見出し画像

ワインソムリエ講座32/スパークリングワイン

1. スパークリングワインとは

スパークリングワインは、炭酸を含んだワインの総称です。泡の発生はワインに含まれる二酸化炭素(CO₂)によるもので、爽快な口当たりと華やかな香りが特徴です。フランスのシャンパーニュ地方で生まれた「シャンパン」をはじめ、世界各地でさまざまなスパークリングワインが生産されています。

炭酸の発生は主に二次発酵と呼ばれるプロセスによって行われ、ワインに独特の泡立ちと飲み心地を与えます。アルコール度数は静かなワイン(スティルワイン)と同程度の10〜12%が一般的で、甘口から辛口まで幅広いスタイルがあります。

2. スパークリングワインの製造方法

スパークリングワインの特徴的な泡を生み出すためには、特殊な製造方法が必要です。以下に主な製造方法を紹介します。

(1) トラディショナル方式(シャンパーニュ方式)

この製法は、瓶内二次発酵を利用した最も伝統的な方法です。
工程:
1. 一次発酵でベースワインを作る。
2. ベースワインに糖分と酵母を加えて瓶に詰める。
3. 瓶内で二次発酵を行い、炭酸を発生させる。
4. 澱を取り除くための動瓶(ルミアージュ)や澱抜き(デゴルジュマン)を行う。
5. 最後にリキュール(糖分)を添加し、味を調整する。

この方法は手間がかかりますが、複雑な味わいと繊細な泡立ちを生み出します。

(2) シャルマ方式(タンク方式)

大型タンクで二次発酵を行う方法で、大量生産に向いています。
工程:
1. ベースワインをタンクに入れる。
2. 糖分と酵母を加え、密閉タンク内で二次発酵を行う。
3. 炭酸を含ませた状態で瓶詰めする。

コストを抑えつつもフレッシュでフルーティな味わいを楽しめるのが特徴です。

(3) トランスファー方式

瓶内二次発酵を行った後、内容物をタンクに移して澱を除去する方法です。トラディショナル方式とシャルマ方式の中間的な製法です。

(4) 炭酸ガス注入方式

人工的に炭酸ガスを注入する方法で、比較的安価なスパークリングワインに使われます。

3. スパークリングワインの主要な産地

スパークリングワインは世界中で生産されていますが、以下の地域が特に有名です。

(1) フランス:シャンパーニュ
• シャンパーニュ地方で生産されるスパークリングワインのみが「シャンパン」と呼ばれます。
• シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエの3品種が主要ブドウ品種。
• 複雑で熟成感のある味わいが特徴。

(2) イタリア:プロセッコとアスティ
• プロセッコは北東部のヴェネト州で生産されるスパークリングワイン。軽快でフルーティな味わいが特徴。
• アスティはモスカート種を使用し、甘口のスパークリングワインとして人気。

(3) スペイン:カヴァ
• カタルーニャ地方が中心地で、シャンパーニュ方式で生産される。
• 価格が手ごろで、熟成感とフルーティさを兼ね備えている。

(4) ドイツとオーストリア:ゼクト
• ドイツとオーストリアでは、リースリングなどを使ったゼクトが一般的。
• 酸味が際立つエレガントな味わい。

(5) その他の地域
• アメリカ(カリフォルニア):シャンパンスタイルの高品質なスパークリングワインが多い。
• 南アフリカ(キャップ・クラシック):伝統方式で作られるスパークリングワイン。

4. スパークリングワインの種類

スパークリングワインは製造方法や糖度、ブドウ品種によって多くの種類に分類されます。

(1) 甘さの違い
• ブリュット・ナチュール: ほぼ無糖(糖度3g/L以下)
• ブリュット: 非常に辛口(糖度12g/L以下)
• ドゥミ・セック: 甘口(糖度32〜50g/L)
• ドゥー: 極甘口(糖度50g/L以上)

(2) 色の違い
• ブラン・ド・ブラン: シャルドネのみを使用した白のスパークリングワイン。
• ブラン・ド・ノワール: 黒ブドウ(ピノ・ノワールやピノ・ムニエ)を使用。
• ロゼ: 淡いピンク色でフルーティな味わいが特徴。

5. スパークリングワインの楽しみ方

(1) グラスの選び方

スパークリングワインは、泡を楽しむためにフルート型のグラスが一般的です。広がりのあるアロマを楽しむ場合は、シャンパーニュグラスやチューリップ型のグラスが適しています。

(2) 適切な温度
• サーブ温度は4〜8℃が理想です。冷蔵庫で冷やしすぎないよう注意しましょう。

(3) ペアリング

スパークリングワインは幅広い料理に合います。
• ブリュット: 魚介、寿司、フライ料理。
• ドゥミ・セック: デザートやフルーツ。

6. スパークリングワインの歴史

スパークリングワインの起源は17世紀のフランスに遡ります。当初は「失敗作」と見なされていましたが、ドン・ペリニヨン修道士による品質向上の努力により、シャンパンは高級飲料として発展しました。その後、シャンパーニュ方式が世界中に広まり、現在のスパークリングワイン文化を築きました。

7. 世界的な人気と市場動向

近年、スパークリングワインの需要は世界的に増加しています。特にプロセッコやカヴァのような手ごろな価格帯の製品が人気で、若い世代を中心に日常的に楽しまれています。また、特別な日の乾杯やギフトとしても愛されています。

いいなと思ったら応援しよう!