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銀杏の食べ過ぎでけいれん。

イチョウ(学名:Ginkgo biloba L)は、中国原産のイチョウ科の落葉高木である。わが国では帰化植物として全国に分布し、街路、庭園、公園、神社仏閣などに植栽されている。雌雄異株で、4月に花を付け、10月に球形の種子をつける。種子の外種皮は多肉質で悪臭を放つ。内種皮はギンナン(銀杏)と呼ばれ、硬い殻を取り除くと、薄い皮で覆われたやや緑色がかった黄色の胚乳が現れる。胚乳は食用とされているが、多食によりギンナン中毒が生じる。
ギンナンの胚乳はビタミンB6(ピリドキシン)のメチルエーテルである4’-O-methylpyridoxineを含有している。MPNは熱安定性で、煮ても、焼いても不活化されない。
4’-O-methylpyridoxine[MPN]の構造式
ビタミンB6(ピリドキシン)はピリドキシンリン酸化酵素によってリン酸化されて活性型ビタミンB6であるピリドキサール-5’-リン酸(PLP:pyridoxal-5’-phosphate)に変換される。PLPはグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD:glutamate decarboxylase)の補酵素となり、グルタミン酸は脱炭酸されてGABAが産生される。ところが、MPNは共基質として競合的にピリドキシンリン酸化酵素を阻害し、自らはMPN-5’-リン酸となる。この結果、脳内ではPLPの産生およびGADの活性が低下して、抑制性神経伝達物質であるGABAの欠乏状態、および興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸過剰状態が生じる。
ギンナンの多食後1~12時間で全般性強直発作、全般性間代発作、全般性強直間代発作、意識障害などの中枢神経症状、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状、そのほかに呼吸困難などが生じる。ギンナン中毒は3歳未満の小児に圧倒的に多く、年齢が低いほど重症となる傾向がある。
問診すべき点
ギンナンを経口摂取した時間、推定摂取量について詳細に聴取することが重要である。
対処法
全身管理としては、中毒症状があれば少なくとも12時間は経過観察する。痙攣発作が持続していたら静注/筋注によって痙攣を止める。摂取後、数時間以内であれば活性炭を投与する。MPNは腸肝循環するので活性炭の繰り返し投与が有効な可能性がある。
植物の摂取後に痙攣発作が生じるものとしては、ドクゼリが有名である。ドクゼリに含まれている毒素のシクトキシンは中枢神経系のコリン作動性受容体刺激作用を発揮して全般性発作が生じる。
 

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