甲状腺を患って気付いた学びと備え
先日甲状腺に関わる数字が悪化していることがわかり、調べていくとさまざまな学びを得ました。甲状腺に限らず他の病気にも共通する知見を共有します。
気付いたこと
健康診断だけでは見つからない病気がある
甲状腺の異常に気付き通院をはじめたのは10年以上前です。仕事中に考え込んでふと喉元をさわったとき、「喉仏こんな形だっけ…?」と違和感を覚えました。鏡を見てみると喉にはっきりとしこりがありました。驚いて仕事帰りに内科に行くと、甲状腺の問題だそうで専門病院の紹介状を書いてもらえました。甲状腺は首にあり、体の代謝を調節するホルモンを分泌する器官です。
表参道にある甲状腺の専門病院で採血・エコー・問診を行いました。「突然大きくなることはないはずだけど…」と言われながら計測してみると4cm。少し前に健康診断はあったし、パッと首元を見るだけで気付く異常なのに何も言われませんでした。「健康診断だけでは見つからない病気がある」これが1つ、病への気付きです。
健康に気を付けても原因不明の病気にはかかる
健康には気をつかう方で、当時は自炊してお弁当を持参したり、通勤は毎日往復で1時間歩いたりもしていました。手洗いうがいなどもするので熱を出すことは少なくあまり病気はせずにいられると思っていました。しかし腫瘍といった原因不明の病は避けられません。今は肝臓にも血管種の疑いがあります。年を取ると腫瘍はできます。他にも原因不明の病気は存在しますし、それらにかかる確率は加齢で高まっていくのを実感しています。健康に気を付けるのは大切ですが、防げない病気もたくさんあるのでそこは運だなと思いつつあります。
検査が怖い
腫瘍が4cmと大きいので、悪性か診断するために細胞診を行うことになりました。甲状腺に針を刺し内部の組織をとって検査します。「首に針!?」と怖かったですし「刺している間は唾液を飲み込んではいけない」というルールにも緊張しまくりました。それほど痛みや苦しみがあるものではないのに怯えていたので、「怖い」と話せる相手がいると随分楽になるかと思います。口に出すことで落ち着く現象はカタルシス効果と言うそうです。
それまでは注射や採血が苦手だったのですが、この経験後は「腕ぐらいならどうぞ」と肝が据わるようになりました。
待つ期間が長い
細胞診の予約を取れるのが2〜3ヶ月後だったか、随分先で気を揉みました。甲状腺の病気はがんであったとしても進行が遅く、予後も良好な病という特性もあってか、ペースがのんびりです。間が空きすぎて、なんと当日には腫瘍が1cmにまで小さくなっていました。何も治療をせずに小さくなることはあまりないようなのですが、よくわかりません。
検査をしたら結果が出るまでにも待ちがあります。このときは細胞診の結果と腫瘍が小さくなったことを踏まえて、経過観察で良いという結論にはなりました。悪性の疑いが強い場合は追加の検査があり検査結果の待ちがあったことでしょう。手術が必要であったとしても予約を取れるのは半年ほど先のようです。病は長い期間をかけて向き合うものだと感じました。
近くに専門病院があるありがたさ
「そんなに待つ病院大丈夫…?」「転院した方が良いのでは?」と思うかもしれませんが、全国から患者が集まる有名な専門病院のため信じて通い続けています。その後の経過観察は半年に1度行い、しばらくしても悪化傾向がなかったため年1回になりました。予約ができず待ち時間も非常に長いため有休を取らないといけないのですが、手術数は日本一多く、治療設備も整っています。そんな病院が通える範囲にあるのはありがたいです。
