50年も生きられなかった明治時代の人と比べたら、いただいた時間は2倍もあります。どうせ長生きするなら、幸せの時間も2倍にするぞの意気込みでのぞもうではありませんか。(1)
(2025/2/21)
『人生100年時代を豊かに生きる』
樋口恵子 坂東眞理子 ビジネス社 2023/12/15
<はじめに>
・日本の高齢化率は29.1%、国民の約3人に1人が65歳以上です。
オリンピックの種目に「高齢化」があるとしたら、これで堂々金メダル獲得。私たちは全人類の先陣をきって人生100年時代に乗り出しました。
・50年も生きられなかった明治時代の人と比べたら、いただいた時間は2倍もあります。どうせ長生きするなら、幸せの時間も2倍にするぞの意気込みでのぞもうではありませんか。
<どっこい人生対談① 老いは個性的 >
・100歳まで生きるとしたら、あなたはあと何年?
<年を取るのはやっかいだけど>
・年を取るというのはやっかいなものです。今日は杖を置いてきちゃったんですけれど、老眼鏡を忘れてえらいめにあったこともございます。
・たとえば、私は今91歳ですが、生き残っている同級生や同世代の友人を見ますと、本当にさまざまです。
<ピンピンとコロリの間には、ヨタヘロ期がある>
・立ち上がるたびに、いちいちヨッコラショ。買い物に行くのも、もうシンドイ。痛いところだらけで、何をするのもヨタヨタヘロヘロのヨタヘロ期。この期間をどう過ごすかで、老いの幸福度に差が出るのです。
<人生の約10分の1はヨタヘロ期>
・ヨタヘロ期がいつやってくるかは、人それぞれ。一つ目安になるのは、「平均寿命」と「健康寿命」の間です。健康寿命は、厚労省がいうところの自立した生活を送れる期間です。2023年に発表された「平均寿命」は、女性87.09歳、男性81.05歳。「健康寿命」は、女性75.38歳、男性は72.68歳(2019年発表)。その差は、女性で約12年、男性で約8年もありますから長いです。人生100年とすれば、約10分の1をヨタヘロして過ごすことになります。
<えー、89歳でもがんになるの ⁉>
・89歳のある日、左乳房にしこりのようなものを発見しました。
・私の歯といえば、唯一自慢の歯でございます。「8020(ハチマルニイマル)」、つまり「80歳になっても20本は自分の歯を持とう」という運動がありますが、私、それは見事にクリア。
・つくづく思いましたのは、病気もまた個性的だということです。病名は同じでも、手当の処方はこちらの年齢によってみな違う。年を取るほど何が起こるかわかりません。ですから、主治医といいましょうか、しっかりと相談にのってくれるお医者さんがいると心強いです。
・そして、心配なことがあったら、とにかく早めに診てもらうのが大事。
<病気を詠んでみました>
・「90歳 しなびた乳房も がん宿る」
治療の負担を少なくするためにも早期発見が大事です。
<何歳になっても「死にたくない!」>
・不甲斐ないことですが、がんと診断されたとき、やはりショックでした。目にはうっすら涙さえ浮かびました。当時の私は89歳。
<全身からあふれ出る感謝の心>
・ところが、人間には二面性があります。「死にたくないー!」とみっともなくゴネるのが一方のヒグチさんなら、もう一方のヒグチさんもいます。
・自分に命を授けてくれたのは両親です。しかし、それだけではない。形はどうあれ、私たちは家族や友人など、いろいろな人の命をいただいて今生きています。
・高齢化するということは非常にむずかしく、毎日あえぎあえぎでございます。
<どっこい人生対談② 70代はゴールデンエイジ>
・70代は気力もやる気も十分。余生なんてまだまだ早い!私は今でも自転車をこいで、スニーカー通勤しています。
<老いのトップランナーに続け!>
・91歳の樋口さんのお話でした。ご自身は老いのトップランナーを自認されておられますが、変わらずお元気です。
・そして、樋口さんのなさったことでいちばん社会を変えたのは、やはり介護保険制度の後押しではないでしょうか。
