【イベントレポート】パープルカフェ「”トラウマ・インフォームド・ケア”ってなに?」を開催しました!
“女性に対する暴力”に反対する人が話し考える「パープルカフェ」。
今年度はnoteで発信してきましたが、11月28日(土)に久しぶりにみなさんで集まって話し合うカフェを開きました!
実地で集まることは難しいので、オンライン会議システムzoomを利用しての初開催。京都市内を中心に全国からの参加がありました。
ゲストは、社会的困難女性を支援する人のためのウェブサイト「KYOTO SCOPE」を運営する産婦人科専門医で京都大学院博士課程の池田裕美枝さん。今回はイベントの模様をレポートします!
支援者が、「トラウマ」のレンズで接するということ
冒頭のミニトークでは、池田さんから「トラウマ・インフォームド・ケア」についてのレクチャーがありました。
池田さんは産婦人科医として勤務し多くの女性に接する中で、望まない妊娠と中絶を何度も繰り返す方や、近親者からの暴力を受け続けている方など、様々な困難を抱える女性に出会ったといいます。
しかし支援者が「状況が良くなって欲しい」と情報提供や声かけをしても、拒否や無視をされてしまう、反発や攻撃をされてしまう、結局同じことを繰り返されてしまうことも少なくないそうです。
「そういった経験から疲弊したり、やっていられない!と患者さんに対して距離を取ってしまう医療従事者やソーシャルワーカーも多いんです。また、その過程で支援者自身もトラウマを負ってしまうこともあります」(池田さん)
「トラウマ・インフォームド・ケア」とは、支援者からみて「理解ができない」患者の行動の裏には、患者自身のトラウマがあるのではないか、と想像する考え方です。
「例えば、入院中なのに無断で外出して帰ってこない人がいたとします。それは、病室の隣の部屋から子どもの声が聞こえてきて、子ども時代の深いトラウマを思い出してしまうからかもしれません。また、何度も中絶を繰り返してしまう患者さんが、過去の生育環境でネグレクトや性虐待、性被害の経験を持っているケースもあり、それがトラウマとして影響している可能性もあるんです」(池田さん)
トラウマや過去の「傷」は目に見えず、クライアント自身も助けを求めにくい。だからこそ、支援者がトラウマのレンズを持って対応することで、「なんでそんなことしたの!?」といった叱責ではない、「なにがあったの?」という問いかけができるようになる。それによって患者のトラウマが再受傷してしまうような不適切な対応が避けられる、と池田さんは言います。
支援者自身の疲弊やストレスを軽減し、最終的に患者さんへの必要な支援と回復へと繋げるために、この考え方は鍵になります。
支援者が孤立しないためのプラットフォームとして
「KYOTO SCOPE」は、“目の前のクライアントに何ができるのか?”を日々試行錯誤する支援者の参考となるよう、「トラウマ・インフォームド・ケア」の視点で「患者が抱える傷つき」に焦点を当てた様々な症例と対応例をわかりやすく掲載しています。
「モデルケースと対応」 https://kyoto-scope.com/case
「サイトを作るにあたり、医療現場で患者と接する医師、看護師、助産師、医療ソーシャルワーカーさんにインタビューを行いました。彼らの多くは、『トラウマ・インフォームド・ケア』という言葉は知らなくても、知らぬ間に実践しているんです。そのような蓄積を、対応に迷う他の支援者や、これから経験を積みたい支援者に公開して、活用してもらえるためのプラットフォームを目指しています」(池田さん)
池田さんは、「トラウマは回復を目指せるんです」とおっしゃいます。困難を抱える女性にとって医療機関が安全な環境であるために、ちゃんと「回復」を支援できる場所であるために、「トラウマ・インフォームド・ケア」の考え方はあります。
トークの最後には、支援者の心構えとして、心の平静を保つこと、トラウマの病歴を無理に引き出すのではなく良好な関係性を維持すること、支援者自身もセルフケアをすること、そして患者の回復力を信じることの大事さが語られました。
トークのあとは参加者同士で感想のシェア。普段対人援助に携わる方や、学生、若者支援に携わる方など、様々な立場の方が、トークの感想やそれぞれの場所で感じる日々のことを共有しました。
“ひと”をつなげ、広げる
「トラウマ・インフォームド・ケア」の考え方は決して医療従事者や支援者に限ったことだけではなく、日常で、職場で、“ひと”と接する全ての人が持っておきたい視点だと感じます。
「KYOTO SCOPE」は、事例の紹介だけでなく、地域の支援機関の紹介も充実しており、関心を持つ人同士で事例について話し合い学び合うオープンな場も開かれています。
まさに地域の“ひと”をつなげる試みです。ウィングス京都がパープルカフェで作りたい繋がりとすごく近い!と感じました。
このような試みが京都の街でじっくり、ゆっくり広がって欲しい、それを担っているのはまさにこの街の一人一人だな、と思えた時間でした。
▼▼「KYOTO SCOPE」のサイトはこちらから▼▼