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日常でのスマートグラス体験が色々と良かった話

エンジニアでかつ好奇心旺盛な身としては、世に出ているIT系のガジェットは気になります。市販品であれば実際に購入してみることもできますが、そうでない場合は体験会などで試すしかありません。そんな時にいつも思うのは、「時間や利用できるシーンが限定的なイベントの場じゃなくて、普段の生活で使ってみたらどんな感じかを知りたいんだよなあ」ということ。

そんな中、ランサーズ新しい働き方LABの「研究員制度」にて、渋谷Well-beingラボの実験チームの一員として、日本未発売のLenovo製スマートグラス Lenovo Glasses T1 をお借りして日常シーンで使ってみる機会を得ました。

この記事では、実際の所感を備忘録がわりにまとめておこうと思います。

結論から書きますと、想像していたよりも良かったです。
「コレはなかなか革新的なものではないか」
とすら思いました。


 Lenovo Glasses T1 というスマートグラス

さて、まずはこの「Lenovo Glasses T1」(以下T1)というスマートグラスがどんなものかに触れておきましょう。
スマートグラスと聞くと、目の前の現実空間の上にデジタルのキャラクターが配置されて見える「ポケモンGO」のようなAR(拡張現実)機能を持ったものを想像しがちかと思いますが、T1はそういったものではありません。

PCやタブレット、スマートフォンといったデバイスに接続すると、T1にそのデバイスの画面が表示されて見えます。つまり、「デバイスのサブスクリーン」といったものです。
以下はLenovo Glasses T1 を紹介した、LenovoのNews記事のスクリーンショットですが、このように自分の眼前にプライベートな画面が広がって見えます。

Lenovo Glasses T1 を紹介した、LenovoのNews記事のスクリーンショット

シンプルと言えばシンプルな機能ですし、見える内容も普段PCやスマホで見ているものと変わりはありません。ですが、そこがいいのです。

僕はこのT1という機器は『例えるなら、ラジカセ全盛期に出現したウォークマン』だな、と思いました。

ラジカセ → ウォークマンの図式が、スマホ → T1 で再燃するかも?

SONYが歩きながら音楽が聴ける再生デバイス「ウォークマン」を販売したのは1979年のこと。SONYのパーソナルオーディオ商品のあゆみには、その当時のことが以下のように書かれています。

録音機能なしでは売れないとの社内外の声に反して大ヒットとなり、新たなライフスタイルを創造した。

そう、録音機能などがついたラジカセやテープレコーダーなど、多機能性を重視した商品ばかりの時代に出現したウォークマンは、そのシンプルかつ気軽な携帯性とヘッドフォンによる「姿勢を問わないパーソナルな音楽体験」により、ライフスタイルの革新といえるまでのムーブメントを引き起こしたのです。

このラジカセとウォークマンの関係性、現在の僕らのスマホとT1の関係性と通じるものがありませんか?
もちろんスマホはラジカセなどと違いもともと携帯しているものです。しかし、年々スマホの機能は増え、重さや大きさは増し、価格も高くなり、重厚長大の道を進んでいます。それに、スマホを使うとき僕らは「下を向いて片手(時には両手)でそれを持つ」姿勢を強要されます。考えてみると、実はスマホは意外と不自由な面もあるのです。

対して、T1を使うと常に目の前に画面があるわけですから、姿勢は自由です。動画であれば再生ボタンを押したらスマホはポケットやバッグに入れておけば手ぶらでも視聴できます。実際に色々と試してみましたが、これが想像以上に良い。もしかしたら、僕らの日常的なデジタルコンテンツ消費/利用スタイルをガラッと変えてしまうかもしれないポテンシャルを感じました。

・・・と書いてもピンとこないかと思うので、ここからは実際に試したこと、そしてそこから僕が感じたことについて述べていきます。

実際に色々な場面でT1を試してみた

僕がスマホをそれなりの時間連続して使う用途は
 読書(Kindle)、動画、ゲーム
の3つが主なものです。
※SNSは短時間の利用を何度もする感じなので、今回は除外。

