「カラマーゾフの兄弟を下敷きにしたコミックバンドの話」のあらすじ書いてみると…村上春樹とか鬼才B・ウィルソンとかについて
コミックバンド→ビーチボーイズ?
村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」の中にある、「カラマーゾフの兄弟を下敷きにしたコミックバンドの話」という部分が長く印象に残っていました。これは鼠が主人公に書き送った小説の内容なのですが、
私は読みながら、コミックバンドというのは1960年代のバンド、ビーチボーイズをイメージしているんだろうなと思いました。春樹氏自身がファンであることをたびたび書いていますし。
さらに、ビーチボーイズと「カラマーゾフの兄弟」は互いにものすごく親和性が高いとも感じています。
この小説、ぜひとも読んでみたいのですが残念ながら架空の作品なので、自分なりにこの物語がもし現実にあったら、一体どんな部分が「下敷き」になるのか書いてみようと思いました。
カラマーゾフの兄弟
「カラマーゾフの兄弟」とは、私が説明するまでもなくドストエフスキーの名著で、ドミトリーとイワンとアリョーシャという3兄弟+父親の話だったりします。
父親はろくでなしですが、息子たちはわりとまともに成長しています。末っ子のアリョーシャは修道院に入っていたり。
ビーチボーイズ
続けてビーチボーイズについてですが1960年代にビートルズより少し先にデビューした米のサーフバンド?で、ブライアンとカールとデニスという3兄弟がメンバーの中核をなしていました。長男のブライアンが音楽的なところでは中心で、なんと父親がマネージャーでした。
当初はチャックベリーをさわやかにしたような3コードロックをやっていたのですが、ビートルズの「ラバーソウル」に衝撃を受けたブライアンは、一気に内省化した意欲作「ペットサウンズ」を発表し、次に「スマイル」というアルバムを企画します。
しかしレコーディングは難航して結局アルバムは完成せぬまま、ブライアンはメンタルをやられてしまいます。
脱アイドルに反対だったレコード会社(キャピトル)がつぶしたといううわさもあります(ソースはありません)。
弟たちがこの時の曲をかき集めて形にしたのが「スマイリースマイル」というアルバムです。
「鼠が書いた小説」のあらすじ?
で、鼠の書いた小説はどんな展開になるのか。カラマーゾフとビーチボーイズの要素を勝手にミックスしてみると――
◇◇
米国で人気の兄弟3人のコミックバンド。才能豊かな末っ子のアレクはコミカルでノリがよく聞きやすい曲を書き、バンドはTVにも出演を果たし、ヒットを連発しました。
ちなみに、長兄ドミーは直情的な性格で当時はベトナム反戦運動に熱心(後に爆弾テロの冤罪で投獄されます)。次男のヨハンはしっかりもので、弟たちを支えていました。
マネージャーであった父は腹黒く強欲で、もっとヒットを書けと息子をせかします。
ある日アレクは、英国のビートルズがこれまでとはがらりと作風を変えたアルバムを発表したことに驚きます。「ラバーソウル」「リヴォルバー」「サージェントペパー」と、いままでのアイドルのイメージを覆す力作が立て続けにリリースされたのでした。
アレクもこれに負けないものを作ろうと一念発起し、苦労して素晴らしい作品を作り上げます。
兄たちは、素直に弟の成功を喜びました。ところがこのアルバムは、評論家筋からの受けはよかったのですが、セールス的にはそれほどでもなく、父も不満でした。父はいままでのアイドル路線で十分だと考えているのでした。
しかしアレクはさらに素晴らしいアルバムを企画します。
これにより父親と決定的に対立することに。それでもアレクはかたくなに新しい道を突き進もうとします。
そこで父はレコード会社の役員と諮り、アルバム制作をつぶそうと様々な妨害を行います。(具体的な例は割愛)
そうこうするうちに、アレクは次第に精神を病み、そして父親が植え付けた誤解がもとで恋人が失踪するに至り(そういえば女性が登場していないので加えました)、ついにメンタルをおかしくしてしまい、レコーディングは中断します。
兄たちは黙ってみていたわけではなく、父と弟の対立につねに気をもんでいました。長兄ドミーは正面から父親に食って掛かりましたが、暖簾に腕押し。
最終的な行動に出たのは、次男のヨハンでした。頭脳派の彼は周到に策を練り、ついに父親を殺害したのでした。
そして、アレクが残した曲のかけらを再編集し、アルバムにまとめてリリースしました。
ところが…
完全犯罪と思われていたヨハンの父殺害は、バンドにヘルプで参加していたドラマー、ジャコフ(異母兄弟)に目撃されていたのでした。
蛇足
「カラマーゾフの兄弟」は死ぬまでにもう一度は読みたい本です。書きながらほとんど内容を忘れていることに気づきました。