見出し画像

雪風ルーフに突然脳を焼かれた男の叫び(2)


ごきげんよう、WIREDです。待たせたな!(cv大塚明夫)


前回、反骨精神全力全開で衝動のままに特撮絡みの記事を叩きつけたので、メインが東方だと忘れてた人も多かっただろう。実は僕東方のヲタクだったんですよ!!知ってましたか!!!


さて以前、僕と雪風ルーフとの出会いについて長々と語らせてもらったが、なんと恐ろしいことにこの怪文書はまだ続くのである。


前回のライブレポに気を取られて何のことかわからない痴呆、もしくは純粋にはじめましての諸君は、これを読む前にこちらの記事を読んでいただきたい。

今回は上の記事で紹介した「雪ルらしさ・雪ルの魅力」を下敷きに、ハートに深々と突き刺さった曲についてつらつらと書いていこうと思う。


先に言おう。前回と違ってだいぶ真面目な話になっている、多分。


そもそもどこで曲を聴くか



紹介に入るその前に、サークル・楽曲布教をする上で必ずぶち当たる壁がある。




「……いや、どこで曲聴けばええんや」


そう、まず聴ける媒体から紹介しないといけないのである。


ぶっちゃけ雪ルに限らずこの手のサークルにおいて、外部委託をしてない(or終わっている)のと、音源は絶版したらそのまま再販しないというのが殆どなので、音源の入手は基本即売会現地じゃないと不可能である。そこの君、中古とか考えても口にするんじゃないぞ。

実際のところ雪ルもそんな感じなのだが、幸いなことにメロンブックスでDL版が3作だけ置いてある。

https://www.melonbooks.co.jp/circle/index.php?circle_id=20304&srsltid=AfmBOoqk-dFkrprnZXLgllmT52vpFKXiQBUezN2iKE10zGtqdOH-4NHx


初期衝動むき出しの記念すべき一作目「SOUND OF THE BLOOD」
ゲドウ氏の性癖全開の「ブラックサイド」
バラエティ豊かかつ洗練された「黄昏とプラチナ」


とそれぞれ違った趣があって良い作品なので、雪ル入門としてはうってつけである。オススメ。


それ以外で聴く手段として、Youtube、ニコニコ、SoundCloudにそれぞれ公式チャンネルがあるので、限定的ではあるがそこから摂取していただきたい。絶版した音源も断片的ながら入っているのが強みである。


事実、僕自身Youtubeチャンネルで本格的に脳をやられた人間なので、とりあえず触れてみたいという人はここから聴いてみてほしい。


……さて、ちょっと長めの前置きが終わったので、ここからは僕の好きな(かつ語れる)曲の話をしていこう。とはいえシングル込みだとそこまで種類持ってないので、そこはご容赦オナシャス!



夜に向かう黄昏

(原曲:フラワリングナイト、月時計~ルナ・ダイアル)

(該当曲は01:57辺りから)

改めて12th 「黄昏とプラチナ」から。旧譜の大半が委託終了か絶版になっている中、このアルバムはDL版がメロンブックスに残っているため比較的入手がしやすい。そのためこのアルバムは、(入手難易度的に)初心者向けのアルバムといえる。


さて、この曲を語るにおいて、まず”この曲に至るまで”の話をしなければならない。


孤独の悲哀を感情たっぷりに歌い上げるスローナンバー『雪と花』、届かぬ明日みらいへの憧憬を感傷的に描く『イザナギオブジェクト』、跳ねるようなピアノがダンサブルながらもシックな雰囲気を漂わせる『ブルーステップ』と、Tr.02~04は比較的落ち着いた印象の曲が続いていた。どれも雪ルらしい素晴らしいアレンジだ。



──しかしTr.05である『夜に向かう黄昏の登場によって、この3曲は言ってしまえば、「この曲に至るまでの壮大な前フリ」だと知ることになる。


Tr.02~04でノスタルジアな音の波に揺られ頭エモエモのエモになったリスナーは、突如ニトロを点火し急発進した豪速球のごときイントロを鼓膜に叩きつけられる。


11分35秒に渡る長いクラウチングスタートを終え、待たせたなと言わんばかりに豪快かつクールに搔き鳴らされる爆音は、まさに真打登場。この流れに僕は脳をバッキバキに焼かれた。アツい。アツすぎる。


