見出し画像

【MTG】アルケミーを傍観する

アルケミーとは

マジック:ザ・ギャザリングには様々な遊び方(フォーマット)が存在します。スタンダード、パイオニア、モダン、パウパー、統率者戦など。昨年デジタル専用フォーマットとして生まれたアルケミーもその1つです。
このアルケミー、発表当初から賛否両論の嵐が吹き荒れました。主にスタンダードとリミテッドをプレイする私は強い否定派の1人で、MTG Arenaでアルケミーの構築戦をプレイしたことは多分1回もありません。そういった傍観者の立場から、アルケミーに対して思うところを書いていきます。

評価点

高い調整自由度

アルケミーはスタンダードのカードセットに少し修正・追加を行うという形式のフォーマットです。デジタル専用であり、個別のカードの上方修正・下方修正を随時行うことで自由度の高いバランス調整を行うことが可能です。アルケミー専用の追加カードセットもあり、スタンダードよりも広いカードプールで遊べます。

カード禁止以外の環境制御

調整頻度を上げたいという背景には、MTG Arenaの登場などによってスタンダードのメタゲーム解明速度が爆速になってしまったという問題があります。最強デッキがすぐに解明されてしまうといった場合に、既存カードの調整や対策カードの投入を速やかにできるというメリットがあるのです。そもそも事後調整が要るような不完全な環境を作るなという話もありますが、カードの強さやプレイヤーの動向を完全に予想するのは今でも難しいのでしょう。

新たなアーキタイプの創出

また、強すぎるカードの下方修正とは逆に、不遇なアーキタイプのカードを上方修正するということも行われています。ダンジョンやパーティーなどといった、構築でさっぱり使われなかったシステムのファンにとっては朗報です。

こういった概要だけを見ると良い環境のように思えますが、私のように強い拒否反応を示す人が多くいるのには当然ワケがあります。

問題点

投入時期の問題

アルケミーが発表されたのは昨年のことで、「イゼット天啓」が圧倒的にスタンダードを支配していた時期でした。巷で禁止カードの議論が行われている最中、開発陣からのメッセージは「デジタルでバランス調整するよ!」というメッセージだったのです。さらに「スタンダードはそのままプレイしてていいからね!」という言葉付き。
「いや、現状の面白くないスタンダードをまず何とかしろや」というのはすべてのスタンダードプレイヤーが思うところだったのではないでしょうか。「これからの本流はデジタルで、紙はゆくゆく廃止の方向へ向かう」という予感すらありました。幸いにも、アルケミーの不調によってこれは杞憂に終わりそうですが。

スタンダードセットへの悪影響

従来のスタンダードセットは、3ヶ月おきに年4回リリースされるのが普通でした。しかしアルケミー元年の昨年度は、前半の発売ペースが少し早まり、空いた後半の空間にアルケミー専用セットの「アルケミーホライゾン:バルダーズゲート」が入るという日程となりました。
この影響を最も受けたのは昨年度前半に出た「イニストラード」の2セットです。当初の予定では1セットだけのはずが、急遽2セットに分割されたという舞台裏が明かされています。2つ目のセットである「真紅の契り」はリミテッドが非常につまらないことで有名であり、バランス調整をする暇が全然なかったようです。
また、スタンダードプレイヤーにとっては「ニューカペナ」から「団結のドミナリア」までの期間がとても長く空きました。その期間はアルケミーかパイオニアに誘導するというのが狙いだったようですが、果たしてプレイヤーたちはそうしたのでしょうか。
今年度は昨年度と同じようなリリーススケジュールのようですが、来年度は第2セットの「The Lost Caverns of Ixalan」が冬発売予定となっているので、もしかするとスケジュールが元に戻るのかもしれません。冬発売なら年をまたぐので本来発表されないはずの製品という気もします。邪推すると、土壇場で今年同様の秋発売から冬発売に移動した可能性もありそうです。

新規カードのデザイン

定期的に新規カードが追加されるのですが、デジタル専用機能を使うというしばりがあるせいか、無駄に複雑な挙動をするカードが多いように思います。とくにヤバいのが「呪文書」「専門化」です。デジタルということで誤魔化されていますが、これらの能力を持つカードは1枚でカード5~15枚分もの情報量を持ちます。カジュアル向けカードならまだわかりますが、開発陣はアルケミーを競技フォーマットの1つと位置付けています。常人には理解できない複雑なカードを使いこなしてこそのプロプレイヤーというメッセージでしょうか。
紙の統率者レジェンズをもとにデザインされたアルケミーホライゾンにはさらなる問題があります。イラストやカード名がほぼ紙と同じなのにテキストが全く異なるカードがいっぱいあるのです。アルケミーをプレイすることにより、紙で統率者戦などをプレイするときにカードテキストを間違える悪影響が出るということです。「プレイしなくてもよい」から「プレイしてはいけない」という領域に入りつつあります。

ヒストリックへの悪影響

アルケミーで調整されたカードは、同じデジタル専用フォーマットであるヒストリックでも同じ調整を受けます。スタンダードで問題があるということで調整されたカードが、もっと広いカードプールで遊べるヒストリックでも同じ調整を受けるのはなぜなのか。先述の新規カードが流れ込んできたことと合わせて、ヒストリックの環境も荒れたことと思います。
この問題が引き金になったのかはわかりませんが、パイオニアの部分的実装である「エクスプローラー」が後にMTG Arenaへ搭載されました。こちらは紙と同じテキストのカードだけが使用できます。

リソースの問題

当たり前ですが開発陣が使えるリソースは有限です。フォーマットや追加するカードの枚数が増えるほど、1フォーマットや1枚あたりにかけるリソースは減っていきます。すでに去年からスタンダードの禁止カードが出て、開発陣のバランス調整能力が疑問視されている昨今です。さらなる粗製乱造を危ぶむのは自然なことでしょう。
また、プロが集まる大きな大会の数も有限です。プロによるスタンダードのメタゲーム解明を楽しみにしていたところに、謎のアルケミーが差し込まれてしまうと、大会自体に興味がなくなってしまいます。

宣伝部長オーコ

MTG Arenaでアルケミーが始まった当初、トップメニュー画面で大部分を占めるバナーでは、あのオーコがアルケミーのイメージキャラクターを務めていました。何故よりにもよって、近年のマジックのバランス調整失敗の象徴であり、史上初の4階級禁止(スタン、パイオニア、モダン、レガシー)をくらい、マジック史上最も嫌われたキャラクターの1人である彼なのか。誰か開発陣の中に止める人はいなかったのでしょうか。
ちょっと深読みをすると、当初の予定ではオーコがすぐに帰ってくるはずだった可能性もあります。来年発売のセット「Wilds of Eldraine」は、もともと「アルケミーホライゾン」の位置に収まっていたのが、何らかの都合で移動させられたのではないでしょうか。

まとめ:Arenaの未来

こうしている間にも、アルケミー用最新セットの「団結のドミナリア:アルケミー」がリリースされつつあります。デアリガズやスライムフットといった旧知のキャラクターがデジタルでしか実装されなくて悲しいです。
新しいフォーマットができて、面白くて盛り上がるというのなら大歓迎なのですが、アルケミーは様々な要因によりそうなっていません。MTG Arenaというアプリ自体は非常に好きなので、もっとプレイヤーをうまく納得させられる盛り上げ方を模索してほしいところです。


いいなと思ったら応援しよう!