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【ジェフリー・A・ハーシュ】【アノマリー投資を読んで】



ジェフリー・A・ハーシュの『アノマリー投資』を読んだので軽くまとめたい。


『過去を遠くまで振り返ることができるほど、未来を遠くまで見通せる』


名言:ウィンストン・チャーチルの名言の引用からまえがきは始まる。
『過去を遠くまで振り返ることができるほど、未来を遠くまで見通せる』と書いたらしい。なかなか歴史好きのやまえつとしてはいい表現だと思う。
株式市場の歴史から得られる教訓は貴重だ。昔から続くパターンを調べると、未来のトレンドが明らかになる。
時の試練に耐えてきた市場パターンをどう利用するかが、本書には明らかにされている。楽しみな書物である。
過去を思い出せない人は、同じことを繰り返すばかりなのだから!!



上げ潮は全てのボートを持ち上げる


この格言は大好きな格言だ。なんとも
有頂天な気分になっているとき、全知全能の神のような気分になっているときに思い返したい格言である。えてして、もうかっているときh、神のような気分になるものだ。逆に引き潮ではすべてのボートが落ちてしまうことを常に感じ、戒めたいところだ。良い時こそ賢明なる投資家たるもの慢心せずにいこう。



歴史俯瞰:過去の強気トレンドと弱気トレンド

SECULAR:長期トレンド  CYCLICAL:シクリカル
長期トレンドは長く、普通は10年は続く。
シクリカルは10年も続かず、普通は5年以下である。
20世紀で最長のシクリカルは1990年10月~1998年7月までの8年間だった。

強気相場の長期トレンドは8~20年続き、新高値後に安値を切り上げる動きが長期にわたって続き繰り返されるとき、強気相場のトレンド入りとする。
弱気相場は重要な新高値をつけることが出来ない。

2013年時点

強気トレンド期間:
①1986~1906年
②1921~1929年
③1949~1966年
④1982~2000年

弱気トレンド期間:
①1906~1921年
②1929~1949年
③1966~1982年
④2000~2013年現在進行刊行当時


一般的に、強気の長期上昇トレンド期間における特徴は、短く力強さに欠ける下降サイクルと長く力強い上昇サイクルが見られることだ。
逆に、弱気の長期下降サイクル期間には、弱くつかの間の上昇サイクルと長引く下降サイクルが現れる。この下降サイクルでは、厳しく手に負えない急落やダマしの戻り、全面安、底での無残なトレードが満ち溢れ一般投資家の株への関心も薄くなる。

全ての弱気の長期トレンド期間に現れているのは大戦である。1906~1921年(第一次世界大戦)、1929~1949(第二次世界大戦)、1966~1982(ベトナム戦争)。また、逆に新たな強気の長期トレンド期間に入るのはいつも戦争が終わり、戦後のインフレが始まってからだった。また、全ての強気の長期トレンド期間においては、革新的な技術や文化の変容など、パラダイムシフト大きな変化が起きていた。
①1896年までには東海岸と西海岸は鉄道でつながれ商業・貿易・人々の流れはかつてなく激しくなった。
②狂乱の1920年代には映画業界がトーキーの出現で世界中に影響を与え、リンドバーグが飛行機で大西洋を横断し、中流階級は自動車の普及で解き放たれた。
③第二次世界大戦後の強気相場では大量消費が当たり前になり、ベビーブームが起きて人口が爆発的に増えた。そしてアメリカは欧州と日本の債券を助け、宇宙計画と無数の産業技術の革新が経済成長に拍車をかけてテレビが世界中の人々を繋いだ。
④情報化社会の到来は1980年代1990年代の超強気相場の原動力となった。パソコン、長距離通信、インターネットは個人や社会の能力を高めて自由にした。



戦争と平和


株式市場で唯一、最も永続的な影響を及ぼすものは戦争である。過去2世紀の間、戦争と平和やインフレの影響は、活況と低迷の循環を生み出す原動力であった。戦時にはレンジ相場を生み出し、戦後、平時には相場を上昇させる要素は何か?それは、答えはインフレである。戦争は国庫を空にする。国内の心配事や経済よりも、外国や戦争にかかわる問題に焦点をあわせる。結果として、物価の持続的上昇、インフレが起きる。経済が落ち着きを取り戻して、政府が国内問題に再び焦点をあわせたときに、はじめて株式市場は新高値まで上昇するのだ。

アメリカが戦争に関わっているときにダウ平均が高値を維持したことは一度もなかった。1973年、2007年に前の高値をほんのちょっとだけ更新した。だが、その値動きは短くて持続しなかった。


