかもしれないけれど、こんなふうに聞かれたら、ちょっと窓の外を見てみたいなって思うかもしれない。

自分の窓を開けるだけではなくて、こちらの窓の外にも、気持ちを向けてくれている、そんな喜びも、少なからず感じられる。

最後のページは
窓の外に広がる海と空の絵と共に「まどをあけますよ」の言葉。

全てに繋がっている海と空が、世界中に優しさを運んでいくようで
ただただ嬉しい。

あ~
やっぱりすきだなー


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