物語る私 #恒例の動物園
じろさんと私の12月の恒例行事。
それは、とある動物園に行くこと。
もともと冬の動物園が好きで、
冬になると散歩ついでに一番近い動物園にひとりふらっと通っていた。
じろさんもどうやら同じようなことをしていたらしい。
じろさんと出会ってすぐの頃、私は少し男の人に警戒している頃だったこともあり、仲良くしてくれるじろさんにもツンケンしていた。
動物園に誘ってくれたこともあったが「ひとりでいく。それかよっぽど大好きな人とでないと行けない」なんてなかなかひどいセリフを返したりしていた。
私たちの距離が縮まったのは、自分の輪郭を取り戻すまで、じろさんが辛抱強く仲良くしてくれたからだなあと思う。
今年その動物園に行くと、なんだか少しいつもと雰囲気が違った。
好きだったキリンの吉田は姿が見えず、床暖房の上で押しくらまんじゅうしていたハイラックスもどうやら亡くなったようでポツンとひとり。
少し寂しく思いながら、いつもの冬より暖かく子供連れの多い園内をのんびりまわった。なんども聞いているはずの私の得意げな生き物解説をふんふん言いながら聞いてくれるじろさん。
動物園の後は、繁華街まで散歩して「おもて」という飲み屋へ。
ここも必ず通るコースで、大将にはとてもお世話になっている。
カウンターのみの小さなお店だけれど、毎回東京だとか遠路はるばる訪ねてくる常連さんが必ずいる。
料理の美味しさはもちろん、大将の人柄とアルバイトの子の感じの良さ、お酒と会話、過ごす時間は常ににこにこ。
一年ぶりに料理の美味しさに唸りながらおしゃべりしたが、大将は可愛い柴犬を飼って夜の飲み歩きが減り、アルバイトの子は春からの進路が決まっていた。
去年訪れた時、奥さんと死別している大将はもう店を閉めようかと言うことを話していた。
もしかすると店はないかもしれない覚悟で店まで来たが、可愛い柴犬キューちゃんを家族に迎えた大将は「まだまだキューちゃんのために頑張らなきゃと」にこやかに包丁を握っていて、おかげで今回もひとつ楽しい夜が過ごせた。
キューちゃんの写真を見ながらあーだこーだおしゃべりして、透明のお酒が進みすぎないうちに私たちは店をあとにした。
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<物語る私>
妻。紀伊の国出身。三姉妹の長女。最近の趣味は、アルゼンチン音楽手帖で紹介されている音楽を端から聴くこと、shufoo!アプリでスーパーのチラシチェック、漫画アプリ徘徊。スタジオの日が近づかないとベースを練習しないので怒られる。得意料理はナスの揚げ浸しとゴーヤチャンプル。新しい職場で奮闘中。喜怒哀楽がおおげさ。ペンギンマニア。
<じろさん>
夫。東海地方出身。3人兄弟の末っ子。最近の趣味はジャズギターレッスン、フリマアプリでエフェクターチェック、ハライチとかオードリーのラジオ。本人曰くフィジカルが大事なので毎日無窮動などでギター練習してる。得意料理はローストビーフ。現在うつ病と戦闘中で、慣らし復職中だったが再休職が決まった。研究職。いつもニコニコ優しい。音楽に対しては評価が厳しい。ラッコが好き。私より2歳年下なのでたまに敬語。
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