<介護保険は時代とともに進化させていかなくちゃ!>
・介護保険制度は、時代とともに育てていくもの。まだまだ進化が必要です。
<70代こそ働き盛り>
・さて、私も70代になって、自分より年上の人が少なくなりました。
・そんなとき私を勇気づけてくれるのが、やはり樋口さんの存在です。「70代なんてまだまだ若い! 振り返ってみれば、私の70代はいちばんの働き盛りでした」
<パパチャリで、孫の送り迎え>
・坂東:自転車は私の足です。若い頃は娘を乗せて保育園の送迎や買い物で走り回っていました。
<まだまだ男女格差が大きい日本>
・イランは2023年の「ジェンダーギャップ指数」で見ますと、146ヵ国中143位の国です。
・では日本は? といえば、146ヵ国中なんと125位。残念ながら、イランと五十歩百歩です。
ジェンダーギャップ指数は、政治、経済、教育、健康の4つの分野で評価するものですが、日本の場合、健康と教育の分野ではそれほど男女差はないんです。
・ところが、政治となると、衆議院の女性議員比率は1割しかなく、過去に女性の首相は1人もいません。経済面でも賃金格差や女性管理職が極端に少ないなど、ギャップは深刻です。
・また、イラン滞在中は、女性のヒジャブのことも話題にのぼりました。
・イランに比べたら、日本の女性はたいへん恵まれた自由な環境にあります。それを十分活用できているだろうかと考え込んでしまいました。
<女性目線に欠ける自治体の施策>
・本当、日本の男女平等は遅れています。
・日本のジェンダー問題の夜明けは遠い! 私もまだまだボケてなんかいられません。
<次の世代の女性たちに羅針盤を!>
・私は樋口さんよりも半世代若いですが、同じ大学(東京大学)の卒業生です。
・まだ男女雇用機会均等法など影も形もなかった時代ですから、就職には苦労しました。高度経済成長まっただ中で、男子学生は民間企業から引っ張りだこ。
・意欲ある優秀な女性たちが、仕事に就けない。就職したとしても、子どもを産んだら辞めざるを得ない。同世代のたくさんの女性たちが、志なかばで社会の片隅に追いやられてしまいました。その死屍累々のなか、私はなんとか生き延びたわけです。
・女性にとって不遇の時代になんとか仕事を続けてこられた私もまた同じ思いです。私世代の女性の無念を、次の世代の女性たちに味わってほしくありません。
<時代は確実に変わっている>
・ただ、うちの昭和女子大学の学生たちの間でも「子どもを産んでも仕事を続けたい」「定年まで働きます」という考え方が当たり前になりつつあります。
・政府も上場企業に対して、2030年までに女性役員の比率を30%まで上げなさいという目標を提示しています。
<上のポストに就くメリット>
・昇進はデメリットより、メリットのほうが大きいんですよ。
<みんなで集える「じじばば食堂」をつくりたい>
・そこで思いついたアイディアが、「子ども食堂」ならぬ「じじばば食堂」です。
<積極的に出かけましょう>
・牛乳1本でも毎日歩いて商店街やスーパーに行くのがいいですよ。
・要支援・要介護の人なら、デイサービスに行くのも大事な「今日、用」「今日、行く」です。
<「老いの呪い」にかからないで>
・バブルの頃、「女性とクリスマスケーキは同じ」という言葉が流行ったのを覚えていらっしゃいますか?ケーキも女性も25日、25歳を過ぎて売れ残ると、価値がなくなるという意味です。嫁き遅れ、嫁かず後家、オールドミスなど、まあ、さんざんな言われようで、ひどい話です。1980年代のことなのに、「女は嫁にいくのが当たり前」という封建時代のような固定観念が残っていたんですね。
こういう偏見や無意識の思い込みのことを「アンコンシャス・バイアス」といいます。
・アンコンシャス・バイアスのいちばんの問題点は、周りから押しつけられるというより、いつの間にか本人が「そうなんだ」と信じ込んでしまうこと。
<転んでも立ち上がる>
・私たち一人ひとりがこれからどう生きるか、その積み重ねが時代を変えるパワーになります!