よく「田舎は病院がなくて困る」といった言説を聞くものの、「よほど小さな離島や集落を除けばあるのでは?」と思っていました。病の解像度が高くなった今は「田舎は(特定の病気を専門で診てくれる)病院がなくて(弱った心身で遠くまで何度も通わなくてはいけないので)困る」なのかなと思います。
健康とは病気 or 元気の2つではない
それほど病気をしたことがないと、健康とは100%元気か風邪などで0%にダウンしているかの2つのイメージでした。検査待ちや検査結果待ちで不安を抱える状態も70%ぐらいで健やかではないなと思います。今は単純に圧迫感で息苦しくて地味につらいです。
入院・手術に対しても「その期間だけ働けず元気がない」というイメージでいましたが、手術には合併症のリスクがあり、甲状腺であれば甲状腺機能の低下、声のかすれ、首のツッパリ感、肩こりなどがあるようです。手術して終わりとは限りません。甲状腺を残せず、すべて摘出した場合は生涯に渡る服薬が必要になります。
現代医療は発達しているので、治せない病気は少ないと思っていました。声がかすれても、服薬が必要でも、命に関わる病気を排除しているので治療としては成功なのかもしれません。治療とは100%元気いっぱい元通りにすることではなく、より大きなリスクを排除し、許容できる小さなリスクを選択する過程なんだと感じました。
定期検診をちゃんとする
なぜか1cmにまで縮まった腫瘍は、その後何年も悪さをすることはありませんでした。ホルモン値は少しだけ正常範囲を外れるものの治療は不要な範囲です。その後いったい何年通ったでしょう。特に異常はなく年1回の通院を続けていました。しかし直近、コロナ禍で混雑した病院に行きたくなかったこと、最後にいつ行ったか忘れてしまったこと、転職直後で有休が限られていたことで3年ほど行っていませんでした。
期限切れになる特別休暇を使って、ちょうど良いからと経過観察に行ったところトップ画像の結果が出ました。
結果と現状をまとめると次のとおりです。
サイログロブリンという値が977ng/mlと高い異常値を出した
基準値は33.7ng/ml以下で、1000ng/ml以上あると濾胞がん(甲状腺がんのうちの1つ)の可能性が有意に高まる
良性でも高い値が出る場合があるため、良性か悪性かの判断はできない
しこりが2cmに大きくなっており圧迫感がある
3ヶ月後に再検診をする
しこりが倍ほど大きくなったのは、いつなんでしょうか。3年サボっていたため、3年かけて大きくなったかもしれないし、ここ数ヶ月での変化かもしれません。後者の場合は悪性を疑います。今後は次の通院の予定をスケジュールに入れて、忘れないようにしたいと思います。あと転職する方は転職前の有休消化期間などで病院に行ってしまった方が良さそうです。
それにしても977って…ほぼ1000じゃん。
病気がわからないこともある
腫瘍と書いてきましたが、実は腫瘍かどうかもわかっていません。囊胞かもしれないし、腺腫様甲状腺腫(腫瘍状の腫れ)かもしれません。それぞれ異なる病気ですが、対処が同じなのもあってか特に病名を言われていません。その他の病気でも医師は「腫れてますね」「炎症を起こしてますね」など現象の説明をすることが多く、病名を言わない傾向がある気がしています。理由があるのでしょうか。
3ヶ月後の再検診でサイログロブリンの高値がたまたまなのか判別されると思います。しこりの大きさが3cm~4cm以上になっていたり、エコーで見た特徴が濾胞性(そういう形状の種類があるらしい)であったりすれば、悪性を疑い手術をすすめられる可能性があります。要否は総合的に見て判断がされるようです。良性か悪性かは手術後に病理検査をしないとわかりません。甲状腺がんにもいくつか種類があり手術しなくても95%診断できるものもあるそうですが、取って見ないとわからないタイプは不便ですね。
体験談助かる!!
