父と8歳息子の東南アジア&アフリカ旅行~アンボセリとキリマンジャーロ①~Vol.10
ナイロビを出てアンボセリへ移動する。
少しタイトな日程だが、やはりここまで来たらキリマンジャロが見たくなり急遽1泊2日で行くことにした。
予約した宿泊先は「Masai Simba camp」。
この後に移動するマサイマラはテントなので今回はコテージを予約した。
出発の朝9:00にガイド兼運転手のTomは既にロビーで待っていた。
肌寒いため、身体には赤を基調としたマサイ族柄の布をまとっている。
聞くとキャンプまでは、車で3~3.5時間ほどかかるという。
この日の早朝にキャンプを出て3時間以上運転し、ナイロビまで我々を迎えに来て、またすぐ同じ道を戻るかと思うと何か申し訳ない。
まあ迎えに相応の代金を払っているので(USD120)、 気にしても仕方ない。
代金は高く感じるが、これが相場のようでどこのサービスを見てもほぼ同額だった。
車は古いハイエース。シートは壊れていてグラグラ揺れる物もあり、お世辞にも快適とは言えない。息子も嫌がっているが「3時間位で着くから」となだめる。
タイヤの溝を確認したが、ツルツルという訳でもなく大丈夫そうだ。
外国で車で長距離移動する時は、いつもタイヤの溝を気にしてしまう。
つるっつるのタイヤで高速をぶっ飛ばしているバスやトラックなどは、東南アジア諸国でしょっちゅう見かける。怖くてしょうがない。
しかし気にしたところでどうせその車に乗って移動するしかないんだし、
これからはチェックするのを辞めよう。
ナイロビを抜けて1時間ほど経つと、Tomが「見ろ、キリンがいるぞ!」と大きな声を上げて運転席から左を指さした。
「・・・? 見えないけど、どこにいる??」
「あそこだ!ブッシュの奥の所に2~3匹いる!」
どう見ても荒れ地とブッシュしか見えない。
仕方なくバックから双眼鏡を出し、良く目を凝らすとキリンらしき小さい物体が見えた。でもキリンと言われないと、何の動物か分からない。
「パパ、あの人めっちゃ目いいね!!」
息子も驚いている。
「車を運転しながらあれが見えるのか...」
おそるべき視力と動体視力に、ため息が出る。
Tom は翌日の国立公園でのゲームドライブ(車に乗って動物を探して見て回ること)も、はるか彼方のサイを見つけたりして僕らを驚かせた。
マサイ族の視力がずば抜けて良いという噂は、嘘じゃない様だ。
というか、絶対嘘じゃない。並外れている。
この後も、国立公園が近づくにつれガゼルなどの草食動物は良く見かけた。
Tom曰く、キリンなどの草食動物は国立公園へ行かなくても普通に見られるらしい。
そもそも国立公園と言っても壁がある訳では無いので、それも当たり前と言えば当たり前だ。
動物たちは、ただ安全で快適な場所へ行きたいだけだ。
人類の歴史も同じだ。
「見ろ、キリマンジャーロだ!!」
Tom がまた大きな声を上げた。
どうやら現地では「キリマンジャーロ」と伸ばして呼ぶらしく、加えて「ジャ」の部分にアクセントが付く。日本語で「ペペロンチーノ」と言う発音に似ている。
前方を見ると、岩とも山ともつかない巨大な物体が浮かび上がっている。
その影はうっすらとしており、かろうじて輪郭が分かる程度しか見る事ができない。
残念ながらこの季節は綺麗に見えない時期のようだ。
それでもテンションが上がる。
何といってもその高さは富士山の1.5倍以上の5,895mだ、迫力が違う。
キリマンジャロという名前の由来は、地元のチャガ語でKilema=神 Kyaro= 山 だという説やスワヒリ語のKilima = 丘 njaro= 輝く から来ているという説がある。
「イエス、キリマンジャーロ!!」
車が進むにつれ段々とその姿が大きくなっていく。
神聖なる巨大な山に興奮した僕ら父子は、興奮して何度も何度もその名を叫んでいた。