<語り合える友をつくろう>
樋口:私が今あるのも、多くの友人や仲間、これまで出会ってきた人たちのおかげです。
樋口:人生の価値とは何だったかと振り返ると、やはり女友だちの存在が大きかったと思います。
坂東:高齢者の単身世帯や夫婦2人暮らしが増えています。なかでも女性は平均寿命が男性より約6年長く、夫が年長のカップルが多いので、おひとりさまの期間が長くなる可能性が高いです。
<幸せを運んでくれる「食(しょく)」・「触(しょく)」・「職(しょく)」>
樋口:週に一度、宅配弁当をとっています。
・ですからね、やっぱり誰かと一緒に食べるって大切なんですよ。坂東さんがお話してくださった「じじばば食堂」は切実に必要です。
私のヨタヘロ期。スタスタとはいきませんが、歩けと言われれば歩けます。杖をつけばもっと歩けます。
樋口:私はヨタヘロ期を明るく楽しく過ごすコツは、「食(しょく)」・「触(しょく)」・「職(しょく)の3つの「しょく」だと提案しています。
<「じじばば食堂」をつくりたい!>
・年を取ると、そんなに遠くまで歩けない。少子化で地域の小学校の教室があまっているでしょ。「じじばば食堂」」は、そんな場所を利用できるといいですね。
<「微助っ人(ビスケット)」のすすめ>
・「男の場合、正面切ってボランティア・グループの仲間入りするのは、腰が引けるもの。でも、男だって時間をもてあましている人がいるし、善意もある。ささやかでも何かしたいんですよ」
・ところが自分自身がヨタヘロ期に突入して、思い出しました。今こそ、微助っ人だ!と。
・足腰は衰えても、手は動く人がいます。おしゃべりする口はもっと動く人がいます。みなそれぞれ何かできるのです。小さなことでいい。できることをしましょうよ。それが私たちの生きる力になるのです。
・「老いたれど我もなりたし微助っ人」
<何歳になっても働ける>
樋口:私、坂東さんのご著書を拝読して共感するところがいっぱいあるのですが、なかでも坂東さんが終始一貫提案し続けているテーマに常々感心しております。そのテーマとは「働け!」であります。
坂東:あらためて「働け!」と言われるまでもなく、女性はいつも働いてきました。家事の仕事、子育ての仕事、介護の仕事。ただ、昔の女性は、こうした重要な仕事をしているにもかかわらず、自分の名前で報酬を得ることができませんでした。そうした歴史が、私たち女性が社会と切り離されてきた要因だと思います。
・今は、女性もようやく社会のなかで仕事をして報酬を得るのが当たり前の世の中になりつつあり、これはうれしいことです。ただ、同じ女性でも高齢になると、再び社会から追いやられてしまう。これが現代の問題です。
・チャップリンは自身の映画『ライムライト』のなかで、人生に必要なことは「愛と希望とサムマネー」と言いました。
・女性がそうした道をたどってきたように、これからは、高齢者が働くことが当たり前の社会になるのが理想です。
・「今日は残りの人生でいちばん若い」
<一人ひとりの生き方が世の中を変える!>
「樋口さん、そりゃ日本はひどいと思うわよ。だけど、50年単位で考えましょうよ。今すぐは無理でも、未来は必ず変わるから」と。
・老いの問題も同じじゃないでしょうか。日本は、世界に先駆けて超長寿社会という未知の世界に足を踏み入れたばかり。私たち全員が老いの初心者です。
・女性の問題では「世の中、なかなか変わらないな」と無力感をおぼえたこともありました。でも、ふと気づくと、女性を取り巻く環境は、この5年、10年で確かに変化しているんですね。
・秋山先生は「50年もたてば、女性の生き方も変わる」とおっしゃっていたけれど、50年後の高齢者の生き方ってどうなっているでしょう。その頃この世にいられないのが残念ね(笑)。
<日本女性の地位向上は、まだまだこれから>
・年齢は坂東さんが77歳、私がただいま91歳。
・日本の女性の地位の国際的立ち遅れはすべて、「女性の就労改革」の立ち遅れが原因しています。その理由などを、私も当時の委員も自分の経験や各種統計を踏まえながら心血込めて書き上げました。
まとめ役(行政側)はもちろん坂東眞理子さん。今、世界における日本女性の地位は125位の低さとか。
<昨日できたことが、今日できない>
・ペットボトルが開けられない、コンビニの店員さんの言葉が聞き取りにくい。老いのサインは、ある日突然やってきます。
