「ヒキ」の正体
パチンコパチスロを打つ人であれば一度は口にしたことであろう「ヒキ」。
一般的な概念に直すと「運の良さ」というものになるんでしょうか。
ただ、パチンコパチスロにおけるヒキと一般的な運の良さというものは似て非なるものだと思います。
それはパチンコパチスロに限って例えても異なると言っていいでしょう。
例えば「適当に座った台が設定6だった」。
これは「運が良かった」と言うんじゃないでしょうか。
一方で、「座った台でプレミアフラグを2回引いた」。
これは「ヒキがいい」と言うと思います。
別の言い方をするなら「アームで壊した」とかとも言いますかね。
この例えは打つ人なら分かると思います。
この違いは遊技の最中の結果かどうかによる、という風に大別できるんじゃないでしょうか。
「適当に座ったら設定6だった」「道端で500円拾った」「卵の黄身が2個だった」…これらは「運が良かった」。
「プレミアフラグを引いた」「ボーナスを連打した」「オスイチ決めた」…これらは「ヒキがよかった」。
どうでしょう、違和感ないんじゃないでしょうか。
上記の事象を並べてみたときに、ヒキという概念を除いて考えるとすべて「運が良い」という考え方にまとまりそうな気がします。
が、ほんとうにそうでしょうか?
「設定6だった」と「プレミアを引いた」は両方とも同じように「運が良かった」から起きたことなのでしょうか?
そんなパチンカースロッターにひたすらついて回るヒキの正体を確率の面から暴いてみます。
ヒキの正体を考える
パチスロの仕組み
例としてミリオンゴッドを考えてみましょう。
義務教育で習っているはずなのでみなさんご存知かと思いますが、ミリオンゴッドにはGOD揃いという1/8192で成立するプレミアフラグが存在します。
パチスロの仕組みというのは65536個存在するフラグのうち、レバーオンで1個を選び出してその内容をもとにリールの停止位置が決定されたり、演出が表示されたり、出玉が出たり出なかったりします。
65536個のうち8個がGOD揃いのフラグということになります。
65536を8192で割ると8ですからね。
物理的に例えると65536枚のくじの中にGODと書いてあるくじが8枚入ってるイメージです。
60円払って、くじを1枚引いて中を見てGODと書いてなかったらくじを戻してまた60円払って引いて…という繰り返しでGODを引くまでがんばるわけです。
実際にはリプレイと書いてあるくじを引いたらもう一回タダで引けたりするわけですが、ここではGODだけを考えます。ややこしいので。
確率という存在
この65536個という個数、母数があるということがキモです。
例えば道端で500円を拾う、という事象には母数がありません。
もしかするとこの世界を作った上位の存在がいて、道端に500円を落とすイベントをある一定の確率で作っているのかもしれませんが、まぁそんなことはたぶんないと思います。たぶんね。
一方でパチスロのできごとには必ず母数が存在します。すべて明確な確率の下での事象です。
GODが1/8192で引けるというのは母数が存在するがゆえのことというわけです。
確率を計算してみる
500円玉を道端で拾う確率は、と言われてもおそらく計算はできません。
こういうのをさまざまな仮説から想定するフェルミ推定というものがあるらしいですが…なにそれおいしいの?
では、1/8192を8192Gで引ける確率はいくつでしょうか。
正解は63.21%です。
倍の16384G回すと86.47%、32768G回すことで98.17%になります。
99.99%ともなるとその試行回数は75447Gにも及びます。
GODをほぼ確実に引こうと思うと75447Gを要するということになります。
逆に言えばです。
最初の1GでGODを引いたとしても、そこから75446Gの間GODを引かなければ1回GODを引く99.99%の確率の中におさまるわけです。
では、GODを99.99%の確率で3回引くのに必要な試行回数はいくつになると思いますか?
正解は約110500Gです。
1回引くのが75447Gだったことを考えると、思ったより少なく感じませんか?
20万G回すと、約99.97%の確率でGODを10回引くことができます。
このように、引く回数が増えていくに従ってほぼ確実にそれを引き切るための試行回数の増え幅は小さくなっていきます。
確率っておもしろいですよね。
実際に打つとしたら?
