【22/23シーズンLaLiga第2節】FCバルセロナvsレアルソシエダをバルサ目線で振り返る。
1.はじめに
2022年8月22日(月)、バルセロナにとって今シーズン初めてのアウェイゲーム。試合場所はレアルソシエダ(通称ラレアル)の本拠地、レアレ・アレーナ。対戦相手のラレアルといえば日本でも知名度の高いバルサのカンテラ出身、久保建英が今季から加入している。その久保が早速決勝点をあげラレアルは開幕節を勝利で飾っておりバルサとは異なる形で迎えた第2節。現地では久保フィーバーが起き、勢いに乗ったチームを相手にバルセロナはどのように戦い、今季初勝利で終えたのだろうか。今回はこの試合について振り返っていく。
2. 【前半】~行き詰まるビルドアップ~
まずはバルセロナのスタメンについて。
開幕戦でブスケツがレッドカードをもらったことで、ピャニッチがピボーテ(DMF)に入るかと思われたが、ここでチャビ監督に選ばれたのはフレンキー。また試合前から予想されていたバルデが左の大外を担当することとなった。そしてセビージャからの新加入クンデの登録が遅れていたことも影響し、CBは右からアラウホ、クリステンセン、エリックの3枚となり、布陣はまさかの3-2-4-1であった。
対するラレアルは4-3-1-2を採用。2トップは前節と同様にイサクと久保が起用された。またその1列下のシャドーの位置にはダビドシルバが入った。
さて前半が開始したかと思えば早速スコアが動くこととなる。
前半が始まると同時にバルサはラレアルの久保、イサク、ダビドシルバの3人のハイプレスにハマり、相手の攻撃に転じることとなった。がしかし、奪い返したバイタルエリアの密集地帯でペドリが上手くボールをコントロールし前に走り出したバルデにパス。そのままバルデが持ち前のスピードを活かして左サイドをドリブルで駆け上がり、相手のペナルティエリアに侵入したところでシュート。これは上手く足にミートせず枠外の方向にゴロゴロと転がったが、これに素早く反応したのがレヴァンドフスキ。上手く左足に当て先制点を獲得した。
このようにして立ち上がり重心が前がかりになっていたラレアルに対してしっかりカウンターを刺し、今季初のゴールをもぎ取った。レヴァンドフスキはLaLigaでの初ゴールとともに、自身のバースデーゴールとなった。
幸先良く先制できたため良い形でゲームに入れるだろうと思った矢先、またスコアが動く。
バルサが後方でビルドアップをしていたところ、右にいたアラウホからその左に落ちてきていたフレンキーにパスが渡る。すぐに誰かにパスを渡せば良かったもののフレンキーの短所である球離れの悪さが露呈し、プレスに来ていた久保にあっさりボールを刈り取られる。そのまま抜け出したイサクにパスが出され、エリックが懸命に戻り対応したが努力も虚しくイサクのシュートがエリックに当たりディフレクション。そのままバルサのゴールにループ気味に吸い込まれた。
個人的に、決められたときのエリックのしたたり顔が好き。
そうして前半10分も経たない内に両チームがゴールを決め振り出しに戻る展開となったが、ここからバルサのビルドアップが行き詰まることとなる。
バルサは出だしから3バックでビルドアップをしていた。一方、ラレアルは[イサクと久保の2トップ]+[トップ下のダビドシルバ]でプレスをかけに来る。お互いに3枚で数的同数であるため、簡単に前にパスが入れられない。時折フレンキーがボールを受けるが球離れが悪く、簡単に相手にボールが奪われてしまっていた。またラレアルはフレンキーにはメリーノ、ペドリにはメンデスとほぼマンマークでついてくるため、ピボーテの2枚も活かせない状況だった。かといって後方で数的有利を生み出すために左で高い位置をキープしているバルデが後ろまで下がることもなく、ひたすら数的同数の低い位置でのビルドアップとなっていた。このような流れで攻撃が上手くいくこともなく、中盤でハイプレス、ディフェンスがハイラインのラレアルにボールを回収され、カウンターを食らい守備に転じる場面も多く見受けられた。幸い、久保やシルバが再三決定機を外したり、GKテアシュテーゲンの好セーブもあり、失点に繋がることはなかった。
さて、そのような状況で唯一バルセロナが確立していた攻撃の方法がある。それは密度の高さとデンべレのアイソレーション。
どのような形かというと上記の図の通りである。ラレアルのフォーメーション4-3-1-2の構成上、どうしてもピボーテのスビメンディの脇にフェランとガビが割とフリーで存在することになる。これをどう活かすか?左の高い位置にバルデが張っているためその下のスペース、言い換えるとラレアルの24番メンデスの脇の位置にフェランが落ちてきたのだ。またそれに連動して最前線のレヴァンドフスキも左サイドを中心に顔を出すことが多くなった。するとラレアルの陣形の重心もバルサからみて左サイドに寄っていく。そこで生まれるのが戦術兵器デンべレの孤立。このような流れで左サイドで形を作り、空いた右のスペースへ展開するというシーンが前半は見受けられた。またフェランだけでなく、右のガビも同じようなポジショニングを実行していた。
最後に個人的に気に入った前半の攻撃をピックアップする。
それは前半45分、これもまた左サイドからの攻撃である。左サイドでボールを保持していたペドリが最前線から落ちてきたレヴァンドフスキにボールを預け、ワンツーで相手をかわしてフリーになる。その後ペドリはレヴァンドフスキが落ちて空いたスペースに走りこむフェランに縦パスを刺した。
結局相手に縦パスをカットされその攻撃は終了してしまったが、右サイドの大外にはデンべレが孤立して前に大きなスペースを持って準備していた。ここでペドリが孤立したデンべレにスルーパスを出して、デンべレが折り返しのクロスを入れていれば得点に繋がっていたのではないか?と思われるような場面であった。前半の途中から実践していたことが形になりそうなシーンであったため、非常に印象的だった。
3.狡猾なアンスファティのポジショニングと己の首を絞めたラレアル
後半の始めは特に前半のと変わることなく同じような展開となった。そんな中後半64分、チャビ監督がテコ入れをする。
前節のラージョ戦でレヴァンドフスキの近くに配置することで攻撃が活性化したこともあってか、シャドーのフェランに代えてファティ。またバルデに代えて単体での突破力のあるラフィーニャを投入した。この交代を行って2分後、早速スコアが動く。
ファティが投入された2分後あっさりスコアが動いた。ラレアルのゴールキックで上がったボールを右にいたフレンキーがヘディング、それを拾ったラフィーニャがバイタルにフリーで入ってきたアンスにパス。右足でトラップしたファティが背後に走りこんでいたデンべレを把握していたため、2タッチ目で鮮やかなヒールパス。あとはデンべレが運んでゴール右のサイドネットに冷静に沈めた。
このゴールはなぜ生まれたのか?
