母のエプロン
娘が調理実習で私のエプロンを貸してほしいということで、借りていった。
しかし
私もその調理実習にボランティアで参加するためエプロンが必要ということで母に借りようと娘と実家に行ってきた。
するとすると
でるわでるわプラスチック衣装ケース一箱分のエプロン。
冠婚葬祭用からピンクのふりふり、割烹着、シンプルなものまで20着以上。
しかし、母はそんなに料理も好きではないし、そもそもそんなエプロン着ていた記憶もない。
「どうしてこんなにエプロンがあるの?」と娘が聞くと、
「昔はね、冠婚葬祭全て家でやっていたから、お嫁さんや女の人はエプロン着けて台所で料理やお酒の準備をしていたのよ。
このエプロンは私の母や姉がここに嫁いだ時に困らないよう沢山持たせてくれたの」
そんな話を初めて聞いたので私は同じ時代に生きていた母がなんとなく知らない時代の境目に存在しているという不思議な感覚を味わった。
娘は「でもほとんどお母さんには似合わないね」と一着一着品定めしてすごくシンプルな白いエプロンを選んで私に「ん」と渡してきた。
母から私へ受け繋がれるエプロン。
いつか母が亡くなるとき私はこの沢山のエプロンをみてどう思うのか。
まだ、来ないでほしい。