これは面白い書評! 「中国経済の謎 なぜバブルは崩壊しないのか」
ツィッターワールドを週末の朝から探索していたら、面白いツィートを発見。
倉本さんの書評ツィートが興味深い。
中国経済が崩壊しない謎について。
なかなか、いやかなり面白い。
https://x.com/keizokuramoto/status/1758611277239459878?s=20
『中国じゃ誰も住まないゴーストタウンを大量建設しては爆破とかまでしててあんな経済がなぜ破綻しないのか?と過去10年世界中の謎だった訳だが、海外経済誌のエコノミストがまとめたこの本は凄い明快かつ網羅的な名著だった。一言で言えば『想像以上にメチャクチャな経済』と『想像以上に剛腕な当局』の組み合わせでゴリ押ししまくってここまで来たという感じ。 「株価の暴落が問題?」→「強権で市場を一時止めればいい」 「資本の海外逃避が問題?」→「規制して国外に出ないようにすればいい」 「企業の過剰設備が問題?」→「政府の命令でバンバン古い会社を潰せばいい」 ざっくりいうとこんな感じ(笑) 本のオビに「今最も優れた資本主義経済の担い手は中国共産党である」ってあるけど…(そういう単純な内容の本ではないが一面の真理は捉えている) たしかに短期的には上手く行ってる部分もあるというか、自由主義経済体制なら大問題になるような数々のムチャクチャな状況を「超剛腕」で無理やり軟着陸させ続けてきた優秀なトップ層の力量は物凄いものがあると思った。”暴れ馬”を無理やり乗りこなしまくっている。 ただ問題は、こういう解決を繰り返すほど、さらに「もっと強い権力を国が握る」ことが必要になり、経済だけでなく民生や思想面での締付けも厳しくしていかざるを得ず、それが経済全体のダイナミズムを失わせていく事が不可避なことなんですよね。 笑っちゃったのが、欧米で「サプライサイド経済改革」っていうと市場のチカラで選別して次に伸ばすべき分野に自然とお金が集まり成長するメカニズムの事を意味するわけだけど、中国におけるサプライサイド改革というのは、国が「お前の会社は無駄だから潰せ」って言って潰しまくり、そこで生まれた失業者を今度はあふれるほどの公共事業をやって吸収しちゃうことらしい(笑) そんな「お手盛り」をやってたらどんどん「国が全部コントロール」しないとすぐ破綻しちゃう依存症みたいになっていくはずですが、まさにそういう感じだから恐ろしい。 よく言われているような、
「今はボスの習近平がバカだから、せっかく育った経済を壊しちゃうような強権発動しちゃってるんで、彼をやめさせさえすればまた自由な経済が戻ってきてすぐに良くなるんでは?」 …というのは”甘すぎる期待”なのではないかという感じがしたのがこの本を読んだ最大の学びかもしれません。 なぜなら、中国経済の過去の流れの中に「国の強権がないと成り立たないような無理」が内包されすぎていて、ただただ経済を回しているだけで、今日より明日、明日より明後日に向けてもっと「国の権力を強化しないと破綻しちゃう」みたいな恐ろしい”不可避的な構造”がある感じなんですよね。 まさにヤク中の人がもっと強いクスリを!ってなって不可避にエスカレートしていってしまうメカニズムに近い感じがしました。 ・ ただし、これだけ強固な国の主導によって昨今の先端分野における中国の強烈な技術革新が起きていることは間違いなく、筆者も欧米(や日本)はイノベーションにおいて「国」が大きな役割を果たせる事を忘れていたのではないか?という指摘はしています。そこは学ぶべき点としてある。 日本も遅ればせながら半導体関連などで「国がやるべきこと」はちゃんとやる流れになってるのはとても良いと思います。 ただ中国の場合、昔の大躍進時代とかに毛沢東の思いつきとかで「とにかく鉄を作れ」って言って無意味に鉄を作りまくって粗鋼生産量は数字上伸びたけどこれどーすんの?…ってなってたようなああいう歪んだ上意下達の止められないサイクルと、「ある意味全く同じメカニズム」でその「先端分野への巨額投資」も駆動してる感じなのは恐ろしいところがあります。 大躍進時代の国のトップより今の中国のトップ層は圧倒的に賢いし情勢が見えているとは思うが、それでもコレどーすんんの?ねえ、これどーすんの?という色んな実態が本の中には詳細に書かれていて頭を抱えました。 「あまりに無茶苦茶過ぎる」部分と、「逆にここは確かに超凄い」と思う部分が混在する中国経済について、隅々とかなり定量的な分析をもとに書かれている名著でした。おすすめです。(リプ欄にアマゾンリンク貼っておきます) 日本はこういう「強権」を使わずに、ただし国主導で技術開発すべき部分では躊躇なくお金を使いつつ、自分たちの持つ美点を自由主義経済とシンクロさせていく方法を学んでいかないといけないですね。 昨今の半導体関連の攻めの投資はそういう学びを得られていると思いますし、あとは「強権を必要とせずとも最適連携できる」という形をなんとか見つけていきましょう。』
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