ラレアルがゴールキックの際にディフェンスラインが低くなっていたため、ボールを拾ったラフィーニャがラレアルのディフェンスラインと中盤の間で悠々とドリブルし、ファティも自らが仕事をこなせるバイタルのスペースに走り込む。それにラレアルの左ラテラル、エルストンドが引き付けられたため、更に生まれた外のスペースをデンべレが利用した、というのが今回のゴールの肝である。
一連の流れが非常にスムーズでファティの才能に改めて感激した瞬間であった。
遂にバルセロナがリードし、追加点を取り引き離したいところでさらにスコアが動く。
このゴールもファティのアシストによって生まれた。
左サイドに張ったラフィーニャにボールが渡りクロスを放り、そのこぼれ球をバイタルの左にいたファティがヘディングでペドリに落とす。そしてファティはすぐさまペナルティエリア内に走り込み、自身が最小限の仕事のできるスペースでペドリからパスを入れてもらい、囲まれつつもワンタッチでレヴァンドフスキに落とし、しっかりレヴァンドフスキが今試合2ゴール目を決めた。
言わずもがな、このゴールもファティの狡猾なポジショニングから生まれたと言える。彼の賢さとその技術は本当に目を見張るものがあり、彼が試合に出ることで必ず試合のリズムが変わることを思い知らされた。またこの時点でファティとレヴァンドフスキのデュオも確立したように感じた。
そんなファティだが本人の活躍がここで終わるはずもなく、自身でもゴールを決めることとなる。
たまたまゴール前にボールが転がってきたところで冷静に決めたゴールだった。が、そのシュート技術を馬鹿にしてはならない。
さてここまで後半のゴールラッシュについてまとめたが、なぜバルサの攻撃にスイッチが入ったのか別の理由が存在する。
後半入ってすぐは前半と何の変化もないラレアルであったが、デンべレがゴールを決めた前後辺りからマークの付き方が変化しているように感じた。前半は前述したようにがっちりマンマークで前線からの守備も徹底していたラレアルであったがいつからかゾーンマークに切り替え、前からのプレスが激しくなくなった。それにより、ペドリや、ガビ、フレンキーが確実にボールを繋げるようになり、バルサが安定してボールを回す展開となった。前半のバルサは中央を崩す際にフレンキーの運びという個人技での突破が多く見受けられるとともに外から回して崩すサッカーをしていたが、後半は中央でボールを回す機会が増えた。またガビがピボーテの位置に入ったりしてボールを捌くなど流動性も見て取れた。その後アルバが投入され、陣形が4-3-3になったことでボールを回せるようになった一因だと感じた。
4.フレンキーのCB化
改めてこの章では前半の内容に戻るが、フレンキーはCBとしてビルドアップに参加すべきだったのか?という問題に触れていきたい。
前半のフレンキーは相変わらず最終ラインに落ちたりクリステンセンの前にポジションを確保する場面が度々あったが、果たしてCBとして最終ラインに落ち切って数的優位を常に作りプレーするべきだったのか?
あくまで個人的な意見にはなるが、それはナンセンスだと考える。フレンキーをCBにするより、バルデに降りてきてもらってフェランがサイドに出た方がシンプルで分かりやすいのでは?と考えたからだ。前線で全体的にそれらしい抜け出しが少なかったため、フェランをサイドで起用した方が一番簡単でリスクの低い可変なのかなと。ハイプレスに対してラレアルの中盤はどうしても手薄になり、レヴァンドフスキが頻繁に落ちてくることが想定されるため、レヴァンドフスキが空けたスペースを利用するにはどうしてもフレンキーは前に残っていて欲しいと感じた。しかしこれに関しては議論が分かれそうではあるのでこの辺りで留めておきたい。
5.終わりに
今回は22/23シーズンLaLiga第2節レアルソシエダ戦について振り返った。無事に勝利を収め、今季初の勝ち点3を得ることができた。またバルサの10番、ファティの活躍を期待せずにはいられない内容だったため、非常に今後が楽しみである。余談ではあるが著者は貯金額¥6,500が確定した。
またこの記事を推敲する直前にチャンピオンズリーグのグループ分けが行われた。まさかの因縁のライバルであるバイエルンミュンヘンと3年連続同組となりFCバルセロナの宿命とヤヤトゥーレのくじ運(飛び火)を呪いたいところではあるが、チームとして成長したところを見せつけるためより一層気を引き締めて今後のリーグ戦に臨んで欲しい。次回の相手はホーム、カンプノウで迎えるバジャドリードである。今季2勝目を挙げ勢いに乗って欲しい。ご精読ありがとうございました。