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年金制度の在り方:政府に賛成できないこと

「国民年金の穴埋め、厚生年金の積立金活用か」
年金については、将来、不安に思っている方も多いと思います。そうしたなか、公的年金の目減りを防ぐため、厚生労働省が国民年金の底上げを本格的に検討すると朝日新聞が報じました。厚生年金の積立金を活用する案が有力視されているということですが、詳しく教えてください。
年金は3階建てになっていて、
1階が国民年金。自営業者や主婦・学生も含めて、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が入る基礎年金です。
2階が会社員や公務員が加入する厚生年金で、報酬によって増減します。
3階に私的年金であるiDeCoや企業年金がきます。
「厚生年金の積立金を活用する案が有力視されている」と言われても、よく分からない
「1階の国民年金がピンチだから、2階の厚生年金から流用するね。
厚生年金を積み立ててきたサラリーマンの人はゴメンね!でもお金余っているからいいでしょ?どうせサラリーマンだって基礎年金に入っているんだし」と、こんな感じですね。
それは「ちょっと待ってー!」厚生年金の方は。
だからサラリーマンの方々は、本来だったら「何で自分達のお金が」って悲しむ場面ですが、SNSを見る限りまだその大きな反応が広がってなくて、もしかすると年金制度が複雑すぎて辞退を正確に把握できていない可能性があるという方もいるかもしれません。
ちなみに、年金の給付が目減りするという話でしたが、どれくらい減るのでしょうか。
現役男性の手取り収入に比べて、年金をどれくらい受け取れるかを表す「所得代替率」という指標があります。
7月に発表された見通しでは、いくつかのシミュレーションのうち実質経済成長率をマイナス0.1%と見込んだケースだと所得代替率が直近の61.2%から、2057年には50.4%まで低下することが分かりました。
なぜそんなに目減りするのですか?
「マクロ経済スライド」といって、年金の給付と負担をバランスさせるための仕組みが関係しています。
高齢化で年金支給額がどんどん増えるからといって、現役世代の保険料負担を青天井で増やしていくと現役世代が支えきれずに
パンクしてしまいます。そこで2004年に導入したのがマクロ経済スライドです。保険料率の上限、負担の天井を決めて、それ以上は増やさないようにする。物価や賃金の伸びに比べて、年金額を抑制する仕組みです。先ほどのシミュレーションに当てはめると、マクロ経済スライドによる給付額の抑制が、厚生年金部分では2年後の2026年度に終わるのに対して基礎年金部分は2057年度まで長期化します。結果として貰える年金額が下がり、所得代替率も下がるという話です。ただし、そもそも論として年金が「目減り」することは問題なのか?という視点も必要だと思います。
マクロ経済スライドを導入した狙いは、年金給付額にキャップを設け、現役世代の負担を抑えることでした。だとしたら、給付が目減りするのはある意味想定通りであって、今さらジタバタする話ではありません。減らしたいのか、減らしたくないのか、どっちなのかということです。年金加入者の側としても「年金だけで老後の家計のすべてを賄うのは難しい」という前提に立って、貯蓄や資産形成、また定年後の再雇用による安定収入の確保などを考えていく必要があるかなと思います。
厚生年金からの流用はやはり問題だと思いますか?
大問題ですね。社会保険は読んで字のごとく「保険」です。保険というのは、基本的には将来自分や家族に起こり得るリスクに備えて、保険料を支払うものです。年金であれば長生きリスクに備えるものですが、日本の年金は「賦課方式」といって現役世代から高齢世代に「仕送り」する支え合いの仕組みなので民間の保険とはもちろん違います。だからと言って、サラリーマン年金で国民年金の穴埋めをするのは、さすがに目的外利用かなと思いますし、困っている人への再分配が必要なのであれば、社会保険料ではなく税金で手当てするのが本筋かなと思います。
どうしたらいいですかね?
1つは「2階」である厚生年金の加入者を増やすこと。
仮に週10時間以上働く労働者を厚生年金に入れた場合、加入者は約860万人増え、所得代替率を5.9%改善する効果があります。もう1つは「とにかく何が何でも、年金の給付を維持しよう。
そのためには取りやすいところから取ればいいんだ」みたいな考え方から脱却すべきだと思います。税金に比べて社会保険料の方が引き上げやすいからと「サイレント増税」を繰り返した結果、現役世代の負担は限界に達している。なので、流用する余裕があるなら、厚生年金の保険料を下げてくれと思っているサラリーマンの方も多いと思います。もし本気でやるのであれば、行政だけでシレッと進めるのではなく、一大政治テーマとして、選挙でしっかりと世論に信を問うて欲しい