ダウ平均とインフレと戦争は無視できない強い相関がある。
①第一次世界大戦、②第二次世界大戦、③ベトナム戦争、④テロとの戦いによるボックス圏はどれも次のステージへの発射台に見える。
①第一次世界大戦インフレ110%に続く1920年代株価504%上昇。
②第二次世界大戦のインフレ74%に続く戦後の株価は523%上昇。
③ベトナム戦争と石油禁輸によるスタグフレーションによる200%以上のインフレとそれ以降の超強気相場は全ての投資家への警告であると同時に希望を語りかけてくれる歴史物語である。歴史は繰り返す。
④テロとの戦いが収束するとともに、ダウは力強く上昇するであろう。


大統領選挙の周期が相場に与える影響


権力の座にとどまるために、いかにして景気をあやつるか。
大統領選挙は、4年に一回である。戦争、不況、弱気相場は大統領の任期の前半に起きるか始まり、繁栄の時期と強気相場は後半に起きる傾向がある。
最大の上昇は就任後2年間の弱気相場の後の3年目に現れやすい。

1833年アンドリュー・ジャクソン以降の44政権のデータ
1年目(大統領選挙の翌年):86.1% この年は累計上昇が最小!!
2年目(中間選挙の年)  :187.0% 
3年目(大統領選挙の前年):489.5% この年が累計上昇が最大!!
4年目(大統領選挙の年) :254.5% 

大統領選挙の成功の裏にあからさまな景気の操作がある。裏があるのだ。
現職大統領は、政権を維持する義務がある。ありとあらゆる手段で、大統領選挙の前年から当年に向けて景気を上向かせるのだ。その結果、ツケをはらうために大統領選挙の翌年症候群と言われる状況がうまれる。

1年目:大統領選挙年

大統領選挙年:一人当たり可処分所得を増やし、投票権を持つ市民へ幸福感を植え付けようと意図した景気刺激策には、財政赤字、政府支出、社会保障給付の増額、政府借入金の金利引き下げ、以下の財政支援の前倒しが行われる。
①政府支出 大統領選挙年はその他の年と比較して平均29%も多い。
②社会保障給付 投票日の8週前の9月に実施されることが多く、引き上げ幅は大統領選挙年は、中間選挙の倍である。
③実質可処分所得 アイゼンハワー以外の全ての大統領選挙の年に、可処分所得の上昇が速まる実績。
①②③の動きは明らかに偶然ではなく、4年に一度の大統領選挙の年の周期制が現れやすい要因の一つとなっている。


2年目:大統領選挙の翌年

大統領選挙の翌年・・ツケを払う年。最悪の年。

大統領選挙の翌年・・・1929,1937,1957,1969,1973,1977,1981に大きくて悲惨な下落相場は始まった。
大統領選挙の翌年・・・南北戦争は1861、第一次世界大戦は1917年、第二次世界大戦は1941年、ベトナム戦争は1965年に始まった。

3年目:中間選挙の年

中間選挙の年・・底値拾いの機会。
アメリカの中間選挙では、大統領の所属政党が必ず議席を減らす。

4年目:大統領選挙の前年

1939年以外は、大統領選挙の前年はダウ平均が下がった年はない。どの政権も力の及ぶ限り景気のテコ入れをして有権者の支持を得ようとするのが普通だからだ。


大統領選挙の年の傾向


政権与党が政権を連続して維持できた17回の平均はダウは年率15.3%上昇していたが、維持できず政権を追い出された11回の平均はダウは年率4.4%下落していた。現職大統領が人気がある時には、相場は早くから上昇する傾向がある、無情にも、現職大統領が不人気の時は、政権交代が決まった時から11,12月は大きく上昇する。


超重要:大統領選挙の翌年の天井から中間選挙の年の底値までは、1913年以降は平均して年20.9%も下げている!中間選挙の年の安値から大統領選挙の前年の天井までははダウ平均は1914年以降、平均して年50%近く上げている。



季節性 株を買う絶好の季節

昔は農業が株価を動かす大きな要因だったので、8月は相場にとって最高の季節だったが今では最悪の季節の一つになっている。
最高の6か月戦略:1950年以降のダウ平均は、11月 12月 1月 3月 4月が良い。これに2月を加えると見事な半年のトレード戦略が出来上がる。
この6か月で62年間で14654.27ドル上げた。37年は上昇、25年は下落している。残る5月から10月までを見ると、1654.97ドル下げている。48年で上昇し14年で下落している。時代とともに変わっていくので多少前後に調整が必要だ。


3月6月9月12月、第三金曜日は、魔女の集会だ。ドクロマークをつける。
オプションの満期日だから注意が必要だ。魔女の集会の第三金曜日の週は強く、翌週は以前よりも弱気になる。特に弱気相場の時には劇的に下げる。魔女の集会の第三金曜日の週下げると翌週も下げる傾向がある。これは面白い傾向だ。第二四半期と第三四半期は相対的に弱い傾向がある。

