宿泊の必要性か、意欲を掻き立てるか
こんにちは!
WISE OWL HOSTELS KYOTOのトモです。
突然ですが、マーケティング業界の用語?としてこんな言葉があります。
ドリルを売るには穴を売れ
お客様はドリルが欲しくて買っているのではなく、ドリルが作ることのできる穴が欲しくてドリルを買っている。
お客様が求めているのは「物」そのものではなく、その物が作り出す「価値」なんだ、という考え方。
身近なもので考えると
では、例えばボールペン。僕は文房具が好きで、結構色んなボールペンとか試したくなりがちなんですが。
ボールペンを買うのも、そのボールペン自体が欲しいのではなく、まず先に何かを書く必要性があり、そのためにそれに合ったボールペンを買う。
例えば速記が必要なら速乾性がある、耐久力のあるボールペンがいいし、消せるものがよければフリクションを選ぶ。
小さなノートに書くなら0.38mm、大きなノートに書くなら1.0mmのものを選ぶ。
順番はあくまで、このボールペンが欲しい→買う→書く、ではなくて、書く必要がある→このボールペンが適正→買う。
当然と言えば当然ですよね。必要性がなくて物を買うことはないので。
なので、まずは必要性があって、その必要性にマッチした物を選んで買う。
だから僕達がやらないといけないのは、物・サービス自体の魅力というよりも、物・サービスが生み出す価値の魅力を届けないといけない。
必要性はないが、意欲を掻き立てるもの
ただ、時代が豊かになったからというべきか、必要性がないけど物を買う場合がある。
例えば、蒐集がその一つですよね。別に使う用途もない。必要性もない。ただ手元に置いておきたい。それを所持していることに価値が生まれる。
これでいくと、上の例であげたボールペンやドリルも当てはまります。
すでにたくさんのボールペンは持っている。とりわけ買う必要性はない。けども、どうしてもそのボールペン自体が欲しくて買ってしまう。
この場合、お客様の購買行動を決めているのは必要性ではなく、意欲。
単純に欲しい、という欲。
人が物を買う場合の購買心理には、この必要性と意欲の2つがあるのかなって思います。
僕達のホステルは必要性か意欲か
さて、前置きが長くなってしまいましたが、本題。
僕達はホステルを営んでいるので、ボールペンやドリルの話を延々としてるわけにはいきません。笑
では、僕達のような宿泊施設は、どうやって選ばれているのか。
宿泊施設といってもラグジュアリーなホテルもあれば、安価なホステルやゲストハウスもあります。
元々、宿泊施設というのは必要性だったと思います。
お客様が家とは別のどこかに寝泊まりする必要性が生まれ、その近くに宿があれば、そこに宿泊する。用事という目的が別にあって、宿泊施設に泊まることはその手段。
だから宿というのは、人が目的にしそうな場所の付近(例えば昔なら街道沿いとか)に建てられますよね。誰も来ないような辺鄙な場所にポツンと宿を建てても、そこを訪れる目的のある人がいなければ、宿に泊まる人もいないわけで。
これが宿泊施設が提供する価値の本質だと僕は思っています。
ただ、やはり時代が豊かになって、ホテルのようなラグジュアリークラスの宿泊施設が生まれてからは、その施設に泊まること自体が目的になった。
これは意欲ですよね。
そのホテルに泊まること自体が目的なので、そういったホテルは辺鄙な場所にポツンと建てても魅力さえあれば、お客様が泊まりたいと思う意欲さえ掻き立てられれば、泊まりに来てもらえる。むしろ人が訪れないような場所に滞在することができる「経験」という価値も提供している。
なので宿泊施設を必要性と意欲で分けるなら、ビジネスホテルなんかは典型的な必要性で選ばれ、ホテルはグレードによっては必要性で泊まる人もいるし、意欲で泊まる人もいる。
そこで、我々の「ホステル」は一体どうなんだ?