同じ病気・似た病気の体験談があるとめちゃくちゃ助かります!!アメブロやnoteなどをたくさん見ました。有名な専門病院なので甲状腺で探せば見つかります。「入院のときに持っていくとよかったもの」とか神ですね。お金がいくらぐらいかかったとかも助かります。入院・手術をしたら高額医療費が適用されると思いますが、「毎月検査で8,000円かかる…」のような絶妙なしんどさへの心構えができますw このnoteも誰かの役に立ったら良いな。
情報を正しく理解するよう努める
「サイログロブリン値が1000ng/ml以上なら、46%が甲状腺濾胞癌」という情報を見ました。「977ng/mlの自分はほぼ半分の確率でがんだ」と思いました。しかしよくよく研究ソースを見ると、手術した症例をデータとしているため、安全とみなされ手術不要な症例は母数に含まれていなさそうでした。「血中サイログロブリン」「血清サイログロブリン」と似たものもあったりして、気をつけないと誤解した数字に飲み込まれてしまいます。医療の知識がないため正しく理解するのは難しいですが、冷静に捉えるよう努める必要がありそうです。
家族がいないと困る
手術の可能性があるので調べて見ると、入院・手術全般でほぼ確実に病院から連帯保証人や身元引受人を求められるそうです。これらは同じ人でもよく、入院費用の支払いや緊急時の連絡対応、不幸にして死亡した際の遺体の引き取りなどを保証するものだそうです。手術前の説明への同席、手術立ち会い、退院時の付き添いを行うのも定番のようです。
これは困りました。地元から東京に出て一人暮らしをして自立してきましたが、麻酔で意識がない間の判断や死んでしまった後のことは自分ではできないのです。頼れる親がいないため姉に頼むしかないのですが、仕事や家庭もある中で長期間・あるいは何度も遠方から呼ぶのは難易度があります。はじめて、配偶者がいればよかったと思いました。
「結婚しないと老後や病気のときに大変」とよく聞くものの、「面倒を見てもらうために結婚するのはなぁ…」と思っていました。しかし現実的に手続き上、困るのです。そして手術中のいざというときの連絡(たとえば出血が多いので輸血して良いか・思ったより状態が悪く追加の施術をして良いかなど)の対応を任せられる相手がいるのは、安心した人生だろうと感じます。特に手術前の説明は本人の頭が真っ白になってしまい、全く覚えていないパターンもあるようです。体も心も弱っているときに一人で大事な決断をするのは大変で、家族の支えが大事という意味を理解しました。
同性の友達が欲しい
甲状腺疾患は女性に多い病気です。性別によってかかりやすい病気に違いがあるため、病気をしやすい年齢になってきた今、同性との情報交換の価値がぐんぐん上がってきました。肝血管腫も女性に多い病気だそうです。他にも婦人科系の病気など同性でないと話せない話題もあります。おすすめの病院や検査・治療の体験談を聞けるとめちゃくちゃ安心します!
親に健康診断やがん検診を受けさせた方がいい
親を健康にした方がいいという話はありつつ、ここでは自分の健康のためです。親がかかる病気は、遺伝性であれば自分もかかる可能性があります。そして年齢が上である親は、先に病を発症する可能性が高いはずです。専業主婦の健康診断の未受診率は高いそうで、ちゃんと受けさせて結果を把握しておいた方が良いと思いました。遺伝的リスクを把握しておけば病気の知識をつけておけますし、紛らわしい病気と区別しやすく発覚が早くなります。健康診断時にオプションをつけて気をつけることもできます。問診票で家族の既往歴を聞かれる重要性を理解しました。
まとめ
「結局どうなったんだ」と気になるかもしれませんが、再検査までわからないのでここでまとめです。
必ずなんらかの病気にはかかる。
安心のために検査を受ける。スケジュールに入れるなど、忘れないように具体策を講じる。
耐えられるように情報を集め、人と関わり、メンタルを保つ。
こうした記録は「手術して助かりました」といったタイミングで出すものかと思いつつ、途中こそがリアルだと思い公開してみました。命に関わる可能性は低いですし、のんびり構えていきます。年齢も年齢なので、みなさんと健康トークしていけると嬉しいです。