夢が叶わないなら、それを先に教えといてほしかった。それなら他にやりようがあっただろう。
俺はよく印刷工場で、単発の派遣バイトをしていた。
朝の8時から夜の8時が早番、夜の8時から朝の8時が遅番だった。俺はいつも早番に入っていた。
2時間に1回くらい休憩があったので、休憩2時間、実働10時間くらいだったと思う。
時給は1000円くらいだったので、1回入ると1万円くらいになり、ラッキーと思っていた。
大体、ベルトコンベアーにチラシを載せるというのが多かった。
俺はいつも思った。高校生くらいの俺が、今の俺を見たらどう思うだろうな?
高校生の俺は、高校を卒業すれば夢が溢れる新しい世界が開け、世界は希望で満ちていると思っていた。逆に言えば、今いる場所は本当の居場所ではないと思っていた。
「君の将来は、工場で単純作業をする人だよ」
俺は印刷工場でバイトしていた時、高校生の俺にこのセリフを言いたくて言いたくて仕方がなかった。
高校生の俺は怒るだろうか?それとも、「ま、そんなこったろうと思ったよ」としらけるだろうか?
しかし、これが現実である。
俺は声優になるために上京したけれど、声優になれなかった。俺の夢は叶わなかった。
俺は、夢が叶わなければ人生は終わりだと思っていた。高校生の頃、俺の住む世界は終わっていた。そこから抜け出すために大大大ジャンプしたら、上のステージに届かなかった。
ということは、夢が叶わなければ終わっている世界に逆戻り、俺の人生も終了すると思った。
しかし、夢が叶わなかった時に気付いた。夢が叶わなくても心臓は止まらない。心臓が止まるまでは、人生は終了しないらしいっすよ。
ゲームでもすっか。楽しく生きたい。