そう、この曲の魅力はズバリ、とんでもないレベルの疾走感と爽やかさである。


始まったら最後、ハイテンポのままイントロからアウトロまで駆け抜ける。
前3曲の反動もあり、一度たりともテンポダウンせずに猛スピードで爆走し続けるのだ。




そんな勢い全振りのサウンドとは裏腹に、歌詞世界は雪ルらしく叙情的なものなのだからまた面白い。


この曲全体を覆うのは、咲夜の従者メイドとしての「使命」と、“大切な人”としての「想い」とのジレンマ。

己の中の主(=レミリア)を守るため、主の心を曇らされないようにするため、そんな「想い」のために彼女は「使命」として主の瞳に映るものを人知れず消していく。

タイトルにもある「黄昏」は、どちらにもなりきれない咲夜のアンビバレントな心を端的に表した秀逸な表現だろう。




そんな切ない歌詞を耽美で流麗なメロにぶつけると、凄まじい化学反応が起こる。

特にフラワリングナイトのお馴染みのフレーズに乗せ、森氏特有のセクシーな低音で語りかけるように滔々と歌いあげるサビは、ハイテンポな楽器隊の疾走感とセンチメンタルなボーカルが相まって、シリアスな題材でありながら突き抜けた爽やかさを感じるのだ。



救いのない咲夜の運命も、この爽やかな風を受けてどこか救済されたような気がしてならない。

この猛烈なカタルシスを味わうために、是非ともアルバム通しという形で聴いてもらいたい一曲だ。

(ちなみに、この曲ライブでやったら骨折れるまで拳上げるのでやってくださいお願いします)


世界

(原曲:人恋し神様~Romantic Fall)

(該当曲はスタートから)

13th「君恋し深秋」から。今作は風神録メインのコンセプトアルバムとなっており、幻想郷の秋を彩るエモーショナルな楽曲が軒を連ねる意欲作である(『星降る夜』のライブverも入ってるしマジでオススメです)。


この『世界』はそんなアルバムの一曲目。リスナーに猛烈な衝撃インパクトを与える初撃であると共に、本アルバムのイントロダクションとしてこのアルバム全体の世界観を即座に体感させられるナンバーとなっている。



この曲関しては、イントロ部分というか、始まり方の話をただひたすらさせて欲しい。
いやホント、どうしようもなく好きで、もう本ッッ当に素晴らしいのだ(語彙力)。



静かなアルペジオから曲は始まり、ギター、ベース、ドラムと徐々に徐々に音が積み重なっていく。

その重なりはリスナーの期待を生み、そうして盛り上がっていくのかと思った束の間、イントロは急に息を潜める。

静かにベースの低音のみが鳴り響く中、一気にドラムが駆け上がり、急上昇したテンションのまま『人恋し神様』のあのメロに乗せて伸びやかなボーカルが響き渡るAメロに突入する。



──いや、なんと美しいことか……!!

それはまるで、目の前に満開の紅葉景色が現れたかのよう。

鮮やかで、雄大で、美しくどこか懐かしい。そんなどこまでも広がる秋の景色に、思わず息を呑むのだ。


メインのメロに入る直前のタメは原曲通りだが、こうも印象的になるのかと驚いたが、そんな「エモい音作り」が雪ルの専売特許なので納得である。いや流石というべきか。


この“焦らし”が本当にズルいのである。
焦らしからの爆発が、鮮烈な印象を刻み込む。

そこから森氏が「秋の黎明には~」と入っていくのが本当に気持ちよく、どう足掻いても心を鷲掴みにされるのだ。


このイントロで、リスナーの心はノスタルジー溢れる幻想世界に取り込まれる。

そこからはアルバムの最後まで心揺さぶられ続けるので、もう戻れない。
この曲から、そんな世界に浸ってみてはどうだろうか。

(ちなみに、この曲ライブでやったらエグい揺れ方するのでやってくださいお願いします)


エソテリック

(原曲:魔界地方都市エソテリア)



……いやまたかよ!!!!!!!!!!!!



