ゲーム業界外のメディアでゲーム絡みの記事を書くと炎上しやすいのはなぜか
ゲームメディアの記者歴が長かったことから、ゲームメディア以外のところでゲーム絡みの記事執筆を頼まれることが多い私。そこで各所の編集さんからたびたび耳にするのが、「ゲーム絡みの記事は難しい」ということ。
どう難しいかと聞くと、「ゲームの知識がないからどう書くべきかわからない」と言います。未知のものに対して責任は取れないので警戒するのは当然です。
これに加えて、「ゲーム絡みの記事を書くと炎上しやすいから」とも言います。ゲーム絡みだと他のネタより特別炎上しやすいとはどういうことか、私も一瞬ピンと来なかったのですが、最近ちょっとわかってきました。
その一例としてわかりやすいニュースがあったのでご紹介します。
これは全然ゲームと関係ない話なんですが、最後に少しだけゲームの話が出てきます。
この話、ゲームを少し知っている人だと、「任天堂のゲームじゃねえよ、コナミのゲームだよ」とツッコミを入れるでしょう。
もっと詳しい人だと、「英語でNINTENDOと言えば一般的にファミコンを指す(Nintendo Entertainment Systemという名前で売られていた)ので、正しくは“ファミコンのゲームだ”と訳すべき。翻訳者がそれを知らなかったのだろう」と気づくはずです。
あっそう。で終わればいいのですが、ここに炎上しやすい理由が隠れています。
日本国内で、ゲームのファン、あるいは昔ゲームが好きだった人は、他の趣味に比べてかなり人口が多いと思われます。人生でゲームを数百時間プレイした人はかなりの数いるはずですが(1日1時間なら、1年間で365時間です)、野球やサッカーを日常的に、計数百時間プレイした人はそこまで多くないはずです。
つまり日本では、「ゲーム経験者」の割合がとても高いのです。ほぼ毎日ゲームをする生活を何年も続けたことがある人も少なくないはず。ゲームを趣味とする、あるいは過去に趣味としていたベテラン経験者は相当な数いるわけです。
メディア関係者からすると、そんなベテラン経験者がわんさかいるネタに、おいそれと手を出したら、ちょっとしたミスで全く違う意味にとられてしまう可能性がある……つまり簡単に炎上してしまうのではないか(あるいは炎上してしまった)と考えてしまうのです。特にゲームを趣味としていない編集者には恐怖の対象でしかないでしょう。
実のところ、ゲーム専門であるゲームメディアであっても似たようなものです。ゲームメディアの記者はあらゆるゲームに精通しているエキスパートでありたいものの、数十年の歴史を持ち、無数の作品が存在するゲームを隅々まで知り尽くした人は、どこにもいません。
なぜなら、発売される全てのゲームを最後までプレイするのは時間的に不可能だからです。クリアするのに数十時間かかるRPGを1本クリアするのは、三日三晩徹夜すればいいですが、さらに他のゲームも遊びながら仕事もこなすというのはどう考えても不可能です。
しかし読者様の中には、特定のシリーズ作品を遊びこんでいる方もいらっしゃいます。そして記者が必ずしもそのシリーズ作品を遊んだことがあるとは限りません。ですから続編作品の記事を書くのは、とても気を遣う仕事になります(過去作を遊んだライターは重宝されますが、作品は無数にあるため、適切なライターが見つからないこともままあります)。
ちょっとした間違いや誤解が、SNSで何かの拍子に一気に拡散されてしまう時代。記者はより一層注意する必要がありますが、「求められる知識(情報量)が多すぎて何をどう注意すればいいのかわからない」というのが、ゲーム絡みの記事の難しさだと思います。
個人的ノウハウをぶっちゃけると、知らないことをさも知っているかのように書くとだいたい細かい間違いにツッコミを入れられますし、「よく知らないけれど」などと前置きしたら「素人は引っ込め」と怒られるので注意。たとえ遊んだことがなくても、気になることはとことん調べて可能な限り裏を取り、調べてもはっきりしないことは書かない。そして知らないそぶりも見せないのがコツです。