では、この20万GでGODを10回引くことがほぼできるという前提に立ってこれを実際の例に当てはめてみます。
1日5000G、ミリオンゴッドを打つとしましょう。
GOD揃いには設定差がないので、いつ打っても同じです。
20万G回すためには40日かかります。
とびとびにでも40日の間、5000Gミリオンゴッドを打ったとして、34日はGODを引かなかったとします。
残りの6日のうち、3日は1回ずつGODを引きました。
残りの3日のうち、2日は2回ずつGODを引きました。
残りの1日は3回GODを引きました。
こう考えると、GODを2回や3回引いている日は特別に「ヒキがよかった」と思うんじゃないでしょうか。
ただ、40日間のトータルで見れば99.97%、つまりほぼ確実に起きることが起きているだけになります。
40日間5000G回したにしてはGOD少なくない…?って思う方もいると思います。
実際、これは現実的にはすこし少ないと思います。
この辺は統計学における正規分布の考え方を当てはめるとなぜ現実的には少ないのかということが分かるのですが…それ書き出すと本題からそれすぎるし難しいので置いておきます。私も説明できるほど理解してないし。
単純に81920Gで10回にすると1/8192となるように思えますが、1/8192を81920Gで10回引く確率は54.21%となります。
この程度でも50%を超える確率で発生するということになります。
キリ良く80000Gとした場合、10回GODを引く確率は51.24%となり、1日5000Gなら16日となります。
16日の中で、半分の8日はGODを引けなかったとしても、残りの8日の間で1回以上はGODを引く、という現象が50%以上の確率で起きるわけです。
週4日ホールに行って、そのたびに5000G回して、ある週は毎日GOD引いてたら「今週はヒキがいいな」とか「エンペラータイム入ったな」とか思いますよね。
でも1ヶ月に直したらそれは50%を超える確率で発生しうる事象にすぎないわけです。
同じことをやってる人が2人いたら、どっちかは起きちゃうくらいのことなのです。
さらに引く回数が増えれば増えるほど、試行回数の伸び幅は小さくなっていきます。
つまり、回数を重ねれば重ねるほどその確率は収束していく、ということになります。
個人的な話ですが、ハーデスと凱旋がまだホールにあった頃、私はよくハーデスでGODを引いていました。それも数千円で複数回とか引いてました。
「ハーデスは友達、凱旋は敵」なんて私はよく言うんですが、同じ確率のGODをだけを見たらハーデスで引いてる分、凱旋では引けなくてまぁ当然といえば当然だったんですね。それでも凱旋は敵ですけどね。
正体
この収束の過程で発生するブレ幅こそがヒキの正体です。
このブレがとある点に大きく集中したときがヒキがいいタイミング、というわけです。
極端につまらない言い方をしてしまうと、ヒキというものは存在しないということになります。
と、このようにヒキの存在を丸裸にしてみたわけですが…いちパチスロファンとしてはこうやって見ると少しさみしい感じもします。
つまるところヒキというのは確率の中で生じるブレなのですが、これはある特定の機種を長く打てば打つほど存在しなくなるもの(単一に設定された確率のみにクローズアップして、それが収束していくという考え)であるという見方もできます。
ビギナーズラックという言葉がありますが、これはまだ収束するほど回していない機種で確率のブレをたまたま引いたこと、というふうに考えられます。
これこそが我々の考える本当のヒキではないでしょうか。
友達とてきとうに立ち回った日や、なんとなく打ってみた台くらいはヒキで勝負したいですよね。
その日の勝った負けたでやいやいするのもパチンコパチスロの楽しみの一つだと思います。
余談
5号機バーサスを打っていたときに私はよく「バーサスは320G付近がゾーンだから」とか言っていたのですが、実はこれ完全に適当なこと言ってるわけではないんです。
設定1と2のボーナス合算確率を平均すると約1/168.5となり、おおよそ0.6%の確率になります。
1/168.5を85%の確率で引けるG数というのが実は316Gなのです。
現実的に最も使われている設定帯において約320Gくらい回せば85%以上の確率で当たるので、ハマってもこの辺で当たる確率はかなり高いんですね。
ちなみに390Gほど回せば90%に届くので、大半は400G以内に当たります。
10%で当たるのは18Gなので、18G以内に当たるのと400G以上ハマるのは大体同じくらいの確率なんですね。
連チャンとハマりは表裏一体です。