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ストーリー作り|学びの記録.08 原因と結果で織りなす一貫性の技

物語とは、原因と結果の連鎖で成り立っています。この連鎖がなければ、物語は単なる出来事の羅列に過ぎなくなります。
今回は、「原因と結果」を軸に、どのようにストーリーを展開させ、読者を惹きつける物語を作るかを学びました。「もし、その後、だから」というシンプルな法則から深いキャラクターの動機まで、物語の奥深さを追求する方法をご紹介します。


原因と結果を軸にした物語の展開

「原因と結果」は読者を引き込むための重要な軸です。この構造を活かすことで、物語は単なる出来事の羅列から脱却し、意味のあるストーリーとして機能します。この記事では、「もし、その後、だから」の法則を詳しく解説し、実際のストーリー作りにどのように応用できるかを探ります。

「もし、その後、だから」の法則とは?

「もし、その後、だから」とは、物語の流れを論理的かつ自然に保つための基本的な構造です。これは、キャラクターの行動とその結果を連続的に結びつけることで、物語を前進させるシンプルかつ効果的な手法です。

この法則の基本構造
・もし:キャラクターが選択や行動を起こすきっかけ(原因)
・その後:その選択や行動が引き起こす結果(中間の出来事)
・だから:キャラクターがその結果に基づいて次に下す決断(新たな行動)

この連鎖が、物語全体を貫く「線路」のような役割を果たします。この線路がなければ、物語は単なる断片的な出来事の羅列に終わり、読者の興味を保つことは難しいでしょう。

法則を活かしたストーリー展開
具体例を使って、この法則がどのように機能するかを見てみましょう。

もし:主人公が友人を助けるために銀行を襲うことを決意した
その後:
計画が失敗し、警察に追われることになる
だから:
彼は逃げながらも新たな方法で友人を救おうとする

この例では、主人公の行動(もし)によって状況が変化し(その後)、彼が次の行動(だから)を余儀なくされています。物語はこの連鎖によって前進し、読者は「次に何が起きるのか」を期待しながら読み進めることができます。

さらに深掘りすると、次のような具体的なシーンが考えられます。

もし:
主人公が友人の命を救うために大金を必要とし、銀行強盗を計画する。しかし、内通者の裏切りで計画が漏れる。
その後:
警察の急襲を受けて逃走中に仲間を失い、逃げ延びた主人公は隠れ家を探すことになる。逃走中に得た情報から、友人を助ける他の方法があることを知る。
だから:
主人公はリスクを承知で新たな計画を立て、自らの命をかけて最後の一手に出る。

ここで重要なのは、各段階でキャラクターの行動が読者に「必然性」を感じさせることです。計画の失敗、警察の追跡、仲間の犠牲など、それぞれが次の行動を決定づける要因となり、物語が自然な流れで進行します。

「予測可能だが意外性がある」のバランス

「もし、その後、だから」の法則を効果的に活用するためには、「予測可能だが意外性がある」というバランスを意識することが重要です。読者は物語の展開に一定の予測を立てつつも、その予測が完全には当たらない、意外な方向へ物語が進むことで興味を持続させます。

予測可能であることの役割
読者は次に何が起きるかを想像することで、物語に引き込まれます。次の展開を予測する(予測が合っている/合っていないは関係なく)ことができなければ、読者は物語に楽しさを見いだせず、読むのをやめてしますかもしれません。そのための情報は、惜しみなく公開しましょう。

例)
主人公が怪しい扉を開けようとするシーンで、「内部からかすかな足音が聞こえた」という描写を入れると、読者は「誰かが待ち伏せしているのでは?」と予測し、緊張感を持って展開を追い続けます。

意外性の役割
意外性があることで、読者は「そうくるか!」という驚きを味わいながらも、その展開に納得する必要があります。

例)
主人公が信頼していた仲間が、実は敵側のスパイだったと明らかになる場面。読者は驚きつつも、これまでの伏線(不審な行動や曖昧な発言)を思い返し、納得感を得られる展開です。

「もし、その後、だから」の応用方法

この法則を応用することで、物語の複雑さと奥行きを増すことができます。

応用1:複数の因果関係を絡める
1つの「もし、その後、だから」に複数のキャラクターや出来事を絡めることで、物語に厚みを持たせることができます。

例)
主人公の行動が引き起こした結果が、敵対者や友人、さらには全く関係のない第三者の運命にも影響を及ぼす

応用2:タイムラインを操作する
時間軸を操作することで、「その後」が物語の冒頭に提示され、後から「もし」や「だから」が明かされる構造にすることも可能です。

例)
物語は主人公が追われるシーンから始まり、後の回想で「なぜ彼が追われているのか」が明かされる。

「もし、その後、だから」の法則は、物語の骨組みを作るうえで欠かせないツールです。この法則を使うことで、読者にとって分かりやすく、かつ感情を揺さぶるストーリーを構築することができます。