<老いは思いがけないことの連続>
・このように、昨日までできていたことが、ある日突然できなくなる日がやってくる。それがヨタヘロのはじまりです。
・今、ヨタヘロ歩くこの9分の道のりは、はるか遠い旅路のように思えます。91歳の身には、たった4分の差が、とてつもなく大きいのです。
<「決して転びません」と心に誓う>
・私の勝手な決め方では、ヨタヘロ期とは平均寿命から健康寿命を引いた年月のことをいいます。健康未満・要介護以前といったらいいでしょうか。ヘルパーさんに来てもらう必要はないけれど、日常生活はちょっとたいへん。そんな期間のことで、計算すると、男性が約8年間、女性が約12年間になります。
・介護保険の利用理由を見ると納得です。男性の場合、要介護になる人の過半数が、脳出血や心臓病などの後遺症。女性は、転倒、骨折、骨粗鬆症(こっそしょうしょう)です。
つまり、男性のほうが死につながる病にかかりやすく、ヨタヘロする前にあの世へいってしまわれる方が多いということです。
一方、女性は、骨折くらいじゃ死なないものの、寝たきりや、不自由な時期が長引いてしまいます。健康寿命を少しでも先延ばしするためには、私たち女性は、まずは骨折しないように気をつけなきゃなりません。
骨折防止のための必要かつ最大の策は、とにかく転ばないことです。と、えらそうに言っておりますが、実は私、よく転びます。
・50代~60代といえば、まだ若い。でも、その頃から油断は禁物です。
・ところが、さらに年を重ねると、やってくるのが理由なき転倒です。「90歳くらいになると、ただ立っているだけで、ふわーっと転ぶことがあるんですよ」
・しかしながら、ついに私もそれがわかる年頃になってしまいました。あるとき、玄関に立っていたら、本当にふわーっと倒れたのです。
・「けつまづいて倒れるのが70代。立っているだけで倒れるのが90代」
<「手すり」があるとないとじゃ、大違い>
・そんなヨタヘロ期強い味方、それは手すりです。
・そして現在、この家の手すりはさらに増えています。
いつどこで転ぶかわからぬ91歳。最初に手すりをつけた場所以外でも、支えが必要になったのです。
・要所、要所の手すりのおかげで、家のなかはさらに安全。転びにくくなりました。
・認定を受けるときは、自治体の職員や委託されたケアマネジャーが自宅にやってきて、どの程度の支援や介護が必要か、聞き取り調査が行われます。
・ちなみに、お風呂は手すりがあっても危険がいっぱい。湯船をまたぐのがつらくなったら、一人のときに入浴するのは避けましょう。
<出かけましょう、歩きましょう!>
・通勤途中、ジョギングや犬の散歩をしている同世代の方をよく見かけます。昔と違って、元気な高齢者が増えました。
・たとえばコロナ禍では、「巣ごもりフレイル」という言葉がよく聞かれました。フレイルとは、加齢による心身の活力の衰えのこと。感染予防で家に閉じこもる日常が続くうちに、気がついたら「歩くスピードが遅くなった」「よく転ぶようになった」、ひどい場合は「起き上がれなくなった」という人が増えたそうです。
こうした退行性の症状は、廃用症候群と呼ばれ、健康な人でも起こるもの。筋肉は、使わないとあっという間に衰えてしまうんですね。高齢の場合、2週間程度巣ごもりしただけで、下半身の筋肉は2割も委縮してしまうそうです。
・でも、少なくとも80歳になるまでは、自分でロコモーション機能(立つ・歩く・走るなど、生活に必要な身体を移動させる力)を鍛えていきたいと思っています。貯金はできませんが、せめて「貯筋」しようというわけです。「貯筋」のコツは、「今日、用」「今日、行く」です。みなさんも、なるべく積極的に出かける用事をつくって、あちこち出かけていきましょう。
<大切なのは「食」「触」「職」>
<食――食べる>
<母と娘の食卓は、ほのぼの時々バトル>
・そんなわけで、最近ではシルバー人材センターの方に週3日来ていただいて料理の作り置きをお願いするほか、講演でもお話ししたように宅配弁当も利用しています。
<料理だって定年があっていい>
・台所に立つのが億劫になったのは、80歳を過ぎた頃からでした。
・それに、夫は定年退職して家でのんびりしているのに、妻だけ80歳になっても早起きして料理なんて不公平。妻にも料理定年があったっていいと思うのです。
