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美容室の魔術

「年間約15万円」。何の数字だと思いますか?

実はこれ、私が美容室にかけている金額です。

おそらく大半の方は「高っ?!」と思うのではないでしょうか。実際、全国理美容製造者協会(美容メーカーによる協会)が全国の女性を対象に2020年実施した調査でも、年間10万円以上は全体のわずか10%で、最も多いのは年間2万円以下。私ほどかけている人は少数派ですし、私自身も数年前まで「美容室に2万も3万もかけるなんて、どうせ髪は伸びてくるのに!」と思っていました。

それでも私は今、これだけ髪にお金も時間もかけるようになって良かったと思っています。むしろ、毎日のご機嫌を考えたら、安いくらい。自信をつけて街を歩き気分を上げるには、決して高くない投資だと思うのです。

だって今日の私、美容室帰りで無敵だもの。

ほら、髪がツヤツヤ。サラサラ。巻いてもらって動きのあるスタイルも、華やかだしいいじゃない。街の窓ガラスに、鏡に自分が映るたびに、笑顔が溢れて気分が上がってしまう。

そんな魔法が、自分の持ち物素材である「髪」で手に入るんだよ? 最強じゃない?

そう、今日はこの予約のために朝から新幹線に乗って、帰省していた大阪の実家から東京に戻ってきたのです。そして今、施術後の最強パワータイムで、このnoteを書いています。

・・・

「今日は、カラー、トリートメント、メンテナンスカットですね」

サロンのセット面に案内されると、ほどなくして担当美容師さんがやってきて挨拶し、今日のメニューを確認してくれました。

「お願いします。今日、ちょっと毛先がきしんで乾燥してると思うんですよ。1週間実家に帰省してたんですけど、シャンプー・トリートメントがいつもと違ってサロン専売品ではなかったのと、ドライヤーも変わったので」
「なるほど。確かにちょっときしみ出てますね。バッチリ、今日トリートメントで素髪感取り戻しちゃいましょう」
「デトックス(シリコンや水道水に含まれる銅イオンなど髪と頭皮に付着している汚れを取り除くケア)も入れてましたよね」
「あ、はい。選択してもらってますね! バッチリもちもち髪にしましょう」

まずは髪の状態と、今の悩み・気になることを共有し、重視したいポイントをお伝え。今回はトリートメントが最優先です。

「あと、カラーなんですけど」
「うん、どうしましょうか。前回の色、どうでした?」
「評判よかったし、すごく気に入りました。退色してきた今の色も、染め直さなくていいってくらい気に入ってるんです。でも根元が伸びてきたのと、毛先があと2週間くらいで抜けきっちゃいそうだなと思ったので、全頭で」
「そうですよね。それがいいと思います。前回のバイオレット系、似合ってましたからね〜。今きれいに退色しているのも、バイオレットが黄みを抑えているからなんですよ」
「そうですよね」
「廣瀬さん、どんな色も合うからな。前回と同じでもいいし、でも少し変えるのもいいですよね」
「そう、それを相談したかったんです。もしちょっと変えるとしたら、どんな色がいいですかね……?」

色は自分で希望を伝えることもあれば、美容師さんにおすすめしてもらうこともあります。これまでは「友人の結婚式で着る着物に合わせてオレンジブラウンに」「冬のうちにカシスニュアンスの暖色に」「退色の金髪感が気にならないようにバイオレット系に」とある程度の希望を伝えることが多かったのですが、今回は思い切って美容師さんお任せにしてみることに。結果、前回に近いバイオレットブラウンで、バイオレットの色みをもう少し強めることになりました。

「カットは、メンテナンスなのでちょっと毛量と長さ調整して、あと前髪って感じですかね」
「はい、それでお願いします」

カウンセリング終了。ここから、施術に入ります。

・・・

シャンプー台ではお湯とマッサージの気持ちよさにうつらうつらし……。

カラー剤を髪に塗布しているときは帰省の話や、今日のサロンスタッフには緑の服の人が多い話から、最近はファッションでも緑がトレンドになりつつあって、ヘアカラーもマット系が人気が出ている話をおしゃべり。

カラーの放置中は右手にスマホでTwitter、左手にサロンが貸し出してくれるiPadで雑誌をチェック。女性向けファッション誌でもこれだけの数があるのか、この雑誌はこんな誌面デザインなんだな、などなど。全部は読みきれなくても、ざっと目を通すだけで発見になる時間です。

その後シャンプー台でカラー剤を洗い流してトリートメント(また眠りそうになった)し、セット面に戻ってドライ。美容室でドライヤーをかけてもらってるときって、頭なでなで、いい子いい子してもらってるみたいで、うふふってなります。あの髪の揺らし方、自宅でやろうとしてもなかなか自分の手だと思った通りに再現できないんだよなあ。

最後に仕上げのカットと軽くアイロンで巻いて終了です。

トータル約70分。

・・・

「色、どうですか?」

仕上げ後、美容師さんが確認してくれます。

「いいですね。色みが強くなったからか、印象が明るくなったというか、華やかになった気がします」
「明るい、明るさ大丈夫ですか? 一応トーンは前回と同じなんですけど、もし何かあったら言ってくださいね」

