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日本では医薬品の有効性が、値段に直接反映されることはない。効かない薬でもほぼ同じ値段。
近年は医療費の増大。
その要因に、薬剤費があげられることがある。
創薬技術の進歩により、際立つ有効性を持つ高額医薬品が登場しており、
これが医療費増大に拍車をかけている。
欧米では、新薬の価格設定に成功報酬を導入するケースが増えている。
投与した薬が効いたときにだけ、薬代が支払われる仕組みだ。
国内の医薬品メーカーの中にも、ヨーロッパでの販売で、この方式を導入する動きがある。もし日本でも成功報酬が導入されれば、高額医薬品の薬剤費が抑えられるのではないか、との声も一部にある。
各国の薬剤価格
まず、欧米諸国等の薬剤価格について、アメリカ連邦議会下院の歳入委員会がまとめた比較すると、同委員会指定の79医薬品中、各国で収載されたものがまとめられている。
平均や最低・最高価格の欄をみると、アメリカが突出していることがわかる。ドイツをはじめヨーロッパ諸国にも高額の国が多い。
これらに比べて、日本は薬剤価格が低額となっている。
欧米で、成功報酬型の価格設定の導入が進む背景には、医薬品が高額化していることがあるものとみられる。 このデータ比較には、アメリカは他国に比べて薬剤価格が高い、ということを示す狙いがあるものとみられる。
成功報酬型導入の動き
日本では、医薬品の値段は、すでに類似品がある場合は、その類似品を比較参照する形で設定される。類似品がない場合は、創薬に要した原価や費用を積み上げることで算出される。
どちらの場合も、医薬品にどれほどの効き目があるか、すなわち医薬品の有効性が、値段に直接反映されることはない。
これに対して、欧米で行われている成功報酬型の価格設定では、
薬の有効性に応じて代金が変わってくる。
そこには、いくつかの特徴がみられる。簡単にみていこう。
欧米では医薬品メーカーと保険者等の交渉の結果、成功報酬型が導入される
アメリカでは、医薬品を保険適用とするかどうかは、医薬品メーカーと制度運営者(公的制度や民間保険の保険者など)の交渉で決まる。
費用対効果の評価等の結果、価格が高いために保険適用が推奨されない場合、交渉によっては、成功報酬型の価格設定を行って販売する道がある。
同様に、ヨーロッパでも、医薬品メーカーが、公的医療保険制度等の保険者や医療制度の運営者との契約を交わしたうえで、成功報酬型の価格設定が行われることがある。
これに対して、日本では、医療用医薬品の薬価は公定価格として全国一律に定められており。導入の議論も、ほとんど行われていない。
アメリカでは法制度が見直され、成功報酬型拡充の環境が整いつつある。
アメリカでは、成功報酬型の価格設定が拡大しつつある。
成功報酬型のさらなる拡充のために、法制度の見直しを要望する声が、医薬品メーカーなどからあがっている。具体的には、メディケイドにおけるベストプライス規制、適用外使用の販売促進
ルール、反キックバック法の見直しである。
メディケイドのベストプライス規制
ベストプライス規制は、メディケイドの加入者のための規制だ。
所定の割合以上の人に適用される最低価格がある場合には、すべての人がその最低価格で薬剤を使用できるという内容。
医薬品メーカーからみると、価格の引き下げ、利益の減少につながる。
この規制により、医薬品メーカーとメディケイド間で、成功報酬型の価格設定が導入しにくいとの声がある。実際には、薬剤が効かずに価格が下がる患者の割合は、この所定割合未満であることが多く、規制は影響していないとの見方が多い。
適用外使用の販売促進ルール
従来より、連邦の規則では、安全性に関する不適切な証拠があったり、有効性についての証拠が不足していたりする場合には、薬剤が承認されない。
かつては、こうした薬剤を適用外使用する場合について、医薬品メーカーの販売促進は限られていた。しかし、法律やガイドラインが整備され、適用外使用についても、販売促進の柔軟性が高まってきた。これにより、当局が示す処方情報には含まれないような使用について、成功報酬型の内容を示すことが可能となった。