<健康の王道は“バランス食べ”にあり>
・私たち世代にとっては、よくいわれる「ま・ご・は・や・さ・し・い」も参考になるでしょう。「ま=豆」「ご=ゴマ」「は=ワカメ(海藻)」「や=野菜」「さ=魚」「し=椎茸(きのこ類)」「い=いも類」。
ただ、これら一つひとつは、これさえ食べれば安心という魔法の食材ではありません。大切なのは、あくまでもバランスよく食べることです。
<「食べる」を通じて世代間交流を>
・「じじばば食堂」は、高齢者の食べる楽しさと健康を支える、人生100年時代の重要拠点となりそうです。
<触――コミュニケーション>
<「ファミレス時代」がやってきた!>
・昭和ひとケタ世代は、夫婦の間に平均5人の子どもがいたものです。でも、今の日本は、世界有数の少子社会。2022年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は、過去最低の1.26だそうです。
・おまけに、男女共同参画局によれば、2020年、50歳の女性の約6人に1人、男性の約4人に1人は結婚経験がありませんでした。
家族のサイズは、どんどん小さくなっていきます。
・けれどもこれからは、夫婦2人暮らしや連れ合いをなくした人、最初から未婚・非婚のおひとりさま世帯が、多数派になるということです。私はこれをファミリーレス、略して「ファミレス社会」と呼んでいます。
・実際、わが家がいい例です。私は3人きょうだいの末っ子に生まれましたが、姉も兄も早世し、実質的には1人っ子。甥も姪もいません。連れ合いを早くに亡くし、やはり1人っ子の娘は、子どももいないシングルです。私があの世へいったら、娘は親レス、姪レス、甥レストラン、従兄弟レスで、親類縁者がほぼいなくなるのです。
日本は介護を血縁に頼ってきた社会ですから、これからの高齢者は、いったい誰を頼りにしたらいいのでしょう。これは時代を揺るがす大きな問題です。
<今から加入するなら、だんぜん人間関係の保険がおすすめ!>
・来たる2025年には、国民4人に1人が75歳以上です。
・高齢医療専門のお医者さんも、「人付き合いをまったくしない人は、運動をまったくしない人よりも老いが進む」とおっしゃっています。
・とにかく、出かける、出会う、何かできる。私はこれを「3D主義」と勝手に呼んでおりますが、こういう心持ちが大事です」
・いざというときのお金は、もちろん大事。でも、お金持ちでなくても“人持ち”ならば、たいていのことは乗り越えられます。
・「遠くの親戚より、近くの他人」とは、昔の人は本当にいいこと言った!
<女同士の友情は、ある? ない?>
・私の知る限りでも、わが女性たちのほうが男性より友だちの数は多い気がする。
・そんな女学校を舞台に女同士の友情を描いたのが、作家・吉屋信子の『花物語』でした。
<コミュニケーション力を上げる補聴器>
・そこで90歳の年にはじめて補聴器を買いました。ところが、使いこなすまでがひと苦労。
・補聴器の値段は本当にピンキリで、片耳で数万円から100万円するものまであります。
<おひとりさまの覚悟>
・「高齢社会白書」(2022年版)によれば、65歳以上の一人暮らしの割合は、男性が7人に1人、女性は5人に1人。しかも年々増加傾向にあるそうです。老いて大シングル時代です。
一人暮らしのノウハウを身につけ、烈々たる自立の志を保ち続ける。
・たとえば急に手術が必要になったとき、病院からは身元保証人が求められますが、引き受けてくれそうな心当たりの人はいるでしょうか。
・身元保証人は、高齢者施設へ入居するときにも必要になります。
・もう顔も忘れたような甥っ子や姪っ子で、存在そのものが貴重です。多めのおこづかいでも渡して「何かあったらよろしくね」とアピールしておくことも大事。その際は、なるべく若い人を選ぶこと。どっちが先に逝くかわかりませんけれどね。
最近では、身よりのない高齢者のための身元保証を引き受ける民間サービスも増えています。
・ちなみに、2000年になって介護保険制度がスタートしたとき、同時に「成年後見制度」というものもはじまっています。認知症などで判断能力が低下した人の財産を守る仕組みが必要になったからです。
こちらは裁判所へ申し立てて後見人を選任してもらう公的なもの。
