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マスタリングイコライザー テクニック

割引あり

Introの最後でQについて触れましたが、
もう少し詳しく話をしていきたいと思います。

パスフィルター

低音域をカットするハイパスフィルターと、高音域をカットするローパスフィルターがあります。
ん?低音をカットするのですから、ローカットフィルターと呼ぶべき???
と思うでしょうか?
厳密には、低域をカットしつつ高域を通過させるのでハイパスフィルターと呼ばれます。 逆に、高域をカットしつつ低域を通過させるのがローパスフィルターです。

シェルビング

フィルターと同じようで違います。
シェルビングは、音域全体をブースト又はカットしたり、高音域全体をブースト又はカットします。

フィルターとシェルビングの違い

これらは、どう周波数領域に影響を与えたいかによって決まります。
シェルビングでは、「通過させる」意図はないので、単純にある周波数帯から先の例えば、50Hzから下をブーストするのかカットするのか、というだけです。
そのため、ざっくりとカットしてもその周波数から下が完全になくなることはありません。軽減されるだけです。もちろん-10dBとかカットすればほとんど存在感はないと思いますが厳密には完全にカットはしていません。
フィルターは、カットしてその周波数から上(又は下)を通過させるということになります。
カットするカーブによっては、緩やかにかっとされたり、例えばBrickwallのようなカーブであればバシっとカットされます。

ピーキング(ベル)カーブ

Frequencyで指定した周波数を中心にカット又はブーストします。
Qの幅、GAINの量で調整し、 Qは数字が小さくなるほど広く、大きくなるほど狭くなります。

特定の周波数を狭い範囲で「外科的に」使用することも出来ます。

Baxandall Curve


バクサンダル・カーブというのがあります。

Baxadallはシェルビングに含まれていることが多いですが、通常のシェルビングと違う点は、緩やかに上昇し続けることです。(又はカットする場合は逆です)
図のようにグリーンのカーブは標準的なシェルフ。
ブルーがBaxandall。パープルの部分が上昇分になります。
「標準的な」シェルフよりも耳の欲求を満たすことが多いです。

Pultec

Pultecは、1959年初頭に設立されたものの、現在は存在していないPulse Techniques社のブランド名です。
Pultecイコライザーは、そのアナログ電子機器の歪み特性をエミュレートし、その独特なカーブを再現するいくつかのハードウェアやプラグインで復活しています。

周波数特性は、ブーストとカットの両方を組み合わせることで得られます。
これは、同一のブーストとカットがキャンセルされるのではなく、フィルターの
レスポンスを特殊な方法で変形させているということです。

Pultecのモデリング搭載 Bettermaker EQ232P MKII

例えば、これはBettermaker 232p MKII のユーザーズマニュアルを参照していますが、20 Hzで7のブーストと2のアッテネーション(オレンジ)と20 Hzで7のブーストと5のアッテネーション(赤)の図とのことですが、


赤い曲線では、まるで魔法のように、低域と中域の間に新たなディップが発生しています。
しかし、実際にはカットオフ周波数がブースト周波数から100Hzにずらして意図的に設定されているためです。
そのため、まったく同じ量の低域のブーストとカットでは、低音域のレスポンスはフラットになりますが、ローミッドレンジにディップが生じます。
これは、2つのコントロールだけで3バンドのエフェクト効果を得られるという、
とても効率的ですね。

ちなみにBettermaker 232P MKIIは、実機とプラグインがあります。
プラグインバージョンも比較的使いやすく良いですが、聴き比べると
明らかに実機の方が暖かみがあり、レスポンスも良いです。

周波数のポイントを探す

さて、問題の周波数を見つけるための古典的なアプローチは、まず、広めのQで
大きくブーストしてスイープしながら探していき、最終的に必要な量に調整していくということです。
多くのマスタリングエンジニアは、経験的におおよその周波数に達するのが早いですが、細かいポイントを探すのには古典的なアプローチが1番良いように思います。

相互関係を忘れない

1つのEQが他に必ず影響があることを忘れてはいけないです。
例えば、私はエアーバンドは割と好きなのですが、高域をシェルビングで上げた場合、低音や中低域が薄く感じられ、その逆も同じです。
80Hz付近で低音をブーストするとヴォーカルの帯域にも影響があります。

こういった相互関係を考慮して、同時に演奏している他の楽器への影響が最も少ない周波数を選んだり、逆に相互作用を利用して対照的な領域での調整をしたりします。

この先は有料パートになります。
ここまでの内容からより掘り下げて、マスタリングでのイコライザーテクニックを
もう少し具体的に解説していきます。
昨日今日で降って沸いてきた技術ではなく、これまでに培ってきた内容ですので、
すみませんが、有料とさせていただきます。

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