落ち着け。落ち着け頼むからブラウザバックしないでくれあと石も投げないでくれ。


ご存じの通り、僕を雪ル沼に突き落とし戻れなくしてしまった元凶とも言える曲なのだが、あくまで前回語ったのはファーストインプレッションの部分だけだった。

今回はここから更に突き詰めて、もっと深い部分の「ここすき」ポイントを語っていこう。


そもそも本楽曲が収録されている4th album「絶対零度の証明」は、森氏が「自他共に認める最高傑作」と自ら太鼓判を押す傑作アルバムであり、そのタイトル通り雪ルらしいドライさ、儚さをこれでもかと詰め込んだ逸品となっている。

そんな本アルバムの中でも一際凍り付くような殺気を秘めたアレンジがこの『エソテリック』だ。


まず注目したいのが、この曲を取り巻く歌詞。
ひたすらに叙情的な表現で綴られるのは、「失った大切なものを探し続ける」という、平たく言ってしまえば非常にシンプルなもの。


だがしかしこれは東方アレンジ。オリジナルの楽曲と決定的に違うのは、原曲とそれに付随するキャラという"文脈"が乗っかってくること。


この曲の原曲の持ち主である寅丸星のパブリックイメージとして、「失くした宝塔をいつも探している」という4割誇張表現みたいなものがあるが、この曲ではその部分にフォーカスを当てるどころか痛いほど徹底的に描いている。

そして、「誰が」「何を」といった具体的な部分をわざと廃することで、概念としての寅丸星を演出すると共に、失くしたものの重さやそれに対する心の動き、空虚感を逆説的に強調している。



「寅丸星」をあえて削ぎ落とすことで、鮮烈に寅丸星が浮かび上がるのだ。



彼女が失くしたものは宝塔という形をもつ物体の枠を超え、寅丸自身のプライド、アイデンティティーといった、「目に見えない大切なもの」を託しているとさえ思えてならない。


さて、そろそろこの曲の最大のキモともいえる部分について語ろう。


この曲の主題は、「失ったものを探し続ける」と言った。


──ではそれは、果たして見つかったのだろうか?

それが分かるのは、この曲のラスト部分である。

闇雲に走り出す
消えそうな声を抱き
輝きは日常に溶け出して
白く…

激しいラスサビの後、曲の流れはAメロのそれに巻き戻る。

そしてここからどう続くのかというと、


突然、そこで曲は終わる。



終わってしまうのだ。
思いっきり感情を爆発させ、そのまま駆け抜けるかと思いきや、再びスタート地点に戻され、そこから進むことを許されないままスン……とフェードアウトする。

それは激しく揺れ動いていた心電図が、突然止まってしまったかのように。

限界まで張りつめた糸が、突如として断ち切られたかのように。


全ては振り出しに戻り、そのまま突き放される。



──そう、彼女は永遠に探し続けるのだ。
失くした大切なものを。



嗚呼、どうしようもなく無情で空虚なのに、なぜこんなにも儚く美しく感じるのだろうか。


それはこの霞がかった、"エソテリックな"世界に、文字通り心を囚われてしまったからではないだろうか。


行き止まりの日々に迷い込んだのは、僕らなんじゃないだろうか。




この曲はこうして衝撃的な後味を残し終わるのだが、あまりにもそれが美しすぎてスッと受け入れられてしまう。


これからも、僕らは囚われ続けるのだろう。

(ちなみに、この曲ライブでやったらイントロのギターで心臓止まるのでやってくださいお願いします)


総括


何度も言っているが、雪ルのアレンジは叙情的で美しく、そして何よりカッコいい。


ポップで無邪気な部分もある世界観やキャラの心を、切なくドライに演出・表現し、それでいて遊び心も忘れない。

バンドアレンジの面白さとカッコよさをわかりやすく体現し、かつ唯一無二の世界観を構築しているのが雪ルだと思う。


アグレッシブに活動していたのが10年前とかいうレベルなので今は静かなものの、昨年数年ぶりにライブし、紅楼夢でデモ音源とはいえ新譜を出してくれたので、僕はハッキリ言ってこれからの活動に大いに期待している。


まだまだ新曲聴きたいし、あわよくばこれまでデモで出した分全部かき集めてアルバム作ったりして欲しい。特にエンドロール(言うだけタダ)

そして何よりライブは言わずもがなである。雪ルのライブを生で見るまで死ねないとさえ思っている。いや本気である。

最前で爆音浴びたいし、周りの雪ル初見の観客たちが理解わからせられるのを見てニヤニヤしたいのである。ただのエゴ?それでいいだろ文句あっか!


とにかく、今からでも遅くない、聴くべきサークルなのだ。


皆で聴こう、雪風ルーフ。

いいなと思ったら応援しよう!