これが難しいな~ってよく思います。(笑)
サラリーマンの方が駅近で素泊まりできる安宿だからって選んでくれる場合(必要性)もあれば、おしゃれなホステルに泊まりたい(意欲)って泊まりに来てくれる人もいるんです。
それでもやっぱり肌感ですが、8割強は必要性で選ばれているのがホステルだと思います。
ホステルが意欲を掻き立てるには
必要性で選ばれるなら、それはそれでいいと思います。
駅チカ、素泊まり用にアメニティ充実させる、サービスが明快シンプル、など、利便性を追求して、接客や清潔のレベルを高い位置でキープできれば、自然と高評価がもらえ、選ばれやすい施設は作れると思います。
(言うは易く行うは難しですが、、)
でも、ホステルで働いている身からすると、実は「このホステルに泊まってみたくて来ました!」みたいな、意欲からの宿泊ゲストとか来てくれたら嬉しいなって思っています。
このホステルに泊まりに来るのが目的で、周辺の観光スポットはオマケ、みたいな。(笑)
宿泊施設自体が目的になる。これは(人的、財的)資本のあるホテルなら簡単だと思います。
宿泊施設を目的に来るお客様というのは、非日常体験をしたくて泊まりに来ます。なので、日常から乖離した空間、サービスを提供することで、お客様には満足してもらえる。
どれだけ非日常空間やサービスを提供できるかは、資本に比例するので、資本のあるホテルだからこそできることだなと、思っています。
では、ホステルが意欲を掻き立てる宿泊ゲストを呼ぶことはできないのか?
僕はそんなことはないと思います。
アプローチを変えることで、そういったことはできると思っています。
例えば今の時代であれば、インスタ映えするような部屋を作ったり、廊下にアートを展示してさながら美術館のような仕様にしてみたり、宿泊とイベントを組み合わせてみたり、方法はあると思います。
ホステルの強みは人なので、例えば面白いスタッフやゲストがいるから、その人に会いたくて泊まりに来た、なんかでもいいと思う。
理想は遊び感覚で泊まりに来てくれること
僕の理想ですが、それはお客様が遊ぶ感覚で宿泊をしに来てくれることです。
要はレジャーの一種みたいな。
友達と一緒にボーリングしに行ったり(古い)、カラオケしに行ったりしますよね。時にはオールしたり。
そうやって「今日カラオケでオールしよっか」なノリで「今日ホステル泊まりにいこっか」みたいな。(笑)
若い頃って、公園でたむろって朝まで語るとか、夜通し話して遊んでいたいから、誰か友人の家に泊まって、食べて、飲んで、喋って、眠りたくなったら寝る。とかあったと思います。
ホステルなら、眠りたくなったらベッドはあるわけで、オシャレなラウンジで話すこともできるし、キッチンを使って料理もできるし、気兼ねなくシャワーも浴びられる。
今日ホステル泊まりいこっか
そんなムーブメントがあってもいいんじゃないかって、僕は思うし、そうやって泊まりに来てくれたら嬉しいなって思う。
もしかしたらまだ若い世代には「泊まること」=「高くつく」って考えられているのかもしれない。
だから、夜どっかで寝るなら漫画喫茶、って選択肢になってしまうのかもしれないけど。
ホステルは高くない。むしろ漫画喫茶より安いかもしれない。それでいて、漫画はないけど、ベッド、シャワー、キッチン、ラウンジなんでもついてる。しかもオシャレ!
ゲストハウスやホステルが日本で広まったのもここ数年の話なので、まだまだホステル自体の認知が低いのは仕方ない。だからこそ、もっと広まってほしいと思う。そして泊まるだけじゃない使い方があるってことも。
用事があるからホステルに泊まるんじゃなくて、ホステル(で遊ぶ)に泊まるって用事が生まれてくれたらいいなって、思います。
なんかテーマからずれちゃったかな(笑)
最後までお読みいただいてありがとうございます。