それぞれ試してみました。

●読書(Kindle)

普段はうつむいて手に持ったスマホで読む格好になるので、首が疲れてしまいます。寝転がって読む時も、スマホを片手で持ち上げるのも長時間になると意外と大変です(そのままウトウトとすると手からスマホが滑り落ちて顔面激突、なんてこともあります)。

しかし、T1をスマホに繋げて読むと、
 ・顔を真っ直ぐ前に向けて姿勢良く見れる。
 ・寝転がったり等、どんな姿勢でも手ぶらで読める。
ということでとても快適です!

さらに、「顔を上げて読める」ことを利用して、いろいろなシチュエーションでの読書が楽しめます。

青空をバックにして少し哲学的な本を読んだりすると、とても開放的な気分で思索が捗ります。

渋谷駅前の歩道橋で市街と空を眺めながら。
写真だとうまく撮れませんが、実際はちゃんとクリアに読めます。

電車に乗っている際も顔を上げて読書できるので、ドアや路線モニターも見える。普段のスマホ読書だと、本につい夢中になって乗り過ごしてしまったり、ドアの出入りの人の流れにぶつかったりしてしまったりもすますが、T1だとそういったこともありません。

ドア上の掲示板も人の流れも常に把握できる。

そして、夜に近所のコンビニ買い出しの際には歩きながらも試してみました。
「危なくないかな?」と思いながら恐る恐るやってみましたが、むしろ歩きスマホよりこっちの方がよっぽど安全でした。顔が前を向けるので、周囲の状況は把握できますし、少し顔の向きを変えれば真正面の状況もわかります。加えて、まるで日常空間に映画の字幕がついたような「非日常への小旅行」な感じがとてもワクワクしました。

実際こんな感じで見えます。
歩いてると画面が(当然ながら)揺れるので、文字は大きく拡大して手元でスワイプしながら進めます。こちらはSF小説「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の一節。

●動画

動画の際のメリットは読書(Kindle)と一緒ですね。やはり姿勢を問わずに試聴できるのはとても楽でした。YouTubeでは基本的な操作が画面のどこでも、あるいは画面左側・右側みたいに大雑把な形の操作で行えるため、手元をわざわざ見なくても操作には問題ありませんね。

●ゲーム

T1でゲームもやってみました。基本的にはスマホの画面が目の前にキレイに表示されます。真正面を向いたり好きな姿勢でプレイできるのは読書や動画と同じく良い。とはいえ、やはり画面内のボタンなど「決められた位置を押す」という操作は手元が見えないとやりにくいですね。
また、横持ちプレイするゲームの場合はシネマティックに見えて良い反面、スマホを直接見てプレイする際に比べ全体把握感が薄れる(左右の端辺りが視界ギリギリ)印象でした。

具体例を挙げると、モンスターストライク(以下モンスト)は縦長かつ引っ張り操作は画面内どこでもできるので、結構プレイしやすかったですね。

とはいえ、クリア後の画面は何度も特定の位置を押さないと進めない上、タップした場所が画面を見るだけでわからないため、慣れていないと操作は大変そうです。
※ホーム画面では,タップした場所にキラキラエフェクトが出るので助けにはなるものの、その分ボタンも画面周辺にたくさん配置されてるのでスムーズに押しにくい印象。

T1を試してみた所感

以下のように色々なメリットや可能性を感じることができました。
端的に言えば、「前を向ける」というメリットが想像以上に大きいということに気づいた、というところですね。