キャラクターの内面的な軌跡を描く

物語を読者にとって深く感動的なものにするためには、キャラクターの内面的変化の軌跡を描くことが不可欠です。物語の「外面的な出来事」と「内面的な葛藤」が融合することで、キャラクターがただの登場人物から、生きた存在として読者の心に刻まれます。

外面的な因果

物語を進めるうえで、キャラクターの行動には必ず「原因」と「結果」があります。この因果関係を外面的にだけでなく、内面的にも掘り下げることで、物語の厚みが増します。

例)ジョンは父親に怒鳴られたため、家を出た。

これは、ジョンの行動(家を出た)の外面的な理由(父親に怒鳴られた)しか描いておらず、内面的な動機や心理的背景が不明です。そのため、読者がジョンの選択に共感するための感情的な情報が欠けています。

内面的な因果

内面的な因果は、キャラクターの行動や選択の背後にある心理的要因や過去の経験に焦点を当てます。

例)
ジョンは父親に否定され続けた幼少期のトラウマから、自分の価値を証明するために家を出ることを選んだ。

これは、ジョンの行動(家を出る)の背後にある心理的要因(幼少期のトラウマ)や動機(自分の価値を証明したい)を具体的に描いています。その結果、キャラクターの選択に説得力が生まれ、読者が感情移入しやすくなっています。

外面的な因果と内面的な因果の融合

物語の出来事(プロット)を進行させる外面的な因果と、キャラクターの内面的な葛藤を示す内面的な因果を融合させることで、物語全体に一貫性が生まれます。たとえば、ジョンが家を出た後に直面する困難(外面的な出来事)が、彼のトラウマや自己価値の再評価(内面的な成長)とどのように結びつくかを描くことで、物語に深みを与えることができます。

内面と外面を結びつける方法

キャラクターの内面と外面を結びつけることで、読者にとって感情的に意味のある物語を作ることができます。以下はそのための具体的な方法です。

方法1:内面的な問題をプロットに関連づける
キャラクターの内面的な問題(過去のトラウマ、未解決の葛藤、自信の欠如など)を、物語の主要なプロットに直接関連づけます。

例)
主人公が幼少期に家族を失ったトラウマを抱えており、物語の中で孤児院を守るために戦う。守る相手がかつての自分と重なることで、過去の傷と向き合いながらの行動には、説得力が加わります。

方法2:外面的な出来事が内面的な成長に影響を与える構造
物語の出来事がキャラクターの内面的な成長にどう影響するかを考えます。出来事が単に発生するだけでなく、それがキャラクターの価値観や信念、選択にどのような変化をもたらすかを描くことが重要です。

例)
主人公が仲間の裏切りに遭い、信頼を失う。しかし、物語を通じて新たな仲間との絆を築き直すことで、他者を信じる勇気を学び、孤独だった価値観が変化します。

方法3:勝利や達成を内面的な変化として描く
キャラクターが外面的なゴールを達成するだけではなく、その過程で内面的な変化を遂げることを示します。

例)
主人公が敵を倒すという外面的なゴールを達成するが、その戦いで自らの憎しみが敵と同質であることに気づく。これをきっかけに、復讐ではなく赦しを選ぶ生き方へと変化します。

内面的な軌跡を描く3つのポイント

1.キャラクターの動機を掘り下げる
キャラクターが行動する動機を明確にすることで、その行動に説得力を持たせることができます。動機はキャラクターの過去や価値観から生まれるものです。

例)
主人公が孤児を助ける理由が、かつて自分も孤児として苦労した経験から来ていると描かれる。この動機により、助ける行動が単なる善意ではなく深い説得力を持つものになります。

2.内面的な成長の段階を描く
キャラクターが物語の中でどのように変化していくかを段階的に描きます。変化は一足飛びに起こるものではなく、出来事の積み重ねを通じて達成されるべきです。

例)
初期:他者を信頼できず、孤独に行動する主人公
中盤:他者と協力せざるを得ない状況に追い込まれる
終盤:協力することの重要性に気づき、自分の殻を破る選択をする

3.内面の変化を外面的な行動で示す
キャラクターの内面的な変化を、行動や選択を通じて読者に伝えます。言葉で説明するのではなく、行動で「見せる」ことが重要です。

例)
「他者とは関わらない」という信念を持っていた主人公が、クライマックスで仲間を救うために自ら危険を冒す。これにより、彼が他者を信じ、孤立を克服した内面的な変化が行動を通じて示されます。