第二四半期:最悪の期
1991年以降の第三金曜日の週は上昇12回、下落が9回。その翌週は悲惨で下落が19回、上昇はわずか2回のみ。
当該週に上昇した12回のうち翌週も上昇したのは1回のみ。
当該週に下落した9回のうち翌週にも下落したのは8回もあった。

第三四半期:あまり良くないが第二四半期よりはまし
1991年以降の第三金曜日の週は上昇13回、下落が8回。その翌週は下落が多くて16回、上昇は5回のみ。
当該週に上昇した13回のうち翌週も上昇したのは4回のみ。
当該週に下落した8回のうち翌週にも下落したのは多くなんと7回もあった。

第一四半期:かなり良い。
1991年以降の第三金曜日の週は上昇15回、下落が7回。
その翌週は下落が13回、上昇は9回。
当該週に上昇した15回のうち翌週も上昇したのは6回。
当該週に下落した7回のうち翌週にも下落したのは4回。

第四四半期:最も良い。
1991年以降の第三金曜日の週は上昇16回、下落が5回。
その翌週は下落が6回、上昇は15回。
当該週に上昇した16回のうち翌週も上昇したのは12回。
当該週に下落した5回のうち翌週にも下落したのは2回。


結論:第三金曜日の週は、1年の最高の月にあたる12月と3月に強く、6月と9月はあまり期待出来ない。第三金曜日の翌週は、12月を除いて避けるのが賢明だ。該当週が上昇したからと翌週も上昇するとは期待できない。該当週に下落すると翌週も下落する習性がある。



8月・9月・10月に上昇の種を蒔く

1950年以降の19回の弱気相場のうち11回で8~10月で底打ちしている。1982年以降の8回の弱気相場のうち6回は8~10月に底打ち。他の月よりも大幅に割安になりやすいこの時期は、持ち株を買い増す絶好のチャンス。

8月:大統領選挙の翌年の8月は典型的な8月となり、下落をもたらす。中間選挙の年の8月は、他の月もこの年は悪いので平均的なパフォーマンスとなる。大統領選挙の前年の8月はまずまずの上昇をし、さらに大統領選挙の年の8月はずっと良い。
9月:最悪の月と呼ばれている。大統領選挙の翌年の9月は大幅に下げがちである。中間選挙の年の9月は、投資家は痛い目にあわされた。大統領選挙の前年の9月は概して強いが9月は弱い。大統領選挙の年の9月は良い。
10月:しばしばウォール街に恐怖を。1929年と1987年の大暴落など。
ベアキラー下落相場の終わり呼んでもかまわない実績。
第二次世界大戦後の12回の下落相場は(1946.1957.1960.1952.1966.1974.1987.1990.1998.2001.2002.2011)
は10月に終わった。 種を蒔くのに好都合な時期。


11月・12月・1月 満足の冬。最良、堅調。

しかし、この3か月に上昇しなければ、それは用心した方が良いという警告だ。
エジソン・グールド『季節的に相場が上昇すべき時期に上昇しなければ、ほかの影響の方が強いということであり、その季節が過ぎたら他の影響力の方が強いということであり、その季節が過ぎたら他の影響がいよいよ強まるという合図である』

12月:楽しみなサンタクロースラリー。しかし、サンタクロースが現れずに年末下落した方が重要だ。『サンタクロースが訪れなければ、金融市場に弱気相場が訪れる』という警告だからだ。これは翌年の弱気相場の底値を先行して教えてくれているということだ。
1月:年始は注目されるがその後弱気に傾くが、月半ばごろには401K資金が入り息を吹き返す。
1月最初の5日間の早期警戒システム。
年末5日+年始2日のサンタクロースラリーが訪れないときは警戒といったが、年始5日も重要だ。1950年以降年始5日上昇した39年のうち33年は年間で上昇。84.6%の精度。5日下落した23年はそのうち11年が年間で上昇、下落は12年で半々だ。



■19戦19勝。戦後、19回のアメリカ中間選挙後 半年間は、なんと19戦19勝

圧倒的なテクニックと破壊的なパンチ力を備えた あの最強チャンピオンのような戦績ですなっ!!


■過去90年間、米国大統領任期の中間選挙後S&P500リターンは見通し明るい


米大統領選挙の周期年別(11月~翌年11月)でのS&P500リターン。 通常、2年目のリターンが最も悪く、3年目が最も良い結果となっている。 2020/11起算で初年度を2021年度と見做すと、2年目の2022年度は確かに酷いリターンだったと言える。

過去90年間、米大統領中間選挙後の S&P500リターン中央値は同年末迄で+3%、中間選挙後12ヶ月間で+17%。 アノマリーによれば、2022年の中間選挙後の株価見通しも明るい…はずだ。 Fed利上げによる影響も吸収しての株価高騰に期待大だ。



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