●肉体的、物理的なメリット

想像はしていましたが、「下を向かずに前を向いてコンテンツが視聴できる」というメリットがとても大きいと感じました。

まずは身体の疲労面。
 ・首や肩が疲れない。
 ・どんな姿勢でもOK。
 ・一定の重量はあるスマホを常に持たずに済む。

そして、安全性の面。
 ・寝転がっての利用時もスマホ落下など無し。
 ・移動時の視野も広くなる
  (周辺視野が常にあるだけでかなり安全)

●メンタル面でのメリット

さらに、メンタル的な面。
 ・前を見て、開けた視野で使える開放感。
  (これが想像以上に心地よい)
 ・「他者」をより感じやすくなる。
  (社会の中で生きている、という実感が増す)

特に後者が大きいな、と思いました。これだけだとちょっとピンと来ない方も多い方と思いますので、松岡 正剛著『空海の夢』から一部引用させて頂きます。

(人類の進化過程について述べている一節より)
おおむね意識の発生は直立二足歩行に起因する。
[中略]
眼高が高くなったことは両眼視を可能にした。両眼は顔の前部に平行に並び、近くのものも遠くのものも自由時際に焦点を合わせて見られるようになった。これはいわゆる距離概念を発生させる。われわれに「ここ」(here)と「かしこ」(there)の峻別が生まれるのはこの時である。やがてこの「彼方」からアトランティスや浄土やシャンバラの幻想が生まれるのは歴史があかすところであろう。此岸(しがん)と彼岸という観念も、さかのぼればこの距離観念の発生が遠因になっていた。

『空海の夢』4 意識の進化 より

ざっくり言いますと、
 ◆顔を上げて前を向くことで「ここ」と「ここではないところ」が発生。
 ◆それが、この世/あの世や、どこかにあるパラダイスの概念へも発展。
ということが述べられています。

これをもう少し一般化して考えると「前を向いて距離感を感じることで、自分と他者というものを意識するようになる」という風にも言えると思います。逆に言えば、スマホを見て下ばかり見ている状況というのは、四足歩行をして地面や自分を中心とした周囲しか見ていなかった頃の意識を自然と強めてしまうという社会的に危うい面はないだろうか?と思ったのです。

逆に言えば、いずれスマートグラスを使うのが当たり前の世代が出てきた時、彼らは現実空間の中に「他者」も「デジタル情報」も自然に溶け込んだ中で生活していくことになるでしょう。そうなった時に初めて、昨今声高に叫ばれているようなアナログ/デジタルの融合や、メタバースの社会実装というものが実現するような気もします。

⚫︎トレーニング面のメリットもあるかも?

これは完全なる肌感の話なのですが、体幹トレーニングとしての効果もあるのでは?と感じもしました。

スマートグラスで見える映像は常に同じ位置に出ますので、顔の向きによって動きます。歩いたりしていると当然揺らぎもします。これは映像を見る体験からすると(カメラの手ぶれのようなものなので)手ぶれ補正のように動かないような機能がついて欲しいなーと思う反面、きちんとした姿勢をして体の向きが真っ直ぐ固定位置をキープするような指標になる気もしました。
ある程度の期間使い続ければ体幹トレーニングのような効果も生まれるかもしれません。

まとめ

今回は数日間、いくつかのシチュエーションでT1の使用感を試して見た程度ですが、想像以上にポテンシャルを感じることができました。

記事の冒頭にもある通り、この活動は渋谷Well-beingラボの企画なのですが、ラボの諸活動を通して各メンバーが
 「自分にとってのWell-beingとは何か?」
 「それをテクノロジーと絡めてどのように作っていくのか?」
といったことを考え、また行動することでWell-beingの拡がりに貢献できればと考えています。

今回はその活動の一端を備忘録的に書き留めたに過ぎませんが、一定期間使ってみた上でのレポートをまたしようかと思っております。
その際は是非ご一読くだされば幸いです。

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野中健吾
好き勝手なことを気ままに書いてるだけですが、頂いたサポートは何かしら世に対するアウトプットに変えて、「恩送り」の精神で社会に還流させて頂こうと思っています。