キャラクターの内面的な軌跡は、物語を読者にとって感情的に響くものにするための重要な要素です。これを意識して、内面と外面を結びつける物語を作りましょう。

「語るのではなく見せろ」の本質

物語を描くうえでよく聞かれるアドバイス「語るな、見せろ」。これは単に視覚的な描写を多用することではなく、読者がキャラクターの行動や状況を通じて、感情や意図を理解できるようにすることを意味します。

「語る」と「見せる」の違い

「語る」は、キャラクターの感情や状況を直接的な言葉で説明することです。一方、「見せる」は、キャラクターの行動、対話、環境の描写を通じて、それらを読者に伝えることを指します。後者を意識することで、物語はより生き生きとし、読者は感情移入しやすくなります。

悪い例)
サラは悲しんでいた。彼女は涙を流しながら友人に電話をかけた。

この文章では、サラの感情が「悲しい」と直接説明されていますが、具体的な行動や状況が示されていないため、読者がその悲しみを実感することは難しいです。

良い例)
サラは電話を手にしたが、震える指で画面を何度も触れ、番号を間違えた。大粒の涙が頬を伝い、言葉にならない声で名前を呼んだ。

この文章では、サラの行動や体の反応を描写することで、彼女がどれほど悲しいかを読者が自然に理解できます。直接「悲しい」とは書いていないにもかかわらず、彼女の感情が強く伝わってきます。

「見せる」とは何か?

「見せる」とは、物語の出来事やキャラクターの感情を直接描かずに、行動や描写を通じて示し、読者がその状況を自分で理解し、感じ取れるようにすることです。その重要なポイントは次の通りです。

結果ではなく過程を描く
キャラクターがどのようにしてその状態に至ったのかを示すことで、感情や状況に説得力を持たせます。

悪い例)彼は怒っていた。
良い例)彼は机を叩きつけ、椅子を蹴り飛ばして部屋を出て行った。

五感を活用する描写
視覚だけでなく、音、匂い、触覚、味覚を取り入れることで、読者がその場にいるかのような臨場感を与えます。

例)雨が冷たい斜めの線を描き、彼の肩を叩く音が耳をつんざいた。

キャラクターの反応を描写する
状況や出来事に対してキャラクターがどのように反応するかを具体的に描くことで、そのキャラクターの性格や感情が自然に伝わります。

例)
彼は電話を耳に当てたが、相手の声を聞いた途端、握りしめた手が震え、声が出なくなった。

「語るな、見せろ」の効果

「見せる」を意識した描写は、読者に次のような効果をもたらします。

1.感情移入を促す
キャラクターの行動や反応を詳細に描写することで、読者はキャラクターの感情を共有しやすくなります。読者がキャラクターと共に笑い、泣き、怒ることができる物語は、強い印象を残します。

2.想像力を刺激する
詳細な説明ではなく、状況を描写して読者に解釈の余地を与えることで、読者自身の想像力が働きます。読者が能動的に物語を読み解く体験を提供することが可能です。

3.読者を物語に引き込む
「見せる」ことで、物語における緊張感や期待感を高めることができます。キャラクターの行動や環境の描写は、物語にリアリティを与え、読者をその世界へ引き込みます。

「見せる」ための実践的なテクニック

具体的な行動を描写する
キャラクターの感情や意図を「行動」で示します。読者はキャラクターの行動から感情を読み取り、状況を理解します。

悪い例)彼は緊張していた。
良い例)彼はスーツの袖を何度も引っ張り、手汗をズボンで拭いながら会議室のドアを見つめた。

対話に感情を含める
セリフを通じてキャラクターの感情を表現します。ただし、感情を直接言葉にするのではなく、間接的に伝えるのが効果的です。

悪い例)「私は怒っている!」と彼は叫んだ。
良い例)「こんな約束、初めから守る気なんてなかったんだろう!」と彼はテーブルを叩きながら言った。

環境や雰囲気を描写する
キャラクターが置かれている環境を描くことで、その感情や状況を補完します。

悪い例)部屋は寒かった。
良い例)薄暗い部屋の窓から冷たい風が入り込み、彼の肩に積もった埃をかすかに動かした。

「語るな、見せろ」というアドバイスは、物語を読者にとってより感情的で魅力的なものにするための重要な技術です。これらを実践することで、読者を物語の中に引き込み、キャラクターと感情的に共鳴する物語を作ることができると思います。

脱線を防ぐ

物語を魅力的に保つためには、主軸となる原因と結果の流れを崩さないことが重要です。読者が物語に没入する理由は、その中で展開される出来事が一貫性を持ち、必然的につながっているからです。

