在宅酸素療法の健康保険適応
質問:在宅酸素療法や呼吸補助療法により在宅の誤嚥性肺炎患者や末期がん患者の苦痛を和らげることは可能でしょうか。
また,在宅医療が推進されている中で、現在の保険適用では限られた状況にしか使えません。
どうしたらよいか?
在宅での誤嚥性肺炎やがん終末期患者や急性期が安定してない呼吸困難に
対する在宅酸素療法と呼吸補助療法は,症状緩和という点では有効な手段であると考えます。
誤嚥性肺炎患者の多くは急性Ⅰ型呼吸不全を呈します。
現行の診療報酬における在宅酸素療法の適用は
(1) 高度慢性呼吸不全,(2)肺高血圧症,(3)慢性心不全,(4)チアノーゼ型先天性心疾患,
であり,急性呼吸不全は含まれません。
そのため,在宅で酸素投与を行う場合には自費診療による酸素療法になってしまいます。
誤嚥性肺炎は高齢者や脳神経疾患患者に多く,心機能をはじめ多臓器の
予備力が低下している患者が多いことも事実です。
また,NPPV(noninvasive positive pressure ventilation)などの呼吸補助療法も在宅酸素療法と同様に,在宅での急性呼吸不全に対しては適用がありません。国は高齢者の在宅医療を推進していますが,誤嚥性肺炎、急性増悪中など急性呼吸不全の場合には,入院の上,抗菌薬の点滴や酸素投与,呼吸補助療法などを行うように指導されます。
しかし,実際には高齢者(特に認知症を発症している場合)をすぐに受け入れてくれる病院を探すことは困難です。
そうなると息が苦しくても在宅では酸素も投与できず呼吸補助療法もできない,ましてや良性疾患ではオピオイド使用にも制限があるため苦しいままで過ごさせることになり,それこそ在宅医療推進の妨げになると考えます。
高齢者の在宅医療を推進していくためには,今後,急性呼吸不全に対する在宅での酸素使用についても適用の拡大を検討していく必要があると思います。以上,在宅医療を今後さらに推進するために高齢者やがん終末期患者に対する在宅酸素療法や呼吸補助療法の適用緩和を検討していく必要があることはご指摘の通りと思います。ぜひ早々の検討を願いたいところです。
在宅酸素療法の社会保険適用基準
在宅酸素療法は健康保険が適用されており、次の条件を満たした場合開始されます。
高度慢性呼吸不全例
動脈血酸素分圧55mmHg 以下の者及び動脈血酸素分圧60mmHg 以下で睡眠時又は運動負荷時に著しい低酸素血症を来す者であって、医師が在宅酸素療法を必要であると認めたもの。肺高血圧症
慢性心不全
医師の診断によりNYHA3 度以上であると認められ、睡眠時のチェーン・ストークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数(1 時間当たりの無呼吸数及び低呼吸数をいう)が20 以上であることが、睡眠ポリグラフィー上確認されている症例。チアノーゼ型先天性心疾患