見出し画像

いつまで経ってもこの時期はしんどい

孤独

 今まで幾度となく繰り返されてきた人事異動。何回繰り返しても慣れない。自分の異動がなくても周りの人が変わってしまうのは、”できるんだろうか。やっていけるんだろうか。“と不安になる。心細くなる。自信を失う。

 3月26日彼の異動を知った。友人が事務室までついて来てくれた。事務室を覗くと部活から帰ってきて忙しそうにバタバタしてた。あぁ会えなくなっちゃう。そう思ったら涙が溢れて事務室の前で泣いた。どうせ球場で会うんやし、もう野球を辞めるわけでもなく、ただただ高校へ異動していくだけ。日中どこで勤務するかが変わっただけ。しかもその高校は私の母校。それだけの話。

 彼が同じ学内に居るってことが自分の中でいっぱいいっぱいになった時いつでも逃げにいけるっていう心の支えだった。彼を見て私も頑張りたいって思ってた。模試の結果悪くて怒られたり、返事が小さいって指摘されたり、どーでもいいこと話して、くだらないことで論争して、選手が太っただのあの選手はファン対応が悪すぎるとか、あの選手はファンから嫌われてるとか、出待ちしてきて誰に会ったかとか話してる時間が何よりも幸せだった。それを失うのが怖かったし、気軽に話せなくなることが淋しかった。

 当たり前なんだろうけど、彼は”どこにどの部屋があって誰のデスクがあるかもわかんないし、顔と名前も一致させなきゃいけない。大丈夫かなぁ“って不安そうにしてた。そんなことを異動してくの反対してる私に言われても困るんだけどなぁって、送り出す側なんだけどなぁ...と思ってた。部活も試合前で練習もあるのに片付けとか忙しそうにしてた。無理させたくないなぁって思ってた。もう人が壊れてくのを見るのは充分。恐い。これ以上身を削ってほしくない。窶れてほしくない。

 「別に会えんくなるわけじゃないし、基本球場いるから球場で会えばいい。お互い頑張ろ。国試受かれよ。」

って言ってくれた。球場毎日行くねって、頑張って探すねって約束した。嬉しかった。4月1日付で異動になってその次いつ会えるか分かんなくて、気がかりだったから顔だけでも見られればいいって思って遠かったけど2日の試合を観に行った。結果は悲惨。彼の努力を知ってるからこそ、顧問3人が日頃身を削って仕事してるのを知ってるからこそ悔しかった。彼らの頑張りが報われてないみたいな感覚になって淋しかった。こんな感覚になった試合は初めてだった。 途中からだけど試合同じスタンド席から見てた。席遠かったけど、来たのすぐ気づいた。彼は負けが決まってすぐ球場を出てった。私も保護者とかと会うの気まずいから逃げるように外へ出た。試合後の彼の表情は今でも脳裏に焼き付いてる。結局最後プレイするのは学生たちやでって彼はよく言うけどその意味がよくわかった。

試合後のMTで監督がお話されてた。その時の彼の背はすごく孤独にみえた。ひとりで背負いきれない程の荷物を背負ってる気がした。ひとりで闘い続けてるのだろうと思った。孤独なんだろうなって思った。

続けるという選択、葛藤

 もう一般人かもしれないけど、周りから見たら1職員にすぎなくて学内を普通に歩いてる人でしかないけど、彼はいつまでもヒーローだから。私の中では、何があってもヒーローだから。

野球が大好きで球場が大好きで、野球してる時が幸せそうで嬉しそうで生き生きしてて私はそれを見てるのが嬉しくて幸せなんだけど、彼を孤独にさせてるのも苦しめてるのも野球なんだろうな。そんなことを思ってた。なんか残酷だね。好きだけじゃやっていけないってこういうことなんだろうって思った。

野球を辞めるっていう選択をせずに今までで続けてきてくれたこと。

私は嬉しい。いちファンとして誇りに思う。この球団のファンになって良かったと心から思う。学内で他の職員がたくさん彼のこと褒めてくれる。自分が褒められてるみたいで嬉しい。

 彼の存在がなければ、もう一度本気で球団を応援するっていうことをしてなかったと思う。俊哉さんが怪我をして育成になって逃げるように彼を応援するようになったこと申し訳なく思ってた時もあった。彼にとってその2年間という月日は決して楽なものではなかったと思うし、その2年間を彼が今どう思ってるかなんてわかんない。今、一般人として頑張ってるのにそれを壊してる気がして申し訳ないなぁって思ったりする。私が彼の応援者でいることが良いことなのか自信がなくて常に葛藤してる。今でもゼロになったわけじゃない。私のことも彼のことも知ってる教授に

”ここまで大好きで居てくれて、引退してても応援してくれて、彼は幸せだね。感謝だね。“

って言われた。その言葉に少し救われた。本人が何を感じてて何を思ってるのかなんてわかんないけど、自信を持って誰よりもあなたのファンで大好きで、ずっとずっと何があってもあなたは私にとってヒーローですって言える。
勿論、試合で勝って欲しいっていう思いもあるけど、彼が野球を好きで居続けてくれることが何よりも大事。嫌いになるくらいならいつでもやめていいからねって心から思ってる。

人との出会いと、大好きな人との別れ。
いつまで経っても慣れなくて、なんとかなるってわかってても、しょうがないってわかっててもしんどいなぁって毎年思ってる。

けど、この感情もまた失ってはいけない気がする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?