一方で、物語に不要な要素や情報が含まれると、読者の集中力を削いでしまいます。脱線を防ぐためには、場面や情報を慎重に取捨選択し、「それで?」という問いかけを活用するのが効果的です。

脱線を防ぐための「それで?」テスト

「それで?」という問いは、物語に登場するすべての場面や情報が物語全体に必要不可欠であるかを確認するためのツールです。この問いを場面ごとに自問することで、物語の一貫性を保ち、不要な描写を削ぎ落とすことができます。

以下が「それで?」テストの質問例です。

1.この場面は物語全体に必要か?
各場面が物語の展開に直接関わり、重要な役割を果たしているかを確認しましょう。この場面を省いても物語が成り立つ場合、それは削除すべきです。具体的には、次のような点を考慮してください。

・その場面がキャラクターの成長や物語のテーマに貢献しているか?
・次の展開への伏線やヒントを提供しているか?

悪い例)
主人公が立ち寄ったカフェでの会話が、美しい描写だけで物語の進行やキャラクターの成長に影響を与えない。この場面は削除しても物語は問題なく進みます。

良い例)
主人公が偶然目撃した秘密の会話が、後に敵の計画を阻止する重要な手がかりになる。場面は物語の進行に直接関わり、次の展開に必須な伏線として機能しています。

2.キャラクターの行動や動機が明確か?
読者は、キャラクターの行動や選択に納得できなければ物語から離れてしまいます。各場面でキャラクターの行動が「なぜ、そのようになったのか?」を説明できるか確認しましょう。

悪い例)
主人公が突然恋人を裏切る場面があるが、その理由が不明瞭である。
これでは読者がキャラクターの行動に感情移入できず、物語に対する興味を失います。

良い例)
主人公が恋人を裏切る理由が、彼自身の過去のトラウマや現在の脅威によるものであることが明らかにされている。
動機が明確であるため、読者はその行動を理解し、物語を追い続けることができます。

3.物語のテンポを崩していないか?
物語のテンポが失われると、読者の興味が薄れてしまいます。不必要なフラッシュバックや、本筋と関係のないサブプロットは、物語の進行を妨げる要因となります。

悪い例)
クライマックス直前に、主人公が子ども時代に大好きだったペットの思い出が詳細に語られる。 本筋とは関係なく、物語の緊張感を損なう。

良い例)
フラッシュバックが主人公の現在の行動や決断を補強するものであり、物語全体に関わるテーマや感情を深める場合、適切に活用できます。

脱線を防ぐための3つの原則

1.伏線として機能させる
エピソードや情報が物語全体の伏線として機能している場合、それは「脱線」ではなく「必然的な要素」となります。

例)
主人公が序盤で拾った古びた鍵が、クライマックスで隠された秘密の扉を開ける重要なアイテムとなる。このエピソードは伏線として必然的な役割を果たしています。

2.テーマに結びつける
挿入する場面やエピソードが、物語のテーマやメッセージを補強するものであれば、脱線にはなりません。

例)
主人公が村で貧困に苦しむ人々を助ける場面が、物語全体のテーマである「他者との共存と助け合い」を強調し、意義のある挿話として機能します。

3.テンポを意識する
物語の進行を妨げないよう、場面の長さやタイミングを慎重に調整します。

例)
激しい戦闘シーンの後に挿入された短い静寂の場面で、キャラクターが戦いの意味を振り返る。この間はテンポを崩さず、緊張感を次の展開へとつなげます。

脱線を防ぐためには、物語のすべての場面が「原因と結果の連鎖」において必要不可欠な役割を果たしているかを確認することが重要です。物語を研ぎ澄ませるために、不要な要素を大胆に削ぎ落とし、読者を本筋に引きつける力強い物語を作りましょう。


ストーリー作りにおける「原因と結果」の連鎖を深く学ぶことで、単なる出来事の羅列ではなく、必然性を持った展開が物語を支える重要性を理解しました。「もし、その後、だから」の法則は、そのシンプルさゆえに応用が広く、登場人物の行動に説得力を持たせる鍵となります。また、内面的な軌跡を描きつつ、外面的な出来事と融合させることでキャラクターが生き生きとし、読者との感情的な共鳴を生むことを再認識しました。特に「予測可能だが意外性がある」展開のバランスは、読者を引き込みつつ驚かせる効果的な手法だと感じました。さらに、「語るな、見せろ」という技術を駆使することで、読者の想像力を刺激し、物語世界に没入させる方法の重要性も学びました。これらを実践することで、より深みのある物語を構築していきたいと思います。


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