<かかりつけ医はいますか?>
・おひとりさまが、もう一つ準備をしておきたいこと。それはかかりつけ医を決めておくことです。
・自分が死んだあとのことはもう知らん、と思うかもしれません。でも、警察署の管轄となれば、監察医務院へ送られ行政解剖から司法解剖というものものしい展開となってしまいます。葬儀までによけいな時間がかかって遺族の悲しみも深めます。
そんなわけで、かかりつけ医の存在は大切なのです。
<開けっぴろげがちょうどいい>
・人生のはじまりがそうだったように、人生の終わりにも一人で生きられない日々が待っています。これまでかくしゃくとして生きてきた身、無力を認めるのはむずかしいかもしれません。
・もちろん、介護を子どもたちだけにさせようということではありません。介護保険や他人の力を借りるのが、今の介護の前提です。ただ、介護保険のサービスを受けるにしても申請や何やらこまごまと手を借りることもあるでしょう。猫の手じゃ役に立ちませんから、やっぱり家族は大切なのです。
<第二の義務教育はぜひ必要>
・まだ若いつもりでいるかもしれないけれど、老いの道は待ったなし。
・ですから、とにかく知るのが大事。知って制度をうまく使いこなすのが、後半の人生を心地よく生きる決め手となるのです。
新入生や新入社員に向けて、オリエンテーションやガイダンスという名の説明会や勉強会があるように、高齢者にも学びの場が必要です。私は、これを人生100年時代における第二の義務教育とすべきとさえ思います。
・財源不足を理由に社会保障費を削ろうなどというけしからん動きもあります。
<同世代から口コミ情報が役に立つ>
・その意味でも、同世代の友人や知り合いは1人でも多いほうが心強いしうれしいのです。
<いっしょに歌おう!>
・歌うことが好きな人は、カラオケ教室に通うとかコーラスに参加するのもいいと思います。
<職――働く>
<「終活」なんて、まだ早い>
・でも、ちょっと待って。この人生100年時代にあって、60代や70代で余生だなんて早過ぎやしませんか。
・なにしろ女性の平均寿命は87.09歳(男性は81.05歳)。会社で働いていた人は65歳でリタイアしたとしても、残り22年もあるのです。
・職人さんの世界では、「10年やれば一人前」とよくいわれます。ということは、今から何かはじめても、その道で食べていける可能性だってあるということです。
・表舞台からは下りたとしても、まだまだ社会とかかわっていけるし、人の役にも立てるのが私たちの年代です。
<おばさんになるかもしれない症候群>
・セカンドステージに立ちはだかる最初の敵は、アンコンシャス・バイアスです。何かはじめたくても、「もう年だから」「どうせ私は終わった人」と尻込みしてしまう。
ですが、今は立ちはだかる年齢の壁は分厚く高い……と見えても、過ぎてしまえばそれも幻。
・転職したばかりの頃は、カルチャーショックの連続でした。なにしろ働き方もものごとの決め方も、すべてがこれまでのやり方とは違うのです。不思議の国のアリスになって、逆さま世界に落っこちた気がしました。
管理職だった頃と違って、部下が細かい作業を補佐してくれるわけではありません。職場ではパソコンが普及していて、これに大苦戦。こっそりパソコンの個人レッスンに通い、おそるおそるポツンポツンのキーを打つ日々でした。
・もう若くないと思った瞬間、未来の可能性にカギがかかってしまいます。終わった人、無用な人などと自分を卑下しないでください。人は年齢を重ねれば重ねるほど、失敗や成功を含めていろいろな経験をします。
<今こそ、私たちの出番です!>
・介護の需要は増えているのに、介護に従事する人は少ないのが現状です。
・健康で意欲がある人なら、まず自分がファーストペンギンになりましょう。
ファーストペンギンとは、天敵だらけの海のなかへ最初に飛び込んでエサを捕る、勇気あるペンギンのことです。この一羽目のペンギンがいるから、仲間たちも安心して次々と飛び込んでいけるのです。
最初は小さなことでいいんです。あなたがチャレンジして成功すれば、誰かが真似をして自分もやってみようと思います。世の中はこうして変わっていくんですね。
・あなたの一歩が、次の一歩につながります。その一歩が「年寄りにはどうせムリ」という年齢の壁も壊します。こうしたプラスの連鎖をどんどん起こしましょう。