カラーは楽しみたいけれど、お堅い企業に取材することもあるから明るすぎるのは避けたいという希望を初回に伝えていたをしっかり覚えていて、確認してくださいました。

「それは全然大丈夫です!」
「そうですか。うん、本当に廣瀬さんはどの色も合いますね」

美容師さんのその言葉に「えへへ」となってしまう私。「そんなの、お世辞の営業トークだよ」という人もいるかもしれません。でも、それでいいんです。担当美容師さんだから褒めてくれている、それでいいの。その言葉をそれでも素直に受け取ってご機嫌になれば自信がつくし、本当にその髪色が似合うようになってくる。そうして「かわいい」は増していくんです。

「トリートメントも、しっかり入ってますね。ちょっと触ってみてください」
「うん、しっとりサラサラ。きれいにまとまってますよね。ちょっとのきしみとかパサつきって、本当ちょっとなのに地味に毎日ストレスで」
「そうですよね!」
「一度慣れちゃうと、トリートメントはもう外せないですよね」

そう、お金はかかる。だけど、毎日のちょっとのストレスが減る。そのちょっとが、私にとってはすごく大きいのです。

「あと前髪は、今くらいの長さがベストだと思います。もし伸びてきたときにメガネにかかって気になるとかあったら、軽く巻いてください。ふんわりカールの前髪も似合うと思うんで」
「はい、わかりました」

メンテナンスのポイントも教えてくださいました。今回は前回と同じスタイルだったので聞かなかったけれど、たとえば乾かすときのポイントや相性のいいスタイリング剤、巻き方なんかも、質問したら教えてもらえます。美容室ではたくさん相談してたくさん聞くのが吉です。

・・・

「いつも、ありがとうございます」

お会計を済ませると、表まで美容師さんが見送ってくださいます。

「じゃあ、また来月か再来月あたりに」

私はこの言葉に弱い。

気になる美容室も美容師さんもまだまだあるのに、ここに通っているのはいくつか理由があります。一つは、髪のため。継続して担当してもらうことで、髪の履歴(どんな施術をしてきたか)を分かった上で施術してくださるので、よりいい色、よりいいカットになります。それから、お気に入りのトリートメントを扱っていることも理由です。

だけど一番は、この見送られる時間が好きだから。「じゃあ、またね」と言ってもらえることが、うれしいから。

美容室で買っているのは、髪のビューティーだけではないんですよ。

・・・

今回は「デトックスケア・カラー・4stepトリートメント・メンテナンスカット」で合計20,000円でした。

美容室に通う頻度は2〜3カ月に一回。その時によってカットを全体カットにすることもあり、また半年に一回程度のペースでアウトバストリートメントとシャンプー・トリートメントを購入しているので、30,000円程度になることもあります。その結果、年間で美容室にかける金額が15万円になるのです。

私が通っているサロンは、平均より少し高めの価格設定かもしれません。地方やサロンによっては、同等のメニュー・クオリティでももう少し安く収まるところもあると思います。

だけど、仕事で美容師さんを取材すればするほど、この金額は全然高くない、むしろ安いくらいだと感じます。

カラーやトリートメント、パーマの薬剤知識。髪の理論はもちろん、カットの理論、色の理論、骨格や肌色に合わせる知識、髪のクセに合わせたカット技術、ファッション的センス。理系の頭と芸術の頭どちらも使う。さらにお客様とのコミュニケーション力、オーナーになれば経営や人材育成も。美容師さんって、本当に幅広い知識と経験と練習量がないとやっていけません。

すごいお仕事だよ。

それに、この2時間弱で手に入れられる気分の良さと自信、ストレスの軽減は、大きいです。

最近、「つー、垢抜けたよね」と言ってもらえることがあります。そう言われることが増えたの、実は仕事で美容系のメディアを担当するようになり、有名サロン巡りをしはじめてなんです。ほかにもメイクを変えたり、服のシワをなくしたり、いろんな場面で自信がついたりと変わったことはありますが、変化のスタートは美容室から。

きっと、ヘアケアにお金も時間もかけずズボラだった4年前の私より、今の私のほうが若々しいと思う。そう思えるから、「かわいい」とか「垢抜けた」とか褒められたときに、変に謙遜することなく素直に喜べるようになりました。

以前は髪を一枚めくると白髪が出てきて、ちょっと気分が下がっていたのが、今は気になりません。白髪が気にならなくなった理由がカラーなのかトリートメントで頭皮もケアされたからなのかは分からないですが、これってめちゃくちゃうれしい。

それから、毎朝髪が変にパサついたりきしんだりすることも減少。それだけで気分が明るくなります。

朝起きて鏡に立ったときに「まだ20代なのに、白髪あるわー。髪もバサバサだし、素敵女子には私はなれんな。っていうか疲れて見えるよね〜」から一日がはじまるのか。それとも「この髪色、肌に合うな〜! 今日も髪ツヤサラ! よし、今日も私、かわいい!」から毎日がはじまるのか。その違いの大きさ、想像するだけで感じてもらえるのではないでしょうか。

髪のケアにコストをかけるようになったことで、外見におどおどしないから、仕事の取材でも以前より余裕を持って構えられるようになりました。人と関わるいろんな可能性と心の余裕が開けたと思っています。今後、美容系メディアの担当を外れたとしても、もうこの髪への投資はやめられないんじゃないかな、私は。

生活の優先事項はあるので、どこまで髪にかけられるかは人によるでしょう。そういうときは、ぜひそのまま美容師さんに相談してみてください。予算の中でできることや、毎日のケアのちょっとしたポイントも教えてもらえると思いますよ。

美容室に通う。美容師さんに相談する。ちょっとだけ、髪への投資をしてみる。

毎日を彩るのに、とてもおすすめです。

あなたも、美容室